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アトピー性皮膚炎の症状を重くする食べものと軽くする食べもの、グルテンフリーで効果も

乳児の2~3 割、成人の 1 割が、アトピー性皮膚炎です。原因は不明で、遺伝的素因、免疫の異常、皮膚バリアの障害、環境などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。アトピー性皮膚炎の症状を重くする食べものと、軽くする食べものがあることがわかっており、グルテンフリーにすることで、効果があったという報告もあります。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、皮膚の病気として最も一般的なもののひとつで、日本では乳児の  6~32 %、幼児の 5~27 %、学童の 5~15 %に見られます 1)過去 30 年間で、発症する人の数が増えています

アトピー性皮膚炎の原因はわかっていませんが、遺伝的素因、免疫の異常、皮膚バリアの障害、環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

花粉症やぜん息のある人や、家族にそのような病気のいる人が発症しやすく、また、都市部や先進国に多いというのも特徴です。

アトピー性皮膚炎は、特定の物質に対するアレルギーではありませんが、アトピー性皮膚炎になった場合は、花粉症や喘息を発症する可能性が高くなります。なお、アトピー性皮膚炎は伝染することはありません。

乳児では、じくじくしてかさぶたを伴う赤い発疹が、顔、頭皮、手、腕、足にできますが、年長のこどもや成人の場合は、発疹が手、上腕部、肘の内側、膝の裏に 1 か所から数か所できることが多いといわれています。

ただ、小児期に発症した場合は、成人になる前に消失したり、症状が大幅に軽くなります 2)

 

 

アトピー性皮膚炎の発症につながる環境要因はコントロールできる

アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因、免疫の異常、皮膚バリアの障害、環境要因が複雑に絡み合って発症することを説明しましたが、このうち、環境要因は、私たち自身である程度コントロールすることができます。

小児アトピー性皮膚炎の発症に対する環境要因を調べた、アメリカの研究結果の概要を紹介します 3)

 

  1. オメガ 3 長鎖多価不飽和脂肪酸とプロバイオティクスの出生前の摂取は、小児アトピー性皮膚炎のリスクを低下させる可能性がある。
  2. 出生前の母親におけるストレス、抗生物質、アルコール摂取への曝露は、小児アトピー性皮膚炎のリスクを高める可能性がある。
  3. 細菌性エンドトキシン、蠕虫(ぜんちゅう)、ヘルペスウイルス、家畜、犬、低温殺菌されていない牛乳、初期のデイケアなどの汚れや病原体への幼少期の曝露は、アトピー性皮膚炎のリスクを低下させる可能性がある。
  4. 生涯を通じて発生する皮膚への環境傷害、具体的には刺激物、かゆみ止め、過酷な気候要因、大気汚染物質、タバコの煙への曝露などは、アトピー性皮膚炎を引き起こしたり悪化させたりする可能性がある。
  5. 西洋型食生活と過剰な肥満はアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性がある。
  6. プロバイオティクスとプレバイオティクスの摂取は、アトピー性皮膚炎を防ぐ可能性がある。

 

① のオメガ 3 長鎖多価不飽和脂肪酸とは、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などです。

EPA はサバ、イワシなどに、DHA はサバ、マグロ、ブリ、ウナギなどに含まれます。またプロバイオティクスとは腸内に棲む善玉菌のことで、有胞子性乳酸菌、ビフィズス菌などの生菌です。

③ に記載してある内容は、いわゆる衛生仮説といわれるものです。免疫系が未発達の幼少期に、さまざまな病原体にさらされることで、アレルギー性の炎症が起きにくくなるというものです。

この仮説はかなり有力視されており、先進国と発展途上国、都市部と農村部でのアトピー性皮膚炎の発症率の違いを説明する根拠となっています

⑥のプロバイオティクスは、有胞子性乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌です。一方、プレバイオティクスとは、これらの善玉菌を増やすためのエサのことです。具体的にはオリゴ糖やポリデキストロース、イヌリンなどの一部の食物繊維のことです。

 

 

アトピー性皮膚炎を悪化させる食べもの

6~7 歳と 13~14歳、あわせて数十万人を対象に、食事内容とアトピー性皮膚炎の発症の関係を調べた研究があります 4)

これによると、6~7 歳で、週に 3 回以上ファストフードを食べる人は、重度のアトピー性皮膚炎を発症しやすいことがわかりました。また 13~14 歳で、週に 3 回以上のファーストフード、バター、マーガリン、パスタ、パンを食べる人は、アトピー性皮膚炎を発症している人が多いこともわかっています。

ところで、アトピー性皮膚炎にかかった人は、皮膚の状態を悪化させないために、食事を変更しています。

169 人のアトピー性皮膚炎の人を対象にしたアメリカの調査では、68 % の人がジャンクフードを、50 % の人が乳製品を、49 % の人がグルテンを含む食品を摂るのを控えていることがわかりました。

そして、全粒粉でない小麦粉製品を食べるのをやめた人の 54 %、グルテンを含む食品を食べるのをやめた人の 51 %が、皮膚の状態が改善されたと回答しています 5)

一方、80 %の人が野菜、魚油、果物を積極的に摂るようにしていると回答し、野菜の量を増やした人の 48 %、魚油を摂るようにした人の 35 % が、皮膚の状態が改善されたと回答しています。

アトピー性皮膚炎とグルテンの関係

セリアック病はグルテンが原因で起きる自己免疫疾患で、100 人に 1 人の割合で患者さんがいるといわれています。

セリアック病は、グルテンがアレルゲンとなって起きる自己免疫疾患で、疱疹状皮膚炎(ほうしんじょうひふえん)という強いかゆみを伴う小胞と丘疹が、肘、膝、お尻にできる場合があります。

セリアック病の人はアトピー性皮膚炎を発症するリスクが、そうでない人に比べて 3 倍高いことがわかっています。

またアトピー性皮膚炎の人は、セリアック病の人の割合がそうでない人より 4 倍多いこともわかっています 6)。このことから、グルテンとアトピー性皮膚炎の間には、何らかの関係があるのではないかと考えられます。

セリアック病以外にグルテンが原因で起きる病気に、非セリアックグルテン過敏症(NGCS)というのがあります。こちらは 16 人に 1 人の割合で患者さんがいると考えられています。

グルテンが原因で腹痛、下痢、腹部膨満などの消化器症状や、もやもや感、抑うつ、発疹、貧血といった全身症状が起こります。

小児患者を対象とした調査で、NCGS の 54 % の人に発疹が見られ、NCGSのこどもの 62 % がアトピー性皮膚炎で、また 62 % の家族がアトピー性皮膚炎でした 7)。このことからも、グルテンとアトピー性皮膚炎の間に、何らかのつながりがあることがわかります。

これ以外に、マウスを使った実験で、グルテンを投与することで、アトピー性皮膚炎のような皮膚の炎症が悪化したとの報告があります 8)

またグルテンは、ケラチノサイト由来の TSLP を促進し、皮膚の免疫応答を増強します 9)。免疫応答が増強されると、アレルギー性の病気にかかりやすくなります。したがって、これらのことから、グルテンがアトピー性皮膚炎の直接の原因ではないにしても、何らかのかかわりがあることは間違いなさそうです

 

 

アトピー性皮膚炎の症状を抑えるには

アトピー性皮膚炎の発症は、遺伝的素因、免疫の異常、皮膚バリアの障害、食生活を含めた環境が複雑に絡み合って起こります。このうち皮膚バリアの障害と環境は、ある程度状況を変えることが可能です。

皮膚バリアの障害を回避するためには、

  • 紫外線に当たらないようにする。
  • 手洗いや消毒で過度に皮膚を傷つけないようにする。
  • こまめにスキンケアを行う

ことが大事です。

 

生活環境については、

  • 刺激物に触れない。
  • かゆみ止めを必要以上に使わない(医師の指示がある場合は使うこと)。
  • 過酷な気候要因にさらされない(極端な寒暖差など)。
  • 大気汚染物質やタバコの煙にさらされない。

ようにしてください。

 

食事に関しては、

  • ファストフード、バター、マーガリン、バスタ、パンなどの小麦製品は控える。
  • プロバイオティクス(有胞子性乳酸菌、ビフィズス菌などの生菌)を定期的に摂る。
  • プレバイオティクス(食物繊維など)を多く含む食品を摂る。
  • EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含む青魚などを摂る。

ことで、症状を和らげることができる可能性があります。また、アトピー性皮膚炎とグルテン関連疾患の間には、何らかのかかわりがあるのは確実なので、グルテンフリーの食事に切り替えることも有効と考えられます。

まとめ

  • アトピー性皮膚炎はよく見られる皮膚病で、乳幼児の 2~3 割、成人でも 1 割程度の人に見られる。原因はわかっていないが、遺伝的素因、免疫の異常、皮膚バリアの障害、環境要因が複雑に関与して発症すると考えられている。
  • 環境要因については、オメガ 3 不飽和脂肪酸、プロバイオティックス、プレバイオティクスの摂取は、発症・悪化リスクを下げ、ファストフード、バター、マーガリン、パスタ、パンの摂取は、発症・悪化のリスクを上げる。
  • アメリカでの調査で、アトピー性皮膚炎の 49 % の人が、グルテンを含む食品を摂るのを止めたところ、そのうち 51 % が皮膚の状態が改善されたという研究結果がある。
  • セリアック病や非セリアックグルテン過敏症といったグルテンが原因の病気にかかっている人には、アトピー性皮膚炎の人が多い。マウスを使った実験で、グルテンを投与することで、アトピー性皮膚炎のような皮膚の炎症が悪化するとの報告もある。このことから、グルテンはアトピー性皮膚炎の直接の原因ではないにしても、何らかのかかわりがあると考えられる。

 

参考文献

1) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018、日本皮膚科学会(2018)

2) アトピー性皮膚炎(湿疹)、MSDマニュアルプロフェッショナル版

3) Kantor R, et. al., Environmental risk factors and their role in the management of atopic dermatitis. Expert Rev Clin Immunol, 13 (1) 15-26 (2017)

4) Ellwood P, et. al., ISAAC Phase III Study Group. Do fast foods cause asthma, rhinoconjunctivitis and eczema? Global findings from the International Study of Asthma and Allergies in Childhood (ISAAC) phase three. Thorax, 68 (4) 351-360 (2013)

5) Nosrati A, et. al., Dietary modifications in atopic dermatitis: patient-reported outcomes. J Dermatolog Treat, 28 (6) 523-538 (2017)

6) Ress K, et. al., Celiac disease in children with atopic dermatitis. Pediatr Dermatol, 31 (4) 483-488 (2014)

7) Camhi SS, et. al., Pediatric Nonceliac Gluten Sensitivity: A Gluten-related Disorder Treatment Center Experience. J Pediatr Gastroenterol Nutr, 69 (2) 200-205 (2019)

8) Jin Y, et. al., A Mouse Model of Anaphylaxis and Atopic Dermatitis to Salt-Soluble Wheat Protein Extract. Int Arch Allergy Immunol, 174 (1) 7-16 (2017)

9) Kuroda Y, et. al., Long form of thymic stromal lymphopoietin of keratinocytes is induced by protein allergens. J Immunotoxicol, 14 (1) 178-187 (2017)

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!