薬剤師が解説するどこよりも詳しいグルテンフリーガイド

日本のグルテンフリーメニュー・グルテンフリー食品を取り巻く現状と課題

日本でも、グルテンフリー食品を提供するお店が増えてきました。しかしグルテンフリーに関して、明らかに間違った情報がネットを中心に出回っていて、誤解をされている方も多いようです。消費者、供給者、科学者の立場から、日本におけるグルテンフリーメニューやグルテンフリー食品を取り巻く現状と課題について、まとめてみました。

グルテンフリーの飲食店・食料品店が見つからない!

まず最初に、グルテンフリー食品を求める消費者の立場から考えを述べたいと思います。

ふだんから小麦やグルテンを摂らないようにしている人にとって、外で食事をするのは一苦労です。特に旅行先や出張先で、何か食べようと思ったとき、グルテンフリーメニューのあるお店がなかなか見つかりません。和食を食べれば何とかなりますが、たまにはカフェで食事をしたり、ラーメンを食べたくなることだってありますよね。

ネットで、「グルテンフリー」「○○(地名)」と入れても、一般的な検索サイトはもちろん、飲食店に特化した検索サイトでも、グルテンフリーのメニューを提供しているお店を見つけることは困難です。

検索エンジンが口コミに書かれた「グルテンフリー」というワードを拾っていたり、グルテンフリーがベジタリアン、ビーガン、マクロビオティックと同じカテゴリーで扱われていたり、ということがほとんどです。またすでに閉店したお店がヒットすることもよくあります。

アメリカやヨーロッパでは、多くのレストランにグルテンフリーメニューがあります。また大きな食品スーパーに行けば、必ずグルテンフリーコーナーがあり、グルテンフリーと表示された食材が簡単に手に入ります。

日本では食物アレルギーの原因となるアレルゲンのうち、小麦を含む 7 品目については、包装して販売される食品に表示義務がありますが、レストランのメニューには表示義務はありません。

大手の外食チェーンでは、ウェブサイトでアレルゲン表示をしているところが増えましたが、ただ使われているものを書いているだけで、小麦が使われていないものを探すのは一苦労です。

小麦アレルギーやグルテンに弱い体質の人は一定数おられます。またグルテンフリーの食生活に切り替えることで、日頃の体調不良が軽減する可能性がある人もかなりの数にのぼると考えられます。にもわわからず、グルテンフリーメニューを提供する飲食店や、グルテンフリー食品を売っているショップが簡単に見つからないというのは、改善すべき課題ではないでしょうか。

このサイトではグルテンフリーの料理が食べられる飲食店や、グルテンフリーのパンやスイーツを買えるお店を紹介しています。情報は適宜追加、更新していますので、活用していただければ嬉しいです。

 

グルテンフリーメニューの価値がわかってもらえない

続いては、グルテンフリーのお料理や食品を提供するお店の立場からです。

グルテンフリーメニューはそうでないメニューより、原材料コストが高くなります。例えば小麦粉と米粉の値段を比べると、米粉は小麦粉の 3~4 倍です。これは米粉の流通量が少ないということではなく、お米自体の値段が小麦粉の 3~4 倍するのです。

グルテンフリーメニューや食品を提供されているお店は、経営者のポリシーによるところが多いようです。オーナーやシェフご自身やご家族に小麦アレルギーの方や、グルテンに弱い体質の方がおられることから、誰もが気軽に食事を楽しめるようにとの想いで、グルテンフリーメニューや食品を出されています。残念ながら、現時点ではグルテンフリーメニューを提供しても、それだけで利益につながることはありません。

たいへん残念なことですが、ここ数年でグルテンフリーメニュや食品を提供されていたお店がいくつか閉店してしまいました。コロナ禍の影響もあるとは思いますが、手間がかかるうえ割高になるグルテンフリーメニューを出しても、お店が儲かることにはつながらないようです。

グルテンフリーの食を求める立場からすると、グルテンフリーメニューを提供して下さるお店は貴重です。潰れてもらっては困りますし、もっと儲かって欲しいのです。そのためにはグルテンフリーに関する正しい情報とメリットを世の中に伝え、グルテンフリーメニューの価値を知ってもらい、グルテンフリー食を求める人が増加することが大切だと思います。

 

 

グルテンフリーについて正しい情報が伝わっていない

ネット上には、グルテンフリーが有益だという記事もありますが、グルテンフリーなんて無駄、逆にデメリットしかないといった情報も見かけます。ネットの記事をちょっと読んだだけでは、どちらが正しいのかわかりません。

ご自身が小麦アレルギーやグルテンに弱い体質の方は、小麦たんぱくやグルテンの影響についてよくご存じですが、それ以外の方の多くは、グルテンやグルテンフリーについて、ぼんやりとしたイメージしか持っていません。

グルテンフリーについてマスメディアで取り上げられることがありますが、ほとんどの場合が個人の体験談のような、ふわっとした話です。数年前はセレブのダイエット法として取り上げられましたし、最近では大リーグで活躍する大谷翔平選手が、食事にグルテンフリーを取り入れていることが伝えられました。

しかし、ハリウッドセレブやアスリートが、なぜグルテンフリーを取り入れたのか、何を食べているのか、どのような効果があるのかなど、詳しい内容まではは伝わってきません。

グルテンフリーはもともとセリアック病の患者さんのための食事療法なので、セリアック病ない人が、グルテンフリーのルールを厳密に守ることは意味がありません(これは事実です)。しかしこのことが、セリアック病でない人が、グルテンフリーをすることは意味がない、と間違って伝えられていることがあります。医師が監修した文章でさえ、そのようなことが書かれています。

このサイトで紹介しているように、グルテンが影響している病気や症状は、セリアック病以外にもたくさんあります。これは私が勝手に言っていることではなく、医学論文として公表されているものです。論文というのは、客観的なデータに基づいて研究結果を発表しているもので、第三者による確認作業(査読といいます)が行われています。何の根拠もなく、意見を述べているわけではありません。

グルテンフリーについて正しい情報が伝わっていないために、グルテンフリーの必要性やメリットが浸透していないことはたいへん残念です。グルテンフリーの食生活にすることで、日頃の体調不良が軽減する可能性がある人がいるにもかかわらず、世の中にあまり知られていません。

正しいか、正しくないかは、科学(サイエンス)によってのみ証明されます。そしてその情報は年々更新されていきます。とりわけ医学の分野の研究スピードは速く、たった 10 年で結論が変わることだってあるのです。ですから常に最新の研究成果をウォッチしていくことが重要です。

このサイトでは、グルテンフリーに関する最新情報をお伝えしています。グルテンフリーについて説明しているウェブサイトのほとんどは、情報の出所が書かれていません。これでは書いてある内容が客観的な事実なのか、個人の意見なのか、判断できません。このサイトでグルテンフリーの効果を説明するときは、必ず情報の出所を記載しています。そしてその出所は、公表された医学論文か、公的機関のウェブサイトです。

 

グルテンフリーのメリットをわかってもらうことが重要

グルテンフリーを求めている消費者にとっては、グルテンフリー食品を扱うお店が増え、可能であればその価格が下がってくれると嬉しいです。一方、グルテンフリーのメニューや商品を提供するお店は、消費者がグルテンフリー食品の価値を理解し、製造コストに見合った価格で購入する人が増えることが、事業の継続につながります。

そのためには、グルテンフリーについて正しい情報を世の中に発信し、グルテンフリーの意味やそのメリットを多くの人に知っていただくことが重要と考えています。この記事を読んで下さっている方の多くは、グルテンフリーの意味やそのメリットをよくご理解いただいていると思いますが、そのような方は日本ではまだまだ少数派なのです。

グルテンフリーはセリアック病の患者さんのための食事療法なので、セリアック病でない人がグルテンフリーのルールを厳密に守ることは意味がないといいました。誤解しないで欲しいのは、グルテンフリーという食習慣そのものに意味がないといっているのではありません。小麦に含まれる成分が、からだに負担をかけることは、医学的に証明されています。ですから、からだに悪影響が出ないレベルまで、小麦を摂る量を減らせばそれでOKです。

グルテンフリーという表示は、セリアック病の患者さんが食べても、からだに悪影響が出ないレベル、という目印です。グルテンフリーという表示だけを指標にするのではなく、自分のからだに影響が出ないようにするには、何をどれくらい減らせばよいのか、一人ひとりが確認することが重要です。

そして、小麦成分を摂る量を減らした結果、日頃の体調不良が解消される方が増えることで、グルテンフリーのメリットを実感する人が増えるのではないかと考えています。

グルテンフリーの表示方法にも改善の余地がある!?

欧米ではグルテンフリーと表示されたメニューや食品をよく見かけますが、勝手に表示しているわけではなく、グルテンフリーと表示するためのルールが決まっています。国によって異なりますが、だいたい食品 1 kg に含まれるグルテンの量が 20 mg 以下のときに、グルテンフリーという表示をしてもよいことになっています。

何度もいいますが、これはセリアック病の患者さんが食べても、多くの場合、健康に影響が出ないといわれているレベルです。しかし現実にはこのレベルで影響が出る人もいれば、もっとたくさんグルテンを摂っても大丈夫という人もおられます。要は、目安のためのルールということになります。

セリアック病の人が人口の 1 % いる欧米では、グルテンフリーと表示されたメニュや食品に対するニーズが高いのですが、日本の場合はセリアック病の報告はそう多くはありません。だからといって、日本だけ独自の表示基準を設けるというのは、意味があるとは思えません。今後、海外からのインバウンド需要が回復したときに、グルテンフリーについて独自の表示基準を設けてしまうと、混乱を招くだけです。

日本にはグルテンフリーという表示について、何のルールもありません。外国のように、何らかのルールを設けるべきです。設けないのであれば、例えばアメリカのFDA(食品医薬品局)の基準に従って表示していますなど、何らかの基準に従っていることを明示したほうがよいでしょう。

一方で FDA の基準に従うと、小麦成分が含まれるしょうゆ、みそ、酢が入っているメニューや食品については、グルテンフリーの表示ができません。こうなると、ほとんどの和食は、グルテンフリーではなくなってしまいます。小麦アレルギーの人が食べても大丈夫なのに・・・。

ふつうのしょうゆは小麦が原料として使われていますが、小麦に含まれるたんぱく質は醸造の過程で分解され、しょうゆの中には残っていません。小麦アレルギーの原因となるアレルゲンも、分解されて残っていないため、しょうゆはほとんどの小麦アレルギーの人が摂っても大丈夫といわれています 1)日本に住むわたしたちが、グルテンを摂る量をできるだけ減らすという目的には、欧米のグルテンフリーという規準は、必ずしも適していないのです。

このウェブサイトは、日本人向けに、メニューや食品に含まれるグルテンの量を、次の 5 段階で表示しています。

★★★★★ 小麦成分、グルテンを全く含まず、混入の恐れもない。グルテンフリーと表示可能
★★★★  小麦成分、グルテンを含まない(グルテン濃度20ppm以下)。グルテンフリーと表示可能
★★★   海外のグルテンフリー表示の要件には当てはまらないが、小麦成分、グルテンをほぼ含まない。
★★    非セリアックグルテン過敏症、過敏性腸症候群の人は食べても問題ないレベル。
     健康目的でグルテンフリーをする人が食べても問題ないレベル。

海外のグルテンフリーの要件に当てはまらなくても、グルテンをほとんど含んでいないメニューや食品はたくさんあります。微量の小麦成分が含まれているからといって、それらのメニューをグルテンフリーではない、と言い切ってしまうことは、日本の多くの消費者の利益につながりません。
海外のグルテンフリーのルールに厳密に従って生活すると、食事のコストは上がってしまい、長続きしません。

海外でのグルテンフリー表示の目的は、セリアック病の人が安全に食べられるものを見つけやすくすることでした。日本では小麦成分やグルテンをできるだけ摂らないという目的で、グルテンに関する表示がされるべきだと考えるのです。

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参考文献

1) 厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き 2017

https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2017.pdf

グルテンフリー食品まとめ

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