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子宮内膜症の痛みはグルテンフリーで改善されるって本当!?

子宮内膜症は、本来、子宮内膜にしか存在しない組織が、子宮以外の場所にできる病気で、痛みを伴います。

グルテンフリー食にしたところ、75%の人で痛みが軽減されたという、研究結果があります。また別の研究では、子宮内膜症の患者さんの44%がグルテンフリー食を含めた食事管理を行い、そのうち64%の人で、効果があったそうです。

子宮内膜症の発症率は10 %

子宮内膜症は、正常な状態では子宮内膜にしか存在しない組織が、子宮以外の場所にできる病気で、生殖年齢にある女性の約10%に見られます。

月経前、月経中、性交時に痛みを感じたり、妊娠のしやすさが低下したりする場合もあります。骨盤痛がある女性の 75~80 %、不妊症の女性の 25~50 %が子宮内膜症というデータもあります 1)

通常とは異なる場所にできた子宮内膜組織は、正常な子宮内膜組織と同じようにホルモンに反応するため、月経前や月経中に痛みを引き起こします。病気の進行とともに、この子宮内膜組織は徐々に大きくなったり、他の場所へ広がることもあります。その場合は、手術によって切除することが必要となります。

子宮内膜症は、

  • 初潮が早い
  • 第 1 子の出産年齢が 30 歳以上である
  • 出産経験がない

女性に多く見られ、逆に何度も妊娠を経験している人や、初潮が遅い人には、比較的少ないといわれています。つまり、月経の回数が多い人ほど、発症しやすくなると考えられます。

子宮内膜症とグルテンの関係

最近、子宮内膜症とグルテンの関係について書かれた記事が、ネット上でも見られるようになりました。

グルテンフリー食にしたら子宮内膜症の痛みが和らいだという話や、グルテンは子宮内膜症とは関係がないという話、そして子宮内膜症はグルテンが原因の自己免疫疾患であるという、明らかに間違った話まで、さまざまです。

そこで、最新の医学論文に基づいて、子宮内膜症とグルテンの関係を検証してみました。なお、医学論文というのは、研究者が自分の研究結果を一方的に発表しているのではなく、必ず第三者が査読といって、記述内容が論理的かどうか確認しています。雑誌の記事とは信頼性が全く違います。

グルテンフリーで子宮内膜症の痛みが軽減

イタリアの Marziali らが行った研究は、子宮内膜症に関連する痛みを緩和するために、グルテンフリー食の効果を調べた初めての研究と思われます2)子宮内膜症の患者 277 人に 12 か月間グルテンフリー食を摂ってもらった結果、75 %は痛みを伴う症状が軽減し、25% は症状に変化が見られず、痛みがひどくなった人はいなかったとのことです。この研究では、グルテンフリー食は、子宮内膜症の痛みの軽減に有効と結論付けています

子宮内膜症の半数が食事療法を採用

オーストラリアの子宮内膜症患者 484 人を対象にした研究では、44 %の人が症状管理のために 食事療法を取り入れていました。

食事療法の内容は、グルテンの削減または排除、乳製品の削減または排除、低FODMAPの食事の導入、のいずれかでした。

そして食事療法を取り入れた人の 64 %が、骨盤痛が軽減されたと回答しています 3)。また骨盤痛以外に、胃腸障害が改善した人が 39 %、悪心・嘔吐がなくなった人が 15 %、倦怠感がなくなった人が 15 %いたとのことです。

この研究では、グルテン、乳製品、FODMAPのいずれか、あるいはこれらを組み合わせて食事から抜くことは、子宮内膜症の自己管理のために効果があるとしています

子宮内膜症の人にはグルテンに対する自己免疫疾患の人が多い

セリアック病は、グルテンを排除するために免疫系が過剰反応することで起きる自己免疫疾患で、小腸の細胞が破壊されることによって、微量栄養素の吸収不良が起こり、さまざまな全身症状を起こします。

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子宮内膜症の女性患者 120 人について、セリアック病かどうかの確定検査を行ったところ、2.5 %がセリアック病であることがわかりました 4)。これに対し、一般女性におけるセリアック病の有症率は 0.66% なので、子宮内膜症の患者の方が 3.8 倍 高いことがわかりました。このことから子宮内膜症とセリアック病は、臨床的に何らかの関係があると結論付けています

子宮内膜症の症状があればグルテンフリー食を試してみるべき

医学論文や、海外の研究サイトを見る限りでは、子宮内膜症の人がグルテンフリー、乳製品フリー、低FODMAPの食事を摂ることで、子宮内膜症に伴う痛みが軽減される可能性があるといえます。

またグルテンが原因で起きる自己免疫疾患であるセリアック病と、子宮内膜症の間には、何らかの関係があることも間違いなさそうです。

ただ、グルテンが子宮内膜症の原因になっているわけではありません。子宮内膜症は、さまざまな要因が絡み合って起きるので、その要因の一つにグルテンが関係している可能性はあるかもしれませんが、いまのところ、詳細はわかっていません。

グルテンと子宮内膜症との関係については、子宮内膜症の患者さんが自主的にいろいろな食事療法を試し、その結果を研究によって確認する、という流れになっています。今後、研究が進むにつれ、効果の有無や、効果がある場合のメカニズムなどが明らかになっていくと思います。

もしあなたがいま子宮内膜症で、ふだんから痛みに悩んでいるならば、このような研究結果が出るまで待ちますか。お薬を飲むわけではなく、グルテンや乳製品を抜くだけなので、試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 子宮内膜症は、正常な状態では子宮内膜にしか存在しない組織が子宮以外の場所にできる病気で、生殖年齢にある女性の約 10 %に見られる。月経前、月経中、性交時に痛みを感じることや、妊娠のしやすさが低下することもある。
  • 子宮内膜症の人に 12 か月間、グルテンフリー食を摂ってもらったところ、75 %の人が痛みを伴う症状が軽減したことから、グルテンフリー食は、子宮内膜症の痛みの軽減に有効とする研究結果がある。
  • 子宮内膜症の人の 44 %が、グルテンフリー、乳製品フリー、低FODMAPの食事を取り入れており、そのうち 64 %の人が骨盤痛が軽減された。グルテン、乳製品、FODMAPのいずれか、あるいはこれらを組み合わせて食事から抜くことは、子宮内膜症の自己管理のために効果があるという研究結果がある。
  • 子宮内膜症の人は、セリアック病である確率が一般の人より 3.8 倍高いことから、子宮内膜症とセリアック病は何らかの関係がある。
  • 子宮内膜症で痛みに悩んでいるならば、グルテンフリーを試してみることを強くお勧めする。

参考文献

1) MSDマニュアル、プロフェッショナル版、子宮内膜症

2) Marziali M,, et. al., Gluten-free diet: a new strategy for management of painful endometriosis related symptoms? Minerva Chir., 67 (6) 499-504 (2012)

3) Armour M, et. al., Dietary Practices of Women with Endometriosis: A Cross-Sectional Survey. J Altern Complement Med, 2021 Jun 23., Epub ahead of print. (2021)

4) Aguiar FM, et. al., Serological testing for celiac disease in women with endometriosis. A pilot study, Clin Exp Obstet Gynecol, 36 (1) 23-25 (2009)

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