グルテンがからだによくないことがわかっていても、小麦はいろんな食べ物に使われているので、グルテンフリーを実行するのは大変ですね。でも「特定原材料:小麦」と書いてあっても、小麦がわずかしか入っていない食べ物も多いんです! ですから、グルテンが多く含まれる食べ物を避けることで、からだの中に入る量をかなり減らせるんですよ。
グルテン含有量は、商品や調理方法、盛り付け方法によって違いがあります。この記事では文部科学省が公表している、日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)に記載されているたんぱく質量に基づいて計算しました。
1位 ラーメン
グルテン含有量が多い食べ物の 1 位は、ラーメンです。ラーメンに使われる中華麺は、コシを強くするために、グルテンが多く含まれる中力粉が使われています。ラーメン 1 人前には、だいたい中華麺が 150 g が使われますが、ここにはグルテンが 11.0 g 含まれています。
ただしこの数値はあくまでも目安です。お店によって使っている麺の種類が違いますし、大盛にすればグルテンの量はもっと増えます。また、同じく中華麺を使った焼きそばも、ほぼ同じ量のグルテンが含まれると考えてください。
ところで、ラーメン屋さんで食べるラーメン以外に、袋に入ったインスタントラーメンやカップめんもあります。こちらはどうなんでしょうか。
袋めんは商品によって違いが大きいので、ロングセラー商品であるA社のワンタンメンについて調べてみました。こちらは 1 食あたり 95 gと小さめの商品ですが、1 食あたりのグルテン量は 8.2 g と推定されました。
同じくカップめんも商品によって全く異なるのですが、こちらもロングセラー商品であるN社のカップヌードルについて調べました。こちらもめんの量は 65 gと少な目で、1食あたりのグルテン量は 6 g 程度と思われます。
「なるほど! 袋めんやカップめんの方が、ラーメン屋さんのラーメンよりグルテンの量が少ないんだ!」とは思わないでください。メニューや商品によって差が大きいので、あくまでも目安です。ですから、お店で食べるラーメンをカップめんに置き換えても、あまり意味がありません。
保存ができて調理が簡単なインスタント食品は、急いでいるときや災害のときには助かりますが、さまざまな食品添加物が使われています。できれば摂らないほうがよい成分も含まれていますので、日常的に食べるのはやめたほうがよいかもしれませんね。
ラーメンが食べたくなったら、グルテンフリー麺を出してくれるラーメン屋さんへ行くという方法があります。ただ、全国にわずか 30 店ほどしかありません。さらに麺はグルテンフリーだったとしても、ラーメン自体はグルテンフリーではないこともあります。
一番確実なのは、グルテンフリー麺を買って、おうちで作ることです。最近、米粉や玄米粉を使った中華風の麺が手に入るようになりました。値段が高いのが課題ですが、味はなかなかよいです。スープ付きの商品もあるので、お店の味と同じグルテンフリーラーメンを、自宅で味わうこともできます。
2位 パスタ
バスタ好きの人は多いと思いますが(私もそうです)、残念ながらパスタには多くのグルテンが含まれています。パスタ 1人前はだいたい乾めん 100 g ですが、茹でると 220 g になります。パスタ 1 人前にはグルテンが 10.8 g 含まれています。
パスタの原料となるデュラム小麦は、パンや他のめん類の原料になる普通小麦とは系統が異なる品種で、普通小麦よりもグルテンが多く含まれています。そのためパスタに加工すると、他のめん類に比べて弾力性が強いシコシコとした食感が得られるのです 1)。
パスタの本場と言えば、そう、イタリアですね。実はイタリアは、グルテンが原因で起きるセリアック病や非セリアックグルテン過敏症の患者さんが多いため、グルテンに関する研究が盛んに行われています。2018 ~ 2022 年の 5 年間に、世界各国で 4,800 のグルテンに関する研究論文が発表されましたが、約半数にイタリアの研究者が関わっています 2)。
また、食品スーパーへ行けばだいたいグルテンフリーコーナーがあり、グルテンフリーのパスタが簡単に手に入ります。最近、日本でも大きなスーパーでは、グルテンフリーパスタを見かけるようになりました。
グルテンフリーパスタの主な原料は、とうもろこし粉(コーンスターチ)と米粉ですが、玄米粉を使ったもの、黄エンドウ豆やレンズ豆などの豆の粉を使ったものもあります。また輸入品の中には、そば粉を使ったものもあるので、そばにアレルギーがある方は注意して選んでください。
グルテンフリーのパスタは、ふつうのパスタに比べると 1.5~3 倍くらいの値段です。味と食感は、製品によってまちまちです。小麦粉のパスタに味と食感が近いのは、輸入品のグルテンフリーパスタです。大量生産されて世界各国へ輸出されているので、品質がよいものを比較的安い値段で手に入れることができます。
ところで、市販のパスタソースの中にも、「特定原材料:小麦」の表示があるものを見かけますが、これは避けるべきなんでしょうか。これはとろみ付けのために小麦粉を使っているものがほとんどです。
例えばミートソース。4 人前のミートソースを作るのに、大さじ 1 杯の小麦粉(薄力粉)を入れたとすると、ミートソース 1 人前には、0.2 g のグルテンが含まれることになります。麺に含まれる量に比べたら少ないのですが、ミートソースの中には、小麦成分を含まない商品もあるので、もし可能なら避けたほうがよいでしょう。
3位 パン
パンの原料は小麦粉ですから、グルテンがたくさん入っていて当然です。しかも、パンの原料となる強力粉は、小麦粉の中で、最もグルテンが多く含まれます。でもパンといっても、いろいろありますよね。ここでは代表的なパンに含まれるグルテンの量をご紹介しましょう。
食パン 6 枚切り 2 枚 9.0 g
フランスパン 1/3(80 g) 6.4 g
ランチパック 1 パック 5.5 g
菓子パン(あんパン、ジャムパン、クリームパンなど、1 個 110 g) 4.7~5.7 g
毎朝、トーストを食べている方は多いと思います。これを、ごはん、納豆、お味噌汁に置き換えるだけで、グルテンの摂取量を 9 g も減らすことができます。
また、手軽に食べられる総菜パンや菓子パンには、およそ 5 g のグルテンが含まれています。時間がないから、昼食をパンで済ませているという方も多いのでは。もし可能なら、コンビニのおにぎりに置き換えてみてはいかがでしょうか。
ところで最近、グルテンフリーの米粉パンが買えるお店も増えてきました。特に小さなベーカリーで作っている米粉パンは、小麦粉のパンより美味しかったりするんですよ。おいしい小麦粉のパンは小麦の香りがして美味しいですが、お米で作ったパンは、お米の味と香りがします。お値段は高いですが、それに見合う内容だと思います
食パンだけでなく、バケット、惣菜パン、ベーグルなどもあります。特に米粉パンの総菜パンは、和の食材とよく合います。また食べたことがないという方は、一度試してみて下さい。
米粉パンの看板を出しているお店はたくさんありますが、グルテンフリーのパンが手に入るところは限られます。ここでは、販売されているパンはすべてグルテンフリー、というお店を、リストアップしました。小麦粉やグルテンを扱っていないので、コンタミの可能[…]
4位 グラタン
意外かもしれませんが、グラタンには大量のグルテンが含まれている場合があります、それは具材として使われているマカロニやパンに、もともとグルテンが含まれている上に、ソースの材料として小麦粉が使われているためです。
レシピによって含まれるグルテンの量は変わりますが、私が調べた一般的なレシピどおりに作った場合、マカロニグラタン 1 人前には 11.4 g、ミートソースグラタ 1 人前には 8.6 g のグルテンが含まれる計算となりました。
なお、小麦粉を使わないグラタンのレシピもたくさんあるので、おうちでグルテンフリーのグラタンを作ることは難しくありません。
5位 うどん・そば
うどんの原料は小麦粉なので、グルテンが多いのはわかります。でも、そばの原料はそば粉なのに、なんでグルテンが入っているのでしょうか? 実は値段の安いそばの原料はほとんど小麦粉で、そば粉は少ししか使われていないんです。
まず、うどんに入っているグルテンの量から説明しましょう。うどんは小麦粉の中でも、グルテンが多く含まれる中力粉が原料です。グルテンが入っているおかげで、コシの強い麺が生まれます。
うどんも、原材料や製法によっていろんな種類がありますが、一般的なうどん 1 玉には、グルテンが 5.1 g 含まれています。天ぷらなどの具材にも小麦粉が使われていることがあるので、うどん 1 人前には、5 g 以上のグルテンが含まれていることになります。
続いて、そばについて説明します。そばは蕎麦の実を粉にしたそば粉に、水と塩を加えてこねて、麺にしたものですが、そば粉だけでは粘り気のある生地にならないため、麺にするのは難しいといわれています。そのため、そば粉に、小麦粉やグルテンを加えて生地を作っています。
また、そばの美味しさの一つとして「喉ごし」があげられますが、そば粉だけで作った麺より、小麦粉を加えて作った麺の方が、喉ごしがよいといわれており、そば粉 8 に対して小麦粉 2 を加えた二八そばが人気です。1 人前あたりのグルテンの量は、二八そばの場合では 1.4~1.6 g となります。
おうちでそばを作るとき、乾めんを使われる方も多いと思いますが、乾めんの場合は、そば粉の割合が 30 % 以上であれば、そばと表示してよいルールになっています。乾めん 100 g が 1 人前になるので、そば粉の割合が 30 % の乾めんを使った場合、グルテンの量は 1 人前あたり 4.9~5.6 g とかなり高くなります。
うどんについては、いろんな種類の米粉うどんが発売されており、大きな食品スーパーへ行くと買うことができます。お値段は高いですが、小麦粉のうどんとは違った美味しさを楽しむことができます。
そばも、小麦粉やグルテンを使わず製麺した十割そばを選べば問題ありません。乾めんはどこでも手に入りますし、十割そばを出す蕎麦屋さんもあります。そばについては、下の記事も参考にしてください。
そば粉とお水だけから作ったお蕎麦を、十割そば(じゅうわりそば)といいます(食塩が使われる場合もあります)。一般的なお蕎麦は、そば粉と小麦粉を混ぜて作るので、グルテンフリーではありませんが、そば粉とお水だけが原料ならグルテンフリーなのでは。で[…]
6位 ピザ
デリバリーや冷凍食品で購入する機会が多いピザも、原料が小麦粉なので、グルテンが多く含まれています。原材料や大きさにもよりますが、ピザ 1 人前で 7~9 g のグルテンが含まれています。
海外ではグルテンフリーのピザを扱うお店がありますが、日本では数が少ないです。お家で粉から作るのは難しいので、私は食べるのをあきらめています。
7位 ハンバーガー
アメリカの国民食といわれるハンバーガー。日本でも若年層を中心に、広く浸透しています。ハンバーガーはバンズがパンなので、グルテンが含まれています。では実際にどのくらいの量のグルテンが入っているんでしょうか
実際にハンバーガーを購入し、分解して重さを量って調べたことがあります。その結果、ふつうのハンバーガー 1 個あたり 4.3 g、ビックマック 1 個あたりでは 8.8 g のグルテンが含まれていると推定されました。結構多いですね。
海外ではグルテンフリーパンを使ったグルテンフリーバーガーを出しているところもあるようですが、日本ではほとんどありません。ライスをバンズに使ったライスバーガーもあり、冷凍食品も出回っていますが、ハンバーガーとは別の食べもののような気がします。少々面倒ですが、グルテンフリーパンを買ってきて、おうちで作るのがよいと思います。
8位 パンケーキ
メープルシロップとバターが乗ったふわふわのパンケーキ。美味しいですね。パンケーキも小麦粉が主原料なので、パンケーキ 1 人前あたり、6~7 g のグルテンが入っています。
おうちでパンケーキを作るとき、ミックス粉を使う方が多いと思いますが、小麦粉不使用のパンケーキミックスが発売されています。これを使えば、グルテンフリーパンケーキが簡単に作れます。味も小麦粉のものと遜色なく、むしろ美味しいものもあります。まだ使ったことがない方は、試してみて下さい。
9位 お好み焼・たこ焼き
お好み焼きもたこ焼きも、水で溶いた小麦粉が原料です。お好み焼き 1 人前あたり 4~6 g、たこ焼き 1 人前あたり 4~5 g のグルテンが含まれています。
お好み焼きもたこ焼きも、市販の米粉を使って作ることができます。初めて食べると、ちょっと固い感じがしますが、山芋などを加えることで調節できます。レシピもたくさん出回っていますので、試してみて下さい。
10位 クラッカー
おやつにも、軽食にも、非常食にもなるクラッカー。便利なんですが、小麦粉が主原料です。どれくらい食べるかにもよりますが、30 g(5枚くらい)あたり 2.6 g のグルテンが含まれています。パーティーのお料理でオードブルとして出てくることも多いので、グルテンを控えている方は食べ過ぎないようにしてください。なお小麦アレルギーやセリアック病の方は、絶対に食べないでください。
まとめ
いかがでしたか。西洋式の食生活を送っている場合、1 日に 5~30 g のグルテンを摂っているといわれていますが3)、ここにあげた食べ物を食べないようにするだけで、ふだんの食生活で摂るグルテンの量をかなり減らすことができます。揚げ物の衣や加工食品の増粘剤として小麦粉は使われていますが、これらを許容したとしても、1 日あたりのグルテン摂取量を 5 g 以下にすることが可能です。
小麦アレルギーやセリアック病で見られるアレルギー反応は、微量のたんぱく質で起きますが、非セリアックグルテン過敏症や、過敏性腸症候群の場合、症状の重さと原因物質の量は比例することが多いです。そのため、からだの中に入るグルテンの量を減らすことで、症状を緩和することができるかもしれません。どのくらいの量でどのような症状が出るかについては、個人差が大きいので何とも言えませんが、少なくとも完全なグルテンフリー生活をするよりも、楽な食生活を送れることは間違いないと思います。
参考文献
1) 農林水産省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/mame.html
2) アメリカ国立医学図書館 情報検索システムPubMed 、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
3) Barbaro MR, Cremon C, Wrona D, et al. Non-Celiac Gluten Sensitivity in the Context of Functional Gastrointestinal Disorders. Nutrients. 2020;12(12):3735. Published 2020 Dec 4. doi:10.3390/nu12123735