米粉を使ったパン、お菓子、麺類などが、広く出回るようになりました。ズホチカラ、コシヒカリ、あきたこまち、ゆめぴりかなど、原料となっているお米の品種が表示されているものもあります。また大きなスーパーへ行くと、さまざまな種類の米粉が並んでいて、① 菓子・料理用、② パン用、③ 麺用 など、用途別の表記がされている商品もあります。さらに、ノングルテン表示があるものと、ないものもあります。
これらは何がどう違うのか、ノングルテン表示がない米粉を小麦アレルギーの人が食べると危険なのか、専門家が解説します。
米粉の用途別表記
米粉の国内普及・輸出拡大に向けて、農林水産省が2017年に決めたもので、米粉を用途に応じ ① 菓子・料理用、② パン用、③ 麺用に分類しています。
分類の主な基準になっているのは、米粉に含まれるでんぷんのアミロースの含有率です。でんぷんはグルコース(ブドウ糖)がつながってできていますが、そのつながり方によって、アミロース(直鎖状)とアミロペクチン(分枝状)の 2種類があり、その比率によって、食感や加工適性が違ってきます。

例えば米粉パンを作る場合、アミロースを多く含む米粉ではパサパサしたパンになります。一方、アミロースが少ない(アミロペクチンが多い)米粉から作ると、しっとりとしたパンとなりますが、腰が折れて変形しやすくなります。米粉ケーキを作る場合、アミロースを多く含む米粉を使うと、さらっとした食感で型崩れしにくく、アミロースが少ない米粉を使うと、しっとり感が出ます。ちなみに、ごはん(炊飯したお米)の場合は、アミロースが少なければ少ないほど美味しいとされています。
米粉の用途別表示と、でんぷんに占めるアミロースの比率、おすすめの用途をまとめました 1)。
| 1番 菓子・料理用 | 2番 パン用 | 3番 麺用 | |||
| アミロース含有率(%) | 20%未満 | 20%以上25%未満 | 20%以上 | ||
| ソフトタイプ | ミドルタイプ | ハードタイプ | |||
| アミロース含有率(%) | 15%未満 | 15%以上20%未満 | 25%以上 | ||
| 用途 | シフォンケーキ、クッキー | スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉、とろみ付け | パン全般 | 麺全般 | 洋酒に浸すなどの固めのケーキ |
この分類は、あくまで一般論と考えた方がよいでしょう。2番 パン用 と3番 麺用 については、グルテンを 18~20% 添加することを想定しています。2番 パン用のグルテンフリーの米粉も発売されていますが、これを使って、サイリウムや増粘剤を添加せずにパンを作った場合、うまくいかないことがよくあります。
パン作りに適した米粉の条件
パン作りに適した米粉の条件は
- 粒径が小さいこと
- でんぷんの損傷が少ないこと
の 2 つです。
パンは、発酵するときに酵母が出すガスで生地が膨らむことで、ふっくらしたパンになります。小麦粉に含まれるたんぱく質であるグルテンは、生地に粘り気と弾力を与え、生地の内部にガスを閉じ込めるため、生地が膨らむのを助けます。
一方、米粉にはグルテンが含まれていないため、ガスを生地の内側に閉じ込めるために、粉の粒径を小さくする必要があります。粒径が大きいと、粒の隙間からガスが抜けてしまい、生地が膨らみません。
また米粉にはでんぷん顆粒が含まれていますが、お米を粉にするときにこれが損傷すると、でんぷんが水を吸いやすくなり、酵母が出す酵素によって分解されやすくなるため、さらに膨らみにくくなるのです。
そのため、パン作りに適した米粉を作るためには、
- パン用米粉の製造に適した品種を使うこと
- でんぷんが損傷せずに粒径が細かい粉が得られる製粉技術を使うこと
が重要です。

パン用米粉の製造に適した品種
パン用米粉の製造に適した品種として、次の 5 品種が開発されました。製粉したときに、でんぷんの損傷が少ないことと、でんぷんに占めるアミロースの比率がポイントとなっています。なお令和 3 年の時点で、「ミズホチカラ」以外の品種は、栽培されていません。
ミズホチカラ
白米のアミロース含有率は 22 %で、米粉パンの膨らみがよく、パンの製造に向いています。農研機構九州沖縄農業研究センターが育成した品種で、熊本県と山口県で栽培されています。
西日本で広く栽培される「ヒノヒカリ」と同じ地域で栽培が可能で、「ヒノヒカリ」より出穂が 1週間程度、成熟が 20日程度遅いが、収量は「ヒノヒカリ」より 41 %多いといわれます。
熊本製粉が、ミズホチカラを 100 %使用した製パン用米粉を製造・販売しており、この米粉を使えばグルテンや増粘剤を使わなくても、ふんわり、しっとりしたパンを作ることができます。またこの米粉はグルテンフリー認証を取得し、7大アレルゲンの混入を防止した専用工場で生産するなど、製品としての価値を高めています。
ほしのこ
米粉の粒子が細かく、損傷デンプンが少ない良質の米粉ができます。パン・洋菓子・麺用として小麦粉の代わりに使える米粉が、一般品種より容易に製造できます。「ほしのゆめ」と同じ熟期の品種です。農研機構北海道農業研究センターが育成し、北海道が栽培適地の品種です。
ゆめふわり
米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、米粉パンに適しています。「あきたこまち」と同じ熟期の品種です。農研機構東北農業研究センターが育成し、「あきたこまち」の栽培地で栽培可能です。
こなだもん
米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、米粉パンに適しています。「ヒノヒカリ」と同じ熟期の品種で、「ヒノヒカリ」を栽培している西日本の広い地域で栽培できます。農研機構九州沖縄農業研究センターが育成しました。
笑みたわわ
白米のアミロース含有率は 21 %で、「ヒノヒカリ」より米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、製粉適性に優れます。「ヒノヒカリ」より 10日程度遅い熟期の品種で、農研機構九州沖縄農業研究センターが育成しました。「ヒノヒカリ」より 51 %多収です。
パン用米粉の製粉技術
パン作りには、粒径が細かく、でんぷんが損傷していない米粉が適しています。このような米粉を作るためには、特殊な製粉技術が必要です。よく使われるのが気流粉砕機で、高速な気流の中に原料を入れ、原料どうしをぶつかり合わせることで粉砕する方式です。
乾式気流粉砕機では、でんぷんの損傷度は 10 %程度ですが、原料を一度水に浸して柔らかくしてから粉砕する湿式気流粉砕機ではでんぷんの損傷度を 5 %以下にすることが可能です。メーカーによって違いはありますが、湿式気流粉砕機で粉砕した米粉の平均粒径は 20 µm程度と、かなり細かくなっています。
これに対し、和菓子の原料として昔から使われてきたうるち米の粉「上新粉」は、2つの回転するロールの間にお米の粒を通すことで粉砕する、ロールミルを使って作られます。ロールミルによる粉砕は簡単で、コストもかかりませんが、出来上がった粉は粒径が大きく、でんぷんが損傷した状態になります。
食味ランキングと米粉への向き・不向きは無関係
製パン用に開発されたお米の品種で、栽培されているのは ミズホチカラ だけです。それより、コシヒカリ、あきたこまち、ゆめぴりか といった、いわゆる銘柄米を使った米粉パンの方をよく見かけます。ちなみに、新潟魚沼産コシヒカリ、秋田産あきたこまち、北海道産ゆめぴりかは、食味ランキングで特A銘柄になるなど(令和6年度)、美味しいお米の代表格です。
食味ランキングは、
- 炊飯したお米(ごはん)を専門の評価員が試食して、比較・判定する官能試験
- お米の成分を分析して、その結果を点数化する理科学分析
- 米粒の外観(形、透明度)やごはんの粘りと固さによる評価
から成ります。すなわち、ごはんとして食べることを前提とした評価であり、米粉への向き・不向きとは直接関係ありません。
それだけでなく、粘り気が強く、もちもちとしたごはんの方が好まれるため、食味ランキングではアミロース含量が低いほど、評価が高くなりますが、製パン用の米粉のアミロース含量は 15 %以上 25 %未満 が理想とされています。またごはんとして食べる場合は、米粒の外観が重視されますが、粉砕する場合は、外観はさほど問題にはなりません。
コシヒカリ、あきたこまち、ゆめぴりかといった銘柄米から、地産地消で米粉パンや米粉めんを作るというのは、理にかなっていますが、価格の高い銘柄米の米粉で作られた米粉パンが、必ずしも優れているというわけではないようです。
ノングルテン米粉
米粉には、ノングルテンと書かれたものと、何も書かれていないものがありますが、何が違うのでしょうか。
ノングルテンというのは、農林水産省が 2017年に作った日本独自の制度で、米粉と米粉加工品が対象です。ノングルテンの表示をするためには、製品中のグルテン濃度が 1 ppm 以下でなければなりません。1 ppm といってもピンとこないと思いますが、200 kg の米粉に、小さじ1 杯の薄力粉(小麦粉)が混ざっていると、グルテン濃度が 1 ppm になります。
このノングルテンという表示は、海外では通じません。海外では グルテンフリー(Gluten-free)という表示が一般的で、製品中のグルテン濃度が 20 ppm 以下であることを指します(国によって違います)。ノングルテンは米粉と米粉加工品だけが対象ですが、グルテンフリーはすべての食品が対象です。
それはさておき、ノングルテンの表示をするためには、日本米粉協会という組織にお金を払って申請し、審査と検査を受けて、認証してもらう必要があります。認証がおりると、製品にノングルテンの認証ロゴマークを表示することができます。ただ認証の有効期間は 5年間なので、5年経ったらまたお金を払って、認証を受ける必要があります。
ところで日本では、食品表示法によって食品のアレルゲン(特定原材料)表示基準が定められており、食品中に含まれるたんぱく質が 10 ppm 以上の場合、表示が義務付けられています。もちろん米粉も対象で、もし小麦たんぱく質が 10 ppm 以上含まれているとすると、「特定原材料:小麦」と表示しなければなりません。
でも皆さん。そんな米粉やお米、見たことありますか? ありませんよね。小麦アレルギーの方は、ノングルテン表示がないお米や米粉をふつうに食べて、問題なく生活しています。
したがって、米粉を選ぶ際に、ノングルテンの表示の有無は気にする必要がありません。「グルテンフリーの 20 ppm より、ノングルテンの 1 ppm の方が厳密だから、優れている。」という話をたまに聞きますが、無意味な話だと思います。
国内で販売されているパン用の米粉
各メーカーからさまざまなパン用米粉が発売されていますが、見ただけでは違いが分かりません。実際使ってみると、全く性質が違う粉です。
製パンの性能に影響する指標は、でんぷん損傷度、粒径、アミロース含量の3つです。2017年に農林水産省が公表した「米粉の用途別基準」には、パン用米粉と表記する基準として、次のような数値があげられています。
- でんぷん損傷度: 10 %未満
- 粒度(粒径): 粒径 75 µm 以下の比率が 50 % 以上
- アミロース含量: 15 % 以上 25 % 未満
でんぷん損傷度も粒径も小さいほうが製パンに適しています。各商品のこれらの数値を比較すれば、ある程度、善し悪しの判断がつくと思いますが、このような数値を公表しているメーカーは少ないです。
各メーカーのウェブサイトに掲載されている主なパン用米粉(業務用、ミックス粉を除く)を紹介します。
九州ミズホチカラ米粉 /熊本製粉
家庭用に販売されているパン用米粉で、米粉パン作りに適した品種として開発された、熊本県産ミズホチカラを100 %使用しています。粉砕方法は明らかにされていませんが、グルテンフリーパン用に特化して設計されたとのことで、グルテンを加えなくても、ふっくらしたパンができ上ります。またGFCOという認証機関のグルテンフリー認証を取得しており、グルテン濃度が 10 ppm以下であることが保証されています。
こめの香(福盛シトギ2号) /グリコ栄養食品
新潟県産米粉のみが原料です。米粉パンだけでなく、洋菓子や料理にも使えます。米粉パンを作る際は、もち粉、水あめを加える必要があるようで、この米粉だけでは生地がうまく発酵しないようです。製粉方法は不明ですが、開発の経緯から推測すると、新潟製粉が製造しているものと思われます。
マイベイクフラワー /サラ秋田白神
秋田県産あきたこまちを超微粉砕した米粉「マイドルチェ」に、アルファ化した米粉「マイプラス」をブレンドした米粉なので、厳密にはミックス粉になります。増粘剤などの添加物をいっさい使わずに米粉パンが作れるほか、うどんや餃子の皮、ニョッキなども作ることができるそうです。
この商品は、製造方法、粒径などが明記してあります。
- 製造方法:湿式気流粉砕製法(二段階製粉法含む)
- 粒径:平均 50~60 µm(従来の米粉は約 140 µm)
- でんぷん損傷度:約3%(従来の米粉は10%以上)
- アミロース含有量:約 17 %
やのくに純真米粉 /ネティエノ
山口県田布施町で自社栽培したミズホチカラを 100 %使用し、湿式製粉で米粉を製造した米粉です。日本米粉協会によるノングルテン認証を取得しており、グルテン濃度が 1 ppm以下であることが保証されています。
お米の粉 手作りパンの薄力粉 /波里
国産米が原料の米粉で、農林水産省が公表した「米粉の用途別基準」のうち、パン用に分類されているため、でんぷん損傷度 10 % 未満、粒径 75 µm 以下の比率が 50 %以上、アミロース含量は 15 %以上 25 %未満という規準には適合しています。ただし、型に流して焼くタイプの米粉パン用で、手ごねの生地には向いていないと明記されています。パッケージにグルテンフリーと記載してありますが、認証は取得していません。
このように、パン用米粉は商品によって性質が全く異なり、パンを作る際の手順や制約がある商品もあり、小麦粉のように品質が一定ではないことがわかります。
これ以外にも、米粉パンを作りやすくするため、米粉にでん粉や増粘剤を加えたミックス粉も多数発売されています。ミックス粉では、お米の品種にかかわらず、製パン性能が高い粉に仕上げることができるようです。ミックス粉の場合、原料は国産米と書いてありますが、それが新米なのか、収穫されてから1年以上経った古米なのか、2年以上経った古古米なのか、わかりません。
まとめ
- 米粉の用途別表記では、米粉に含まれるでんぷんのアミロースの含有率に基づいて、 ① 菓子・料理用、② パン用、③ 麺用に分類しています。
- 粒径が小さく、でんぷんの損傷が少ない米粉がパン作りに適しています。このような米粉を作るためには、パン用米粉の製造に適した品種を使い、でんぷんが損傷せずに粒径が細かい粉が得られる製粉技術を使うことが必要です。
- パン用米粉の製造に適した品種として、国の研究機関で 5品種が開発されましたが、栽培されているのはミズホチカラだけで、栽培地は熊本県と山口県のみです。
- 湿式気流粉砕機という装置を使うことで、でんぷんが損傷せずに粒径が細かい米粉を製造することができます。
- ノングルテン米粉は、グルテン含有量が 1 ppm 以下であることを認証した商品ですが、10 ppmを超えるグルテンが含まれる米粉は流通していないので、ノングルテン米粉を選ぶ必要はありません。
- パン用米粉は数社から発売されていますが、商品によって性質が全く異なり、パンを作る際の手順や制約がある商品もあります。これ以外に、でんぶんや増粘剤を加えて、製パン性能を改善したミックス粉も多数発売されています。
参考文献
1) 米粉の用途別基準、農林水産省ホームページ、https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_03.html
