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大麦の一種であるもち麦、グルテン含有量は、健康によいといわれる理由は?

もち麦は大麦の一種です。お米にうるち米ともち米があるように、大麦にも、うるち性のものともち性のものがあり、もち性の大麦がもち麦です。大麦なので、グルテンが含まれています。大麦に含まれる食物繊維には、腸内環境を整える作用や便秘を解消する効果が、β-グルカンにも食後血糖値の上昇を抑える効果があるといわれています。

もち麦は大麦の一種、でんぷんの種類が違う

ここ数年、もち麦は健康によいとして、注目されています。もち麦は、カラス麦やハト麦といった独立した品種ではなく、大麦の一種です。

お米には、ごはんとして食べられるうるち米と、お餅にして食べるもち米があります。これと同じで、大麦にも、「うるち性」の大麦と、「もち性」の大麦があります。そして、もち性の大麦のことを、もち麦と呼んでいるのです。

うるち性ともち性の違いは、お米や大麦に含まれるでんぷんの違いです。

でんぷんは、グルコースという糖が鎖状につながったものですが、枝分かれのある「アミロペクチン」と、枝分かれのない「アミロース」の 2 種類があります。水を加えて加熱すると、アミロペクチンは糊状になり、粘り気を生じるのに対して、アミロースは粘り気を生じません

うるち米は、アミロペクチンが 73~83 %、アミロースが 17~27 % の比率ですが、もち米はアミロペクチンが 100%で、アミロースは含まれていません。そのため、アミロースが含まれるうるち米は、もち米と比べて粘り気が少ないのです。

ふつうの大麦(うるち性の大麦)に含まれるでんぷんは、アミロペクチンが 75 %、アミロースが 25 %であるのに対して、もち麦(もち性の大麦)に含まれるでんぷんは、アミロペクチンが 95 %、アミロースが 5 %です。そのため、アミロースが少ないもち麦は、ふつうの大麦に比べて、「もちっ」とした食感になるのです。

 

 

大麦はグルテン含有穀物

グルテンフリーやグルテンについて、徐々に知られるようになりましたが、グルテンフリー = 小麦フリーと勘違いしている人もおられるようです。

グルテンは、小麦、大麦、ライ麦に含まれる貯蔵たんぱく質の一種です。プロラミンとグルテリンという 2 種類のたんぱく質から構成され、水を加えて練ることで、下の写真にあるような、糊状で弾力性がある状態になります。

 

 

このグルテンを構成するたんぱく質は、含まれている穀物によって構造が異なるため、違った名前が付けられています。

大麦には、ホルデインと名付けられたプロラミンと、グルテリンが含まれているため、紛れもなく、グルテン含有穀物です。このほか、日本では使われることが少ないライ麦も、同じく、グルテン含有穀物です。

一方でヨーロッパなどでは、オーツ麦をグルテン含有穀物として取り扱っている場合があります。これはオーツ麦にグルテンが含まれているからではなく、流通の過程で小麦や大麦が混じる可能性があることが原因です。あくまでもグルテンを成分として含む穀物は、小麦、大麦、ライ麦と、その交雑種だけです。

 

 

一般名 プロラミン グルテリン
小麦 グリアジン グルテニン
大麦 ホルデイン グルテリン
ライ麦 セカリン グルテリン

 

大麦のグルテン含有量

大麦にグルテンがどれくらい含まれているのでしょうか。アメリカで公開されている情報(論文ではない)によりますと、大麦には、重量の 5~8 % のグルテンが含まれるといわれています。

ただ、日本とアメリカでは、大麦の使い方(食べ方)が異なります。アメリカではシリアルやスープの材料として使うことが多いようですが、日本ではお米と同じように、炊いて食べるのが一般的です。

日本で流通する大麦は、おもに次の 4 種類です。

殻付き大麦 … 脱穀前の状態の大麦
丸麦 … 脱穀した大麦
押麦 … 丸麦を蒸気で加熱し、黒条線を残したままローラーで押しつぶしたもの
米粒麦 … 丸麦を黒条線に沿って切断し、さらに精製したもの

たんぱく質であるグルテンは、胚芽の部分に多く含まれるため、殻付き大麦には多く、米粒麦には少ないと考えられますが、実際にグルテン量を測定したデータは見当たりませんでした。

また大麦に含まれるたんぱく質量は、栽培中に与えられる窒素肥料の量にも大きく影響します 1)。そのため、栽培地や栽培方法によって、グルテン含有量は変わる可能性かあります。

一方で、デンマークで行われた食事に含まれるグルテン量についての研究では、大麦に含まれるたんぱく質の 50 % がグルテンと想定して計算しています 2)。これを、文部科学省が公表している、日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)に当てはめて計算すると、乾燥した押麦に含まれるたんぱく質は、100 g あたり 6.7 g、米粒麦に含まれるたんぱく質は、100 g あたり 7.0 g なので、グルテン量は 100 g あたり 3.3~3.5 g ということになります。

先ほど説明したように、欧米では殻付き大麦をシリアルとして食べることが多いため、グルテン量は 100 g あたり 5~8 g とされていますが、日本でよく使われる脱穀後の大麦であれば、100 g あたり 3.3 ~ 3.5 g と考えてよいと思います。

もち麦はからだによいといわれる理由

もち麦がからだによいといわれている理由となる成分は、食物繊維とβ-グルカンです。

もち麦には食物繊維がごぼうの 2 倍、玄米の 4 倍含まれていて、現代人に不足しがちな食物繊維を簡単に摂ることができるスーパー食材、しかもダイエット効果がある!!

と書いてあるのを見かけました。

もち麦に含まれる食物繊維が、ごぼうの 2 倍、玄米の 4 倍というのは事実です。ただ、食物繊維が多い食べものは、他にいくらでもあります。健康食品の広告でよく使われる手法ですが、消費者に誤解を与える恐れがあります。

もち麦を 3 割混ぜて炊いたごはんを食べるより、ごはんと納豆 1 パックを食べたほうが、食物繊維が多く摂れるということも、覚えておいて下さい。

もち麦がスーパー食材、ダイエット効果がある、というのは、いくらなんでも言い過ぎです。食物繊維が多い食べものには、腸内細菌の増加を促して腸内環境を整えたり、便秘を解消する作用があります。また水溶性食物繊維が、血液中のコレステロール値を下げる作用があるのも事実です。しかし、その効果を得るためには、かなりの量を摂る必要があります。

食物繊維を摂り過ぎた結果、思わぬ副作用が出てしまうこともあるのです。食物繊維の摂り過ぎでよく起こる副作用の最たるものは、下痢です。

βグルカンは水溶性食物繊維の一種で、糖の吸収をおだやかにする作用があります。一方、EU(ヨーロッパ連合)の表示ルールによれば、食後血糖値の上昇抑制効果があると食品に表示するためには、1 食中の糖質 30 g あたり 4 g 以上のβ-グルカンが含まれている必要があります。ごはんにもち麦をどれだけ加えたとしても(もち麦だけを食べたとしても)、この基準には達しません。

このあたりの詳しい解説は、別の記事にまとめていますので、参考になさってください。

 

食品なぜなに解決塾

もち麦とは、もち性の大麦のことです。もち麦には食物繊維が多く含まれ、食後血糖値の上昇抑制効果や、ダイエット効果があるとい…

まとめ

  • もち麦は、もち性の大麦のこと。お米にうるち米ともち米があるように、大麦にもうるち性のものともち性のもの(もち麦)がある。これは、でんぷんの種類であるアミロペクチンとアミロースの比率の違いで、アミロペクチンが多いと粘り気が出る。
  • 大麦は、小麦、ライ麦と同様、グルテンというたんぱく質を含む。
  • 大麦には、重量当たり 3.3~8 % のグルテンが含まれる。たんぱく質であるグルテンは胚芽の部分に多く含まれる。そのため、脱穀した丸麦や、それを加工した押麦、米粒麦に比べて、殻付き大麦には多くのグルテンが含まれる。
  • もち麦は、食物繊維とβ-グルカンを多く含むといわれているが、もち麦を食べることで健康効果を期待するのは無理がある。

 


参考文献

1) Guo B, Li D, Lin S, et al. Regulation of nitrogen availability results in changes in grain protein content and grain storage subproteomes in barley (Hordeum vulgare L.). PLoS One. 2019; 14(10):e0223831. Published 2019 Oct 16.

2) Hoppe C, Gøbel R, Kristensen M, et al. Intake and sources of gluten in 20- to 75-year-old Danish adults: a national dietary survey. Eur J Nutr. 2017; 56(1):107-117

 

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!