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小麦アレルギー、セリアック病、NCGS の原因物質、発症機序、症状、避ける食べものを比較

小麦が関係する病気でよく知られているのは、小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症の 3 つです。この 3 つは、小麦が入っているものは食べられないという共通点がありますが、原因物質、発症メカニズム、症状、避けるべきたべものが異なります。混同されやすいこの 3 つの病気の違いについて、解説します。

原因物質の違い

小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症(NCGS)は、いずれも小麦に含まれる成分が原因で発症しますが、原因となる物質に違いがあります。

小麦アレルギーは小麦に含まれるたんぱく質が原因で起きる即時型アレルギーの総称です。小麦には数百種類のたんぱく質が含まれていますが、そのうちのいくつかが発症に関わっています。また原因物質となるたんぱく質は症状によってさまざまで、グルテン以外のたんぱく質が原因となることもあります。そのため、小麦アレルギーの人はグルテンフリーではなく、小麦フリーの食生活を送る必要があります。小麦アレルギーでは、まれに大麦に含まる似たたんぱく質に対しても、アレルギー反応を示すこともあります。

セリアック病は小麦に含まれるグリアジン、大麦に含まれるホルデイン、ライ麦に含まれるセカリンというたんぱく質が原因で起きる遅延型アレルギーです。グリアジンはグルテンを構成する主要たんぱく質であるため、セリアック病の人の食事療法をグルテンフリーと呼んでいます。グリアジン、ホルデイン、セカリン以外のたんぱく質はアレルゲンにはならないのですが、この 3 種類のたんぱく質だけを完全に取り除くことはできないので、セリアック病の人は、小麦、大麦、ライ麦由来のものは食べないようにする必要があります。

非セリアックグルテン過敏症は最近の研究でいろいろなことがわかってきた病気で、近いうちに非セリアック小麦/グルテン過敏症という名前に変更される可能性があります。その理由は、グルテン以外の物質が発症に関わっていることがわかってきたからです。具体的には、グルテンの成分であるグリアジングルテニンや、アミラーゼ・トリプシンインヒビター(ATI)小麦胚芽凝集素(WGA)といったグルテン以外のたんぱく質、さらにはフルクタンという多糖類が原因物質といわれています。

小麦に含まれる主なたんぱく質と、いま説明した 3 つの病気との関係は次の通りです。

 

 

たんぱく質の名称 病気との関係
◎主な原因物質 ○原因物質 ×影響なし -不明
小麦アレルギー セリアック病 非セリアック
グルテン過敏症
水溶性
たんぱく質
アルブミン × ×
グロブリン × ×
α-アミラーゼ × ×
アシル-CoAオキシダーゼ × ×
ペルオキシダーゼ × ×
アミノペプチダーゼ × ×
リポキシゲナーゼ × ×
アミラーゼ・トリプシン
インヒビター(ATI)
×
小麦胚芽凝集素(WGA) ×
脂質輸送タンパク質 × ×
グリアジン α-グリアジン
β-グリアジン
γ-グリアジン
ω-グリアジン
グルテニン 高分子量グルテニン
低分子量グルテニン

 

 

発症機序の違い

3 つの病気の発症機序は全く異なります。小麦アレルギーは原因物質が体内に入って数分から数時間以内に症状が出る即時型アレルギー、セリアック病は1日から2日経ってから症状が出る遅延型アレルギー、非セリアックグルテン過敏症はいろいろなメカニズムが関係して発症するのではないかといわれています。

 

 

小麦アレルギー セリアック病 非セリアックグルテン過敏症
発症機序 即時型アレルギー 遅延型アレルギーの
一つである
自己免疫疾患
腸内で起きるリーキーガット、
炎症反応、ディスバイオシス
(腸内細菌叢の変化)が関係
症状が現れるまでの
時間
数分から数時間 1~2 日 1~2 日

 

 

症状の違い

小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症では、似た症状が現れる場合があります。特にセリアック病と非セリアックグルテン過敏症は症状が重複しています。

下の表にそれぞれの病気で見られる症状をまとめましたが、ここに挙げたすべての症状が見られるわけではなく、このうちの一部の症状が見られることがほとんどです。特にセリアック病と非セリアックグルテン過敏症では、消化器症状が見られないケースが多いことがわかってきました。食べたものが原因であるにもかかわらず、消化器症状がなく、しかも症状が現れるのが食べてから 1~2 日後となると、その症状が食べものが原因で起きていることが分からなくなってしまいます。そのためこれらの病気では、まだ診断されていない患者さんが多いといわれています。

 

 

     主な症状

小麦アレルギー セリアック病 非セリアック
グルテン過敏症
消化器 腹部膨満
悪心、嘔吐
腹痛、下痢
便秘、裂肛(切れ痔)
血便
脂肪便
皮膚 紅斑、じんましん、
血管性浮腫、かゆみ
湿疹
疱疹状皮膚炎
尋常性ざ瘡(吹き出物)
結膜充血・浮腫、眼のかゆみ、まぶたの腫れ
鼻汁、鼻づまり、くしゃみ
舌炎、口角炎
頭痛
もやもや感
(ブレインフォッグ、脳霧)
呼吸器 呼吸困難
循環器 血圧低下
貧血
全身 意識障害
抑うつ、平衡感覚喪失
倦怠感、疲労
筋力低下、食欲不振
体重減少
関節痛、しびれ
ビタミンD欠乏症、
カルシウム欠乏症

 

 

避けるべき食べものの違い

小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症は原因物質が異なるため、食べられるもの、食べられないものの種類が異なります。特に非セリアックグルテン過敏症は、原因物質によって避けるべき食材が異なります。また厳密なグルテンフリーは必要でない場合が多いので、自分の症状にあわせて対応することをお勧めします。

それぞれの病気で、食べられないもの・食べないほうがよいものをまとめました。なお医師の治療を受けている方は、医師の指示に従ってください

 

 

小麦アレルギー セリアック病 非セリアック
グルテン過敏症
小麦と小麦成分
を含むもの
食べられない
小麦として数 ppm 以上
食べられない 食べられない
濃度と量は症状による
大麦と大麦成分
を含むもの
まれに食べられない
場合がある
食べられない 食べられない場合もある
ライ麦とライ麦成分
を含むもの
 − 食べられない 食べられない場合もある

 

 

詳しくは、それぞれの解説記事をご覧ください。

 

 

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