グルテンが影響する抜け毛・脱毛・薄毛

抜け毛・脱毛・薄毛で悩んでいる人はたくさんおられます。ネットの記事を見ると、グルテンフリーにすると、抜け毛・脱毛が治ったというものがあります。

また、グルテンフリーについて書かれた本の中に、グルテンと脱毛との関係について触れたものもありますが、どう関係するのか、グルテンフリーにすると、どんな効果があるのか、そのメカニズムは何なのか、について詳しく書かれていません。そこで、多くの人が抱える髪の悩みとグルテンの関係について、解説したいと思います。

「場合によっては効果がある」というのが結論

グルテンが抜け毛・脱毛の原因だった、グルテンフリーにすると、抜け毛・脱毛の症状が改善した、など、ネット上には多くの記事があります。一方で、1年間苦労してグルテンフリーにチャレンジしたけれど、何の効果もなかった、という記事もあります。記事は、あくまでも投稿した人の感想や意見であり、科学的に正しいかどうかはわかりません。

先に結論を言いますと、一部の脱毛はその発症にグルテンが関わっている可能性があり、グルテンフリーの食生活にすることで、症状が改善する場合があります。ただ、抜け毛・脱毛の発生メカニズムは非常に複雑で、ひとつの原因を取り除いたからといって、症状が治まるわけではありません。これから、その内容を説明していきたいと思います。

抜け毛・脱毛のメカニズムは複雑

最初に、発毛の周期(ヘアサイクル)について、説明します。人間の毛には、生える・抜けるを繰り返す周期があります。成長期は2~8年、退行期が2~3週間、休止期が2~3か月といわれており、さらに休止期と成長期の間に、脱毛期があるとする考え方もあります。

人間は一生の間に、この周期を10~30回繰り返します。また毛の細胞のうち、成長期にあるものが85%、退行期にあるものが1~2%、休止期にあるものが10~15%といわれています1)。人間の頭皮には10~15万本の毛髪があり、毎日25~100本が抜けています。発毛の周期が正常であれば、抜けた後にまた生えてくるため、問題はありませんが、このトラブルが起きると、抜け毛・脱毛・薄毛などにつながります。


抜け毛、脱毛、薄毛の原因にはさまざまなものがあります。主なものをあげると、

  • 女性ホルモンの減少(産後、加齢)
  • 男性ホルモンが変換されてできた物質が脱毛因子を生産する
  • ストレスのため交感神経が優位になり、血管が収縮して毛母細胞に十分な栄養が届かない
  • 栄養不足のため、毛母細胞に必要な栄養が届かない
  • 遺伝的素因(アトピー素因を含む)
  • 自己免疫疾患(免疫系が自分の毛根などを誤って攻撃する)
  • 薬剤(化学療法薬など)、金属(ヒ素など)、放射線
  • 物理的刺激(ドライヤーの熱、三つ編み・ポニーテールなど)

ここでアトピー素因に触れておきたいと思います。

アトピー素因とは、アトピー性疾患、すなわちアトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれかの症状を持つ人のことです。日本人の30%がアトピー素因です。

脱毛症もいろいろあります

脱毛症にはさまざまな種類に分けられます。このうち、代表的なものをご紹介しましょう。

①円形脱毛症

Tリンパ球が成長期の毛根を異物と間違えて攻撃する自己免疫疾患です。免疫攻撃は、ヘアサイクルの周期を混乱させ、健康な毛が突然抜け落ち、局所的に十円玉くらいの大きさの脱毛が起きます。アメリカでは有病率は0.17%で、1970年代と変わっていません2)

どのようにしてこの自己免疫疾患が起きるのか、はっきりとはわかっていませんが、遺伝的素因があることはほぼ間違いなく、これに他の自己免疫疾患、アレルギー、アトピー、ストレスなどが関係して発症するのではないかといわれています。

②びまん性脱毛症(薄毛)

通常より多くの量の髪が抜けるため、全体的に髪のボリュームが減る薄毛の状態です。ホルモンバランスの変化や栄養不足などが原因と考えられており、成長期の混乱または休止期への予定より早い移行によって起こると考えられています。なお。びまんとは、一面に広がるという意味です。

③男性型脱毛症(AGA:Andro Genetic Alopecia)

男性ホルモンの一種、テストステロンが、頭皮に存在する酵素の作用でジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、DHTは毛乳頭にあるホルモンレセプターと結合して、脱毛因子TGF-βが生産されます。脱毛因子TGF-βが増加すると、毛母細胞の活動が停止し、退行期から休止期へと移行するので、髪が成長する前に抜け落ちてしまいます。

その結果、細く短い毛が多くなり、地肌が見えるようになります。遺伝、生活習慣、ストレスが原因といわれています。男性型という名前がついていますが、数は少ないですが、女性にも見られます。

グルテンと抜け毛・脱毛との関係

グルテンと脱毛の関係で、比較的エビデンス(証拠)が揃っているのは、

  • セリアック病の患者に円形脱毛症が多くみられること
  • セリアック病と診断されてグルテンフリー食に切り替えたところ、脱毛の症状が改善したこと
  • 症状が改善した後にグルテンを含む食品を摂ると、再び脱毛の症状が悪化したこと

の3点だと思います。

セリアック病は、小麦などに含まれるグルテンが原因で起きる自己免疫疾患で、グルテンに含まれるグリアジンを異物と取り違えて、免疫系が働き、T細胞(Tリンパ球)がグリアジンを攻撃します。その結果、食物に含まれるグリアジンが存在する小腸上皮細胞が破壊されてしまいます。人間は栄養の大半を小腸から吸収していますし、人間の免疫細胞の70%が小腸に存在するため、腹痛、下痢などの消化器症状だけでなく、全身や皮膚にさまざまな症状が出ます。

セリアック病は、根本的な治療方法がなく、グルテンフリー食を一生食べ続ける必要があります。グルテンフリー食に切り替えると、T細胞による攻撃がなくなるため、小腸は正常な状態に戻ります。

円形脱毛症も、セリアック病と同様、自己免疫疾患の一つで、T細胞が成長期の毛根を攻撃することで起こります。グルテンフリー食にしたことで、T細胞による毛根への攻撃がなくなり、脱毛の症状がよくなったように見えるのですが、実際はそうではないようです。

グルテンが円形脱毛症を起こす炎症を起こしているわけではない?

セリアック病は、小麦などに含まれるグルテンの成分であるグリアジンが原因で発症することがわかっています。そこで円形脱毛症の患者が、グリアジンに対する抗体を持っているか調べた研究があります。それによると、円形脱毛症の患者と一般人の間で、グリアジンに対する抗体を持っている比率には、有意な差はなかったとのことです3)。つまり、グリアジンが円形脱毛症の直接の原因ではないということになります。

栄養失調、ストレス、ホルモンバランスの乱れが、抜け毛、脱毛、薄毛の原因になることは、説明した通りです。セリアック病に患者がグルテンフリー食に切り替えると、小腸が正常な状態になるため、小腸での栄養吸収障害は解消されます。またT細胞による免疫反応がなくなるため、副腎疲労が軽減され、副腎から分泌されるホルモンバランスの不調が改善されることが考えられます。さらに腹痛や下痢に伴うストレスが緩和されることでで、脱毛の症状が改善したことが考えられます。

いずれにせよ、グルテンフリーと抜け毛・脱毛・薄毛との関係については、医学的、統計学的に十分なデータがなく、結論が得られないということになります。

グルテンフリーを試す価値はあります

脱毛症にはさまざまな種類があります。また、それぞれ症状も発症メカニズムも異なるので、まずは信頼できるお医者さんに相談することが一番です。いまから説明する内容は、医学的なエビデンス(証拠)に基づいていますが、人によって症状が異なるので、あくまでも参考情報としてください。

あなたがグルテンに弱い体質、すなわちセリアック病、ノンセリアックグルテン過敏症の場合は、グルテンを摂ることで、慢性的な腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感や、皮膚症状、全身症状が現れている可能性があります。個々の症状は軽くても、その症状が長く続くことで、からだにさまざまな影響が出ます。この影響のいくつかは、抜け毛・脱毛・薄毛の危険因子といわれているものです。

①栄養吸収の改善

発毛に必要なビタミン、微量元素が慢性的に不足している可能性があります。グルテンフリーにすることで、小腸での栄養吸収が正常化し、不足している栄養が摂れるようになる可能性があります。

②ストレスの減少

下痢、便秘や腹部膨満感は、日常生活に支障を来た、慢性的な肌荒れ、ニキビ、湿疹はストレスにもなります。さらに慢性疲労やもやもや感なども、ストレスにつながります。ストレスは、脱毛の原因です。

③ホルモンバランスの最適化

グルテンは副腎疲労を起こすことがわかっています。副腎はホルモンをつくる重要な臓器です。女性ホルモンの相対的な減少は、脱毛の原因になります。

④アレルギー反応、炎症反応を起こさない

たんぱく質であるグルテンは、さまざまなアレルギー反応を起こすことがわかっています。アレルギー反応が起きると、その原因物質を排除するために、体内で炎症反応が起きます。不必要な炎症反応を起こさないことが、脱毛の予防につながります。

やらないほうがよいこと

抜け毛、脱毛、薄毛に悩んでいる人はたくさんいます。また、その悩みを人に相談しにくいものです。できれば売薬(一般用医薬品)や医薬部外品、サプリメントで治したいと思うでしょう。でも、また間違った使い方をすると、症状を悪化させることになります。特に効果が怪しい健康食品、サプリメント、医薬部外品の使用は、お勧めできません。ビタミンA、ビタミンE、セレンなどの特定の栄養素の過剰補給は脱毛を引き起こす可能性さえあります4)

グルテンフリーを試すメリットはありますが、無理なダイエットは絶対にしないでください。栄養失調やストレスで、症状が悪化する可能性があります。

グルテンの自己免疫疾患である橋本病への関与

ところで橋本病は免疫系が甲状腺を攻撃することで甲状腺に慢性の炎症が起きる自己免疫疾患で、女性では10人に1人、男性では37人に1人の割合で起きます。

ほとんどの方は症状はないのですが、約10%の方には甲状腺機能の低下による甲状腺ホルモンの減少が見られ、代謝の低下による、疲労感、だるい、汗をかかない、食欲がない、寒気がする、無気力や眠気が起きる、記憶力が低下する、皮膚が乾燥するなどのほか、髪の毛が抜ける、眉毛が抜けるといった症状が現れることがあります。この場合、甲状腺ホルモンを補充することにより症状は解消されます。

橋本病はもともと遺伝的な素因があるところへ環境因子が作用することで免疫が働き、発症するといわれています。この環境因子の一つとして、グルテンの関与が指摘されています。また1つ自己免疫疾患があると、2つ目、3つ目の自己免疫疾患が発生しやすくなります。自己免疫疾患発生の引き金になるものは、避けたほうがよいといわれています。

note(ノート)

みなさん、こんにちは。 抜け毛・脱毛・薄毛で悩んでいる人はたくさんおられます。ネットの記事を見ると、グルテンフリーにす…


出典
National Celiac Association
参考文献
1) Kamal V. Patel et. al., Hair Loss in Patients with Inflammatory Bowel Diseas, Inflammatory Bowel Diseases, 19 (8) 1753-1763 (2013)
2) Michael Benigno et. al., A Large Cross-Sectional Survey Study of the Prevalence of Alopecia Areata in the United States, Clin Cosmet Investig Dermatol, 13, 259-266 (2020)
3) Fatemeh Mokhtari et.al., The Frequency Distribution of Celiac Autoantibodies in Alopecia Areata, Int J Prev Med, 7(1) 109 (2016)
4) Emily L. Guo et. al., Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use, Dermatol Pract Concept, 7(1) 1-10 (2017)

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!