グルテンが入っている麦、入っていない麦 全粒粉、小麦ふすま、スペルト小麦は?

グルテンは小麦、大麦、ライ麦に含まれていますもち麦、はだか麦、押し麦、米粒麦、麦芽は大麦なのでグルテンが入っています

一方でオーツ麦(エンバク)、ハト麦、麦芽糖にはグルテンは入っていません

人気の全粒粉や小麦ふすま(小麦ブラン)には、ふつうの小麦より多くのグルテンが含まれているので、注意が必要です。またスペルト小麦などの古代小麦も、ふつうの小麦とグルテンの量は変わりません

グルテンが入っているのは小麦、大麦、ライ麦だけ

グルテンが入っている麦と入っていない麦

グルテンフリーが世の中で知られるようになりましたが、グルテンフリーとは小麦製品を抜くこと、といったイメージがあります。

でも実は、大麦とライ麦にもグルテンは含まれています。一方で世の中には「麦」という名前が付いた食材がたくさんありますが、グルテンが入っていないものもあります。そこで最初に、グルテンが含まれるものと含まれないものを整理しました。

なお国内で穀物や関連製品を取り扱っている大手企業のホームページにも、間違った情報が堂々と掲載されているので注意してください。

グルテンを含む グルテンを含まない
穀物 小麦、大麦、ライ麦
これらの交雑種(例:ライ小麦)
オーツ麦(エンバク)
ハト麦
穀物の品種 スペルト小麦、古代小麦
もち麦、はだか麦(大麦の一種)
穀物の加工品 小麦ふすま(小麦ブラン)
全粒粉
押し麦、米粒麦(大麦の加工品)
麦芽(大麦を発芽させたもの)
麦芽糖(マルトース)

大麦は押麦やもち麦とも呼ばれ、グルテンが含まれる

大麦は比較的よく使われる食材で、いろいろな食品に原材料として使われていますが、別の名前で呼ばれることも多く、気づかずに食べていることもよくあります。

小麦はアレルギー反応を起こしやすい特定原材料の一つなので、含まれている場合はすぐに見分けがつくよう「小麦」と表示しなければなりませんが、大麦は、特定原材料でもそれに準ずるものでもないため、原材料表示だけからでは、使われているかどうかわからない場合があります。

これから説明する名前で呼ばれることがあるということを、覚えておいてください。

麦ごはん、押麦、米粒麦

最近、麦ごはんや雑穀ごはんが人気ですが、麦ごはんや雑穀ごはんには、大麦が使われています。

麦ごはんはお米に大麦を1~3割混ぜて炊いたものです。大麦をそのまま使うことは少なく、大麦をローラーでつぶすなどして火が通りやすくした、「押麦」「米粒麦」が使われます。

大麦は粒が大きく固いので、お米にそのまま混ぜて炊飯すると、火のとおりが悪く、固いまま残ってしまいますが、加工することで食べやすくなります。また大麦の品種の中で、もちもちした特性がある「もち麦」が人気で、もち麦をお米に混ぜて炊く場合もあります。さらに「雑穀米」という名前で売られている穀物ミックスの中にも、だいたい大麦が入っています。

はだか麦、もち麦

いずれも大麦の品種です。

大麦は殻と実からできていますが、はだか麦は脱穀すると簡単に殻が取れる品種で、主に主食用に使われています。

もち麦はでんぷんの成分がもち性の大麦の総称で、お米に混ぜて炊いて食べる以外に、麺に加工されています。「はだか麦」「もち麦」というと、大麦とは違う種類の麦と勘違いするかもしれませんが、いずれも大麦の品種で、グルテンは含まれています

麦味噌

麦味噌は九州と山口県、愛媛県を中心に生産されており、味噌に占める割合は5%と少数派です。麦味噌の主な原料は大豆、大麦、塩です

大麦に含まれるたんぱく質は、醸造の過程で分解されており、製品の味噌の中には残っていないといわれています。そのため麦味噌については、グルテンが含まれていないと考えてよいと思います。

なおグルテンフリーの表示をするためには、原材料にグルテンを含むものを使っていないか、または最終製品のグルテン濃度を測定する必要があります。現在の技術では麦味噌のグルテン濃度を正確に測定できないため、グルテンフリーの表示はできません

なお、著名な料理研究家が「麦味噌には小麦が使われているから、グルテンが入っている」という記事をネット上に載せていますが、もともと小麦は使われていませんし、グルテンも分解されて残っていません。

ビール・発泡酒

ビールの原料は、大麦を発芽させたものを乾燥・焙煎した「大麦麦芽」です。

「麦芽」とだけ書いてある場合は、大麦麦芽です。小麦から作られた麦芽もありますが、これは「小麦麦芽」と書いてあります。

日本の酒税法では原料のうち麦芽の占める割合が50%以上のものはビールで、それ以外のものは発泡酒と呼ばれます。発泡酒として売られているものの大半は、大麦や小麦由来の原材料を使っているのでグルテンフリーではありませんが、キリンの「のどごし生」はだけは、大麦、小麦由来の成分が使われていません

詳しくは関連記事をご覧ください。

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麦茶と大麦若葉

麦茶は焙煎した大麦から煮出して作ったものです。麦茶には固形分はほとんど含まれていないことと、グルテンは水には溶けないため、麦茶にはほとんど含まれていないと考えられます

ただグルテンフリーの表示要件には当てはまらないため、厳密にはグルテンフリーとはいうことができません。

青汁で使用される大麦若葉にもたんぱく質は含まれています。青汁の場合、葉を乾燥・粉砕したものがそのまま入っているので、大麦若葉にはグルテンが含まれていると考えられます。

ライ麦はパンとウイスキーの原料

ライ麦は日本では馴染みのない麦ですが、ライ麦パンやカナディアンウイスキーの原料として使われます。

ライ麦パンは、ベーカリーショップなどで時々見かける、黒っぽくて固いパンです。ドイツ、オーストリアや東欧・北欧などでよく食べられます。ほとんどのライ麦パンは小麦粉にライ麦粉を混ぜて作られています。

一方、ウイスキーの原料としてもライ麦が使われています。ウイスキーは発酵したあと蒸留しているので、製品のウイスキーにはグルテンは含まれていません。グルテンでアレルギー反応を起こすセリアック病の人が飲んでも差し支えないアルコール飲料として、明記されています。

オートミールのオーツ麦とハト麦はグルテンフリー

オーツ麦はイネ科カラスムギ属の植物で、小麦、大麦、ライ麦とは異なる種類の植物です。オーツ麦にはグルテンは含まれていません

北欧・東欧・北米ではオーツ麦の栽培が盛んで、脱穀したオーツ麦を乾燥し、さらに加熱してローラーで押しつぶした「オートミール」が、朝の定番メニューとしてよく食べられています。またオートミールに他の穀物やはちみつなどを混ぜて焼いた「グラノーラ」や、オートミールにナッツやドライフルーツを混ぜた「ミューズリー」も、手軽な食品として人気があります。

オートミールにはグルテンは含まれていませんが、グラノーラやミューズリーの中には、大麦や小麦の成分を使ったものがあるので、原材料を確認する必要があります。

日本ではオーツ麦はエンバク(燕麦)と呼ばれて栽培されていますが、藁の部分も含めて飼料として使われることが多いようです。

ハト麦はイネ科ジュズダマ属の植物で、こちらも小麦、大麦、ライ麦とは異なる種類の植物で、グルテンは含まれていません。日本でも栽培されており、雑穀ごはんなどには入っている場合があります。またハトムギ茶や漢方薬の原料としても使われています。

なお「燕」(ツバメ)と「鳩」(ハト)には、グルテンが入っていないと覚えてください。

グルテンは麦芽には入っていて麦芽糖には入っていない

グルテンが入っている、いないでよく間違えるのが「麦芽」と「麦芽糖」です。

麦芽は大麦を発芽させてから乾燥・焙煎したもので、大麦麦芽と呼ばれる場合もあます。小麦を発芽させてから乾燥・焙煎した小麦麦芽もあり、どちらもグルテンが含まれています

大麦麦芽はビールや麦芽飲料の原料に、小麦麦芽はホワイトビールの原料になります。

一方の麦芽糖は麦とは直接関係ありません。グルコースが2個つながってできた糖で、マルトースのことです。麦芽に含まれていたことから麦芽糖という名前がついていますが、いまはトウモロコシでんぷんを酵素で分解して作っており、グルテンは含まれていません

全粒粉と小麦ふすまはグルテンが多い

全粒粉のグルテン含有量は小麦粉より多い

全粒粉が体によいといわれており、全粒粉パンや全粒粉パスタが人気です。全粒粉とは小麦の種皮と胚芽の部分も含めて粉にした小麦粉のことで、ふつうの小麦粉に比べて、

  • 食物繊維、ビタミン、ミネラル、たんぱく質、脂質が多い
  • 糖質が少ない

という特徴があります。これを見た限りでは、よいことづくめです。

アメリカでは過食による糖尿病をはじめとした生活習慣病の増加が社会問題となっており、国を挙げて全粒粉の消費拡大を勧めてきました。全粒粉の消費量が増加する一方で、糖尿病患者の数は減少しています。それでも2020年時点で、アメリカ人の10人に1人強が糖尿病で、3人に1人が糖尿病予備軍です1)

いずれにせよ、このような全粒粉の健康増進効果が実証されたことで、日本でも全粒粉は体によいものだから、積極的に取り入れようとする動きが広まっています。

小麦粉はもともと、胚乳の部分を粉にしたものです。胚乳はでんぷんが主体ですが、種皮と胚芽はたんぱく質を多く含むため、種皮や胚芽を含めて粉にした全粒粉は、小麦粉に比べてたんぱく質の量が7%ほど多くなります※。

全粒粉が体によいのは事実ですが、グルテンは小麦粉よりも多く含まれるので注意してください。

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)の強力粉/1等と強力粉/全粒粉の比較

小麦ふすまのグルテン含有量は小麦粉より多い

小麦ふすまとは、小麦の表皮のことです。お米は表皮が付いた状態の「玄米」を精米して「ぬか」を取り除き「精白米」を作ります。小麦ふすまはこのぬかに相当する部分です。

小麦粉に含まれるたんぱく質の比率は、小麦粉の種類によって異なりますが、6~15%です。これに対して小麦ふすまになる表皮にはたんぱく質が16%、胚芽にはたんぱく質が33%含まれているので、小麦ふすまには小麦粉より多くのグルテンが含まれます

スペルト小麦と古代小麦にはグルテンが入っている

スペルト小麦と古代小麦

現在流通している小麦は、パン、めん類、お菓子の原料として使われる普通小麦と、パスタの原料として使われるデュラム小麦に分けられます。

これに対してスペルト小麦は、普通小麦の祖先にあたる品種で、人間の手が加わっていないから安全だということで、高い値段で流通しています。また古代小麦というのは、スペルト小麦を含め、普通小麦とデュラム小麦の祖先にあたる品種の総称です。古代小麦と現在の小麦の関係は次の通りです。

小麦は長い時間をかけて品種改良され、現在の形になりました。

品種改良される過程で、グルテンの含有量が増え、その結果、小麦アレルギーになる人が増えたという根拠のない説をとなえる人もいますが、これは事実ではありません。

スペルト小麦は普通小麦よりグルテンが少ないといって、スペルト小麦を高い値段で販売されていますが、これも間違いです(あとで理由を説明します)。古代小麦が現在流通している小麦より安全で、栄養学的に優れているというのは、全く根拠のない話です。

スペルト小麦は普通小麦の祖先でディンケル、ファッロとも呼ばれる

スペルト小麦は、現在広く利用されている普通小麦(パン小麦)の原種にあたる穀物で、7000年前から栽培されています。

特に青銅器時代から中世までは、ヨーロッパで主食として用いられてきましたが、品種改良のため次第に姿を消し、ヨーロッパの一部で栽培されるだけとなっていましたが、昨今のオーガニックブームで、生産量が増加しています。日本でもネット通販で購入することができます。

現在私たちが口にしている普通小麦は、人工的に品種改良されたものですが、スペルト小麦は遺伝子操作を含め、人工的な手がほとんど加わっていないといわれています。

ドイツではDinkel(ディンケル)、イタリアではFarro(ファッロ)、スイスではSpelz(スペルツ) と呼ばれています

スペルト小麦粉

なお少し前まで、スペルト小麦の学名は、Triticum speltaまたは Triticum speltoidesでしたが、最新の研究論文では、Triticum aestivum ssp. speltaとなっています。普通小麦の学名は、Triticum aestivum ssp. aestivumなので、現在は、普通小麦の亜種(spp. とはsub species=亜種)となっています。

スペルト小麦のグルテン量は普通小麦と変わらない

スペルト小麦はグルテンフリー、あるいは普通小麦よりグルテンが少ないと思っておられる方がおられるかもしれませんが、それは全くの誤解です。

2009年に第10回国際グルテンワークショップで発表された、普通小麦(4品種)とスペルト小麦(5品種)のたんぱく質の分析結果2) を示します。

たんぱく質の種類 粉に含まれる各たんぱく質の重量%
普通小麦 スペルト小麦
グルテン グリアジン 4.87~6.21 6.75~9.87
グルテニン 2.5~3.5 1.9~2.5
7.4~9.7 8.6~12.4
アルブミン+グロブリン 0.78~0.90 0.77~1.13

スペルト小麦が、普通小麦よりグルテンの量が少ないというのは、全くのウソです。

また小麦にはグリアジンとグルテニンがほぼ同量含まれていると言われてきましたが、この報告ではグリアジンの方が多く、普通小麦ではグリアジン:グルテニン=2:1、スペルト小麦ではグリアジン:グルテニン=3.5:1という結果になっています。

もう一つ、2018年にベルギーの農業研究所の研究者が書いた論文の内容を紹介しましょう3)

195の普通小麦品種と240のスペルト品種について、グルテンの含有量(厳密には、セリアック病のモロクロナール抗体への反応性)を調べています

結論は、普通小麦とスペルト小麦で、グルテン含有量には差はなかったばかりか、最も多くグルテンを含んでいた品種は、スペルト小麦のひとつであったこともわかりました。

ヨーロッパではスペルト小麦のたんぱく質の研究が行われている

日本ではあまり聞きませんが、ヨーロッパではスペルト小麦のたんぱく質の研究が行われています。なぜだと思いますか。

もちろん、小麦アレルギー、セリアック病の原因となるたんぱく質を調べる、という側面もありますが、スペルト小麦と普通小麦を正しく判別することが目的です。

冒頭で述べたように、昨今のオーガニックブームで、人の手が加わっていない(遺伝的に改良されていない)スペルト小麦に注目が集まり、需要が増えています。スペルト小麦として流通している粉や、スペルト小麦から作った製品として販売されているものの中に、価格が安い普通小麦が使われていたとしても、それを確かめる方法がありませんでした。

新しい方法が考案され、グルテンのたんぱく質を細かく分析できるようになり、普通小麦には入っていて、スペルト小麦には入っていないグリアジンの一種が見つかりました。

まとめ

  • グルテンが含まれるのは小麦、大麦、ライ麦のみ
  • 押麦、米粒麦は大麦の加工品、もち麦、はだか麦は大麦の品種、麦芽は大麦を発芽させて焙煎したものなので、いずれもグルテンが入っている
  • 麦味噌は大麦が使われているが、発酵の過程でたんぱく質は分解されて残っていない。ただグルテンフリーと表示することはできない。ビールは大麦麦芽が使われているので、グルテンが含まれている
  • オーツ麦とハト麦にはグルテンが入っていない
  • 全粒粉には小麦粉より多くのグルテンが入っている小麦ふすま(小麦ブラン)には小麦粉より多くのグルテンが入っている
  • 現在流通している普通小麦の直接の祖先がスペルト小麦。スペルト小麦を含め、現在流通している小麦の祖先をまとめて、古代小麦という。スペルト小麦は普通小麦とグルテンの量は変わらない

参考文献
1) National Diabetes Statistics Report, 2020, Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/diabetes/pdfs/data/statistics/national-diabetes-statistics-report.pdf
2) Koenig et al., Distinguishing wheat and spelt using typical protein markers, Proceedings of the 10th international gluten workshop 142-145 (2009)
3) E. Escarnot, et.al., Reactivity of gluten proteins from spelt and bread wheat accessions towards A1 and G12 antibodies in the framework of celiac disease, Food Chemistry 268, 522-532 (2018)

グルテンフリー食品まとめ

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