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統合失調症の原因や特徴、グルテンフリー食で症状が改善することがわかっている!

統合失調症は、幻覚、妄想、意欲の低下、感情表現の減少を特徴とする精神疾患で、仕事や人間関係のストレス、就職、結婚、死別などのストレスがきっかけで発症することがあります。グルテンが統合失調症に関係することは 60 年前からわかっており、グルテンフリー食で症状がよくなるという研究結果が、多数報告されています。

統合失調症になりやすい人はいるの? 症状は?

統合失調症は脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなるために起こる病気で、考えがまとまりづらくなり、気分や行動の変化が大きくなります。よく知られている症状に幻覚と妄想があります。

生涯のうちに 100 人に 1 人がかかるといわれており、珍しい病気ではありません 1)。発病には男女差はなく、人種による違いもありません。

発症の原因はよくわかっていませんが、もともと統合失調症になりやすい要因を持つ人が、仕事や人間関係のストレス、就職、結婚、離婚、死別など人生の転機で感じたストレスをきっかけとして発症する、と考えられています。

根本的な治療法はありませんが、お薬で症状を抑えつつ、悪化しないように管理していくことで、ふつうの生活に戻ることができます。

統合失調症の症状について、もう少し詳しく見ていきましょう。統合失調症の症状には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

典型的な陽性症状は幻覚妄想で、幻覚の中でも周りの人には聞こえない声が聞こえる、他人が悪口やうわさをしていると訴える幻聴がよくみられます。また妄想には、他人にいやがらせをされていると思い込む被害妄想や、ネットやSNSが自分に関する情報を流していると思い込む関係妄想などがあります。幻覚も妄想も事実とは違うのですが、それを訂正しようとしても受け入れません。

陰性症状は意欲の低下感情表現の減少です。

これ以外にも、話がまとまらず支離滅裂になる、つねに独り言を言っているといった症状が現れます。もしあなたの周囲にこのような症状の人がいたら、早めに専門医を受診させてください。症状が軽いうちに治療を始めたほうが、回復も早いといわれています 1)

 

 

統合失調症の発症の原因として小麦やグルテンは古くから指摘されていた

統合失調症の発症に、小麦やグルテンが関係しているのではないかということは、1950年頃からすでに指摘されていました 2)

第二次世界大戦中に、食糧の小麦が不足した時期がありましたが、その時期だけ、統合失調症で入院する女性の数が減少しました。これはフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、カナダ、アメリカのデータを使った研究で、小麦の年間消費量と、女性の統合失調症の最初の入院数との間に、強い相関関係があることが示されました 3)

さらにパプアニューギニアの遠隔地域、ソロモン諸島、ミクロネシアの島々など、小麦が手に入らない地域では、もともと統合失調症の有病率が低かったにもかかわらず、食事の西洋化が進むにつれて、統合失調症の有病率はヨーロッパと同じになりました 4)

その後、さまざまな研究が行われましたが、2006  年にアメリカの研究者が過去に行われた研究論文を調べた結果、統合失調症の人の食事をグルテンフリー食にすることは、統合失調症の症状を軽減させる安全かつ経済的な手段になりうると報告しています 5)

さらに 2018 年にカナダの研究者が、過去に行われた研究のうち、統計的に解析が可能な 9 件について調べたところ、6 件ではグルテンフリー食にした結果、統合失調症患者の機能の改善や症状の重症度の低下など、有益な効果があったとのことです。残りの 3 件については、効果がなかったと報告しています 6)

グルテンを抜くと統合失調症が治る?

グルテンが、統合失調症にどう関係するかについて、いくつかメカニズムが提案されています。

古くからいわれているのは、ドーハンの仮説といわれるものです。

たんぱく質は消化酵素でその構成単位であるアミノ酸に分解され、小腸で吸収されます。ところがグルテンは消化(分解)されにくく、アミノ酸が 10 個以上つながった状態のポリペプチドのまま、小腸へ到達します。通常、分子量が大きいポリペプチドは小腸で吸収されませんが、何らかの理由で小腸のバリア機能が損なわれていると、ポリペプチドが吸収され血液中に入って全身へ運ばれることになります。

グルテンや乳たんぱく質のカゼインの不完全な消化(分解)で作られるポリペプチドが、エキソルフィンです。エキソルフィンは脳のオピオイド受容体に結合し、ドパミン作動神経を活性化させ、脳内のドパミン量を増やします。ドパミン量が増えると幻覚、妄想が起き、ドパミン量が減れば、幻覚、妄想は治まります。

食事からグルテンを抜くと、体内に取り込まれるエキソルフィンの量が減るので、統合失調症の症状が治まります。

 

 

 

 

ところで、統合失調症患者でセリアック病にかかっている人の割合は、一般の人の 2 倍であるとのデータがあります 9)。セリアック病は、グルテンのたんぱく質であるグリアジンを異物と見なして、自分の小腸細胞を攻撃しバリア機能が損なわれます。そのため、統合失調症になりやすいのではないか、と考えられています。

 

また、別のメカニズムも提唱されています。

グルテンがアレルギー反応を起こすときは、もともと私たちの体内にあるトランスグルタミナーゼ(tTG)という酵素が、グルテンペプチド(グルテンの部分分解物)を変化させ、それが免疫細胞を刺激することで、炎症反応が起きることがわかっています 8)

グルテンペプチドが小腸で吸収されて、血流に乗って脳へ到達すると、脳のトランスグルタミナーゼである tTG-6 が働いてグルテンペプチドを変化させ、それが免疫細胞を刺激することで、脳内で炎症反応が起きます。その結果、脳神経細胞(ニューロン)が炎症反応にさらされることで、統合失調症が起きるのではないかと考えられています。

この場合も、食事からグルテンを抜くことで、脳で炎症反応が起きることがなくなるため、統合失調症の症状が治まるのではないかと考えられています。

 

 

グルテンフリー食による統合失調症の治療への動き

日本でも、グルテンフリー食による食事療法を、統合失調症の治療に役立てる動きが出てきました。

2019 年 9 月に兵庫医科大学がウェブサイトで発表した内容によると、統合失調症の人の一部はグルテンを異物と認識して、体内にグルテン(正確にはグルテンに含まれるたんぱく質の一種のグリアジン)に対する抗体(抗グリアジン抗体-IgG(AGA-IgG))を持っています。この抗体を持つ人は、抗精神病薬の投与量が多く、治療抵抗性を持つ割合が高いそうです 10)

わかりやすくいうと、グルテンが原因で統合失調症の症状が重くなっているグループがあり、そのような人たちにとっては、グルテンフリー食による食事療法が有効であるということを言っています。

まとめ

  • 統合失調症は幻覚、妄想、意欲の低下、感情表現の減少を特徴とする精神疾患で、仕事や人間関係のストレスや就職、結婚、死別などのストレスがきっかけで発症することがある。生涯のうちに 100 人に 1 人がかかる可能性がある。
  • 統合失調症の発症に小麦やグルテンが関わっていることは、1950 年ごろから指摘されていた。そして統合失調症の人の食事をグルテンフリー食にすることで、症状を軽減させることができることも知られている。
  • グルテンが統合失調症の症状にどう関わっているのかについては、研究が続いている。グルテンの未消化物であるエキソルフィンは脳のオピオイド受容体に結合し、ドパミン作動神経を活性化するという説や、体内にもともとあるトランスグルタミナーゼという酵素がグルテンペプチドを変化させ、脳で炎症反応が起きることが関係しているとする考え方などが提案されている。
  • 統合失調症の人の一部はグルテンを異物と認識して、体内にグルテンに対する抗体を持っている。これらの人は、抗精神病薬の投与量が多く、治療抵抗性を持つ。

 


参考文献

1) 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト

https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ

2) Casella G, Pozzi R, Cigognetti M, et al. Mood disorders and non-celiac gluten sensitivity. Minerva Gastroenterol Dietol. 2017;63(1):32-37. doi:10.23736/S1121-421X.16.02325-4

3) Dohan FC, Wheat “consumption” and hospital admissions for schizophrenia during World War II. A preliminary report, Am J Clin Nutr, 18 (1) 7-10 (1966)

4) Dohan FC, et. al., Is schizophrenia rare if grain is rare? Biol Psychiatry, 19 (3) 385-399 (1984)

5) Kalaydjian AE, et. al., The gluten connection: the association between schizophrenia and celiac disease, Acta Psychiatr Scand, 113 (2) 82-90 (2006)

6) Levinta A, et. al., Use of a Gluten-Free Diet in Schizophrenia: A Systematic Review, Adv Nutr. 9 (6) 824-832 (2018)

7) Porcelli B, et. al., Celiac and non-celiac gluten sensitivity: a review on the association with schizophrenia and mood disorders, Auto Immun Highlights, 16;5 (2) :55-61 (2014)

8) Cascella NG et. al., Increased prevalence of transglutaminase 6 antibodies in sera from schizophrenia patients,  Schizophr Bull, 39 (4) 867-871 (2013)

9) Can Ergün, Murat Urhan and Ahmet Ayer, A review on the relationship between gluten and schizophrenia: Is gluten the cause? Nutritional Neuroscience 21(7), 455-466, (2018)

10) 兵庫医科大学ニュースリリース、2019年9月11日、統合失調症患者さんの中に「グルテン」の摂取が治療の妨げになる一群が存在する可能性が明らかに

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