グルテンフリーのダイエット効果について医学論文で検証してみた

グルテンフリーにすることで痩せるかについては、効果があるという意見と、効果がないという意見に分かれています。これは国民の3人に1人がグルテンフリーを取り入れているアメリカでも同様です。そこで最新の医学論文に基づいて、この問題を検証してみました。当サイトの結論は、グルテンフリーにすることで痩せる可能性は高いが、痩せること(ダイエット)を目的にグルテンフリーにするのはやめたほうがよいというものです。

グルテンフリーで体重が減る理由

グルテンフリーの食品・食事は、もともとグルテンが原因で起きる自己免疫疾患であるセリアック病の人のためのものです。セリアック病は人間の免疫系が、グルテンに含まれる物質を有害物質とみなして攻撃することで、小腸の細胞が破壊され、栄養分が吸収できなくなる病気です。セリアック病の人は、グルテンが入っていないものを食べるしか、治療の方法がありません。

「セリアック病でない人には、グルテンフリーは何の効果もない」という人もいます。これは、グルテンフリーが、セリアック病の食事療法であることを理由にしています。

一方で、アメリカ人の3人に1人が、グルテンの摂取を避けたり減らしたりしており1)、またグルテンフリーによって多くの人が減量に成功したとも言われています。体重が減った理由としては、次のようなことが考えられます。

食べものに配慮した結果、摂取カロリーが減った

体重が減るのは、摂取カロリーが減ったか、消費カロリーが増えたかのいずれかに限られます。グルテンフリー生活を始めると、まず買うものや食べるものにグルテンが入っていないかどうか、確認しますが、あわせてカロリーや成分にも意識が向くようになります。

消費するカロリー以上に摂取すると、太るのはあたりまえで、食べる量を消費カロリーに近づけることで、適正体重に近づいていきます。そのため、もともと太っていた人は体重が減ることになります。

加工食品の摂取量が減り、摂取カロリーが減った

ファストフード、ジャンクフード、インスタント食品を始めとする加工食品は、安い値段で満足感が得られるようにするため、糖分や脂肪分が多く含まれていることが多く、比較的高カロリーです。小麦はさまざまな加工食品に使われているため、グルテンフリーの食生活を始めると、多くの加工食品が食べられなくなります。その結果、加工や精製をしていないwhole foodsを食べる機会が増え、結果的に、摂取するカロリーが減ることになります。

小麦製品による血糖値の急激な上昇が起きなくなった

パンやパスタなど小麦粉が原料の食品は、食後血糖値を急激に上昇させます。そうすると血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌され、血液中のグルコースを中性脂肪としてため込みます。これを繰り返していると、脂肪を食べこみやすい体質になるほか、インスリンが効きにくくなり、肥満や糖尿病になることがあります。

グルテンフリーにすると、小麦製品は食べなくなるため、結果的に食後血糖値の急激な上昇が起こる頻度が少なくなります。その結果、太りにくくなったと考えられます。

グルテンの除去だけで体重が減ることはない

摂取するエネルギーが減るか、消費するエネルギーが増えるかしないと、体重は減りません。たんぱく質は1 gあたり4 kcalのカロリーがありますが、一般的な西洋型食生活では1日5~20 gのグルテンを摂取するといわれています2)。グルテンは他のたんぱく質に比べて消化・吸収が悪いので、1 gあたり4 kcalで計算してよいかどうか疑問が残りますが、それでもグルテンの正味のカロリーは1日80 kcalに過ぎません。たったこれだけのカロリーを減らしたところで、目に見えて体重が減ることはありません。

グルテンフリーだけでは、ダイエット効果がないという人は、このことを根拠にしています。

小麦の習慣性・依存性の有無については不明

小麦には、また食べたくなる、食べずにいられなくなるといった習慣性や依存性があるのではないか、という意見があります。

グルテンが部分的に分解されると、グルテンエキソルフィンという、麻薬のモルヒネと同じ作用をあらわす物質ができます。それが小腸で吸収されて血液の中に入り、脳のオピオイド受容体に結合すると、ドパミンが放出されて、われわれを幸せな気分にしてくれます。しかし時間が経つにつれてグルテンエキソルフィンの濃度が下がると、脳内のドパミンの濃度も下がってきます。また幸せな気分になりたいため、グルテンが含まれる食べものを欲することで、習慣性や依存性が生じるといわれています。

これについては、具体的な例が示されています。サウスカロライナ医科大学で、被験者の半分にオピオイド受容体が働かなくなる薬(オピオイド受容体拮抗薬といいます)を与えたところ、与えなかったグループに比べ、食事の摂取量が昼食で33%減、夕食で23%減(2食で合計およそ400kcal減)となりました。
またミシガン大学では、過食気味の人たちの半分にオピオイド受容体拮抗薬を投与し、食べ物をたくさん用意した部屋に1時間閉じ込めるという実験が行われました。その結果、オピオイド受容体拮抗薬を投与された被験者たちが小麦クラッカーやプレッツェルを食べた量は、普段より28%減っていたことがわかりました3)

このことから、グルテン由来の物質がオピオイド受容体に結合し、小麦製品に対する食欲を増していると考えられます。これは、心臓専門医であるDr. William Davisが書いた「小麦は食べるな(原題:Wheat Belly)」という本に記載されている内容ですが、査読付きの医学雑誌に掲載された情報ではありません。

このグルテンエキソルフィンについては、いくつか研究論文が出ており、からだにさまざまな影響を与える可能性が指摘されていますが、食欲の調節に関してモルヒネと同じような役割を果たすという事実は確認されなかったという報告もあります4)5)
一方で、グルテンエキソルフィンが血液脳関門を通過し、食欲に影響を与える可能性があるという研究結果もあります6)

グルテンフリーで痩せるという研究もある

グルテンを含む高脂肪食とグルテンフリーの高脂肪食をマウスに与えて、グルテンフリー食が肥満に及ぼす影響を調べた研究例があります7)。脂肪をたくさん摂ると、体内の脂肪組織が拡大しますが、グルテンフリーの場合は、グルテンが入っていない場合に比べて、体重と肥満が減少したという結果が出ています。

またグルテンフリーの場合は、以下に示す血液中の物質(マーカーといいます)の濃度が高くなっていたことから、グルテンフリーにすると、脂肪の代謝(分解)が促進されているのではないか、という結論を出しています。

グルテンフリーの方が値が高かったマーカーとは、具体的に次のようなものです。
PPAR-α(α型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体):脂質代謝に関わる遺伝子の発現を調節し、血液中の中性脂肪を減少させるとともに、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる働きがあります。
LPL(リポたんぱくリパーゼ):中性脂肪を分解する酵素。
HSL(ホルモン感受性リパーゼ):中性脂肪やコレステロールエステルを分解する酵素。
CPT-1 (カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI):脂肪酸を分解してエネルギーに変える酵素。
なお、この研究については、その後続報が出ていません。

グルテンフリーで逆に太る、心血管疾患のリスクが高まるという意見

グルテンフリー食品を摂ると太るとか、心筋梗塞や脳梗塞のような心血管疾患のリスクが高くなるという意見もあります8)

しかしこれは、グルテンフリーそのものではなく、欧米のグルテンフリー食品(代替食品)に原因があります。グルテンフリーが広まっているアメリカでは、小麦を使うあらゆる食品について、グルテンフリーの代替食品が発売されています。パン、パスタ、ピザや、ケーキ、クッキーなどの菓子類は、糖質、乳成分、脂肪分を多く使っているため、小麦を使った製品よりカロリーが高く、小麦の全粒粉が使われていないことで、食物繊維がもとの食品より少ない場合があります。食物繊維が多い食品は消化に時間がかかるため、食後血糖値の急激な上昇が抑えられます。また満腹感が得られるので、食べ過ぎの防止にもつながります。

これらのことを理由に、グルテンフリー食品の方が、太りやすいといっているわけです。しかしグルテンフリー食品を食べた人が太ったというデータはありません。既存の食品と代替品の栄養成分をもとに、可能性を述べているだけです。また心血管疾患は、肥満や糖尿病が危険因子になるので、将来、発症のリスクが高くなるといっているのです。

これは、グルテンフリーの問題ではなく、あくまでアメリカのグルテンフリー食品(代替食品)の問題です。日本でグルテンフリーをする場合、和食への置き換えをすることが多いと思います。この場合、ここで指摘されているようなことが起きることはないでしょう。

まとめ

  • グルテンフリーはセリアック病の人のための食事療法。
  • アメリカでは3人に1人がグルテンの摂取を避けたり減らしたりしている。またグルテンフリーで減量に成功した人も多い
  • グルテンフリーで体重が減った理由としては、①食べるものに配慮した結果、摂取カロリーが減った、②加工食品の摂取量が減ったために、摂取カロリーが減った、③小麦製品による血糖値の急激な上昇が起きなくなった、ことによると考えられる。グルテンの除去だけで、体重が減ることはない。
  • 小麦に含まれるグルテンが部分的に分解すると、グルテンエキソルフィンという、麻薬のモルヒネと同じ作用をあらわす物質ができる。これが脳に働くため、小麦には習慣性や依存性があるという意見がある。この作用については、あるという研究結果とないという研究結果があり、結論が出ていない。
  • 脂肪をたくさん含んだ食事を継続して摂ったとき、グルテンフリーにすると、体内で脂肪を分解する酵素などが誘導されて、体重が減少したという研究結果もある。これはグルテンフリーで痩せる可能性があるということ。
  • グルテンフリーにすると太るとか、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなるという指摘があるが、これは欧米でよく食べられている全粒粉(種皮ごと粉にした小麦粉)をグルテンフリー食品で置き換えたとき、カロリーの摂取量が増えて、食物繊維の摂取量が減ることが原因。グルテンフリーの問題ではなく、グルテンフリーの代替食品の問題である。

参考文献

1) Reilly NR. The Gluten-Free Diet: Recognizing Fact, Fiction, and Fad. J Pediatr. 2016;175:206-210. doi:10.1016/j.jpeds.2016.04.014
2) Barbaro MR, Cremon C, Wrona D, et al. Non-Celiac Gluten Sensitivity in the Context of Functional Gastrointestinal Disorders. Nutrients. 2020;12(12):3735. Published 2020 Dec 4. doi:10.3390/nu12123735
3) ウイリアム デイビス 小麦は食べるな 日本文芸社(2013
4) Pruimboom L, de Punder K. The opioid effects of gluten exorphins: asymptomatic celiac disease. J Health Popul Nutr. 2015;33:24. Published 2015 Nov 24. doi:10.1186/s41043-015-0032-y
5) Morley JE, Levine AS, Yamada T, et al. Effect of exorphins on gastrointestinal function, hormonal release, and appetite. Gastroenterology. 1983;84(6):1517-1523.
6) Liu Z, Udenigwe CC. Role of food-derived opioid peptides in the central nervous and gastrointestinal systems. J Food Biochem. 2019;43(1):e12629. doi:10.1111/jfbc.12629
7) Soares FL, de Oliveira Matoso R, Teixeira LG, et al. Gluten-free diet reduces adiposity, inflammation and insulin resistance associated with the induction of PPAR-alpha and PPAR-gamma expression. J Nutr Biochem. 2013;24(6):1105-1111. doi:10.1016/j.jnutbio.2012.08.009
8) Lebwohl B, Cao Y, Zong G, et al. Long term gluten consumption in adults without celiac disease and risk of coronary heart disease: prospective cohort study. BMJ. 2017;357:j1892. Published 2017 May 2. doi:10.1136/bmj.j1892

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!