生地に小麦粉とアーモンドプードル(アーモンドの粉)が入っていて、表面に粉砂糖がまぶしてある丸いクッキーがあります。スペイン・アンダルシア地方で作られていたお菓子、ポルボロン(Polvorón)がフランスに伝わりブールドネージュ(Boule de Neige)になり、さらにアメリカでスノーボール(Snowball)と呼ばれるようになったとか。
形は違いますが、いずれもサクサク、ホロホロの食感が特徴です。小麦粉(薄力粉)が主原料なので、どれにもグルテンは入っています。にもかかわらず、わざわざ取り上げたのには理由があります。
小麦粉を焼いてもグルテンはなくなりません
呼び名 | ポルボロン | ブールドネージュ | スノーボール |
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Polvorón | Boule de Neige | Snowball | |
呼び名の由来 | 塵(Polvo)にようにホロホロ崩れる口当たりから | 雪の玉の意味、粉砂糖をまぶした白い色と丸い形から | 雪の玉の意味、粉砂糖をまぶした白い色と丸い形から |
特徴 | 薄力粉をオーブンやフライパンで焼いてから使う。卵を使わない、アーモンドが入っている。生地を型で抜くため、球形ではない | 卵を使わない、アーモンドなどのナッツが入っている。生地を丸めて作るため球形。 | 卵を使わない、アーモンドなどのナッツが入っている。生地を丸めて作るため球形。 |
備考 | スペイン・アンダルシア地方で、1200年前から修道院で作られていた | スペインから伝わったといわれている。 薄力粉を焼く場合もある |
スペインから伝わり、アメリカの家庭菓子となっている |
ポルボロンは薄力粉をオーブンやフライパンで焼いてから使います。そのためグルテンができにくくなり、サクサク、ホロホロの食感になるそうです。
あるネットの記事に「薄力粉を焼くことでグルテンがなくなる」と書かれていました。これは事実とは異なります。
小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質に水を加えてこねることで、この2種類のたんぱく質が混じりあい、網目状の構造になります。これがグルテンです。
あらかじめ小麦粉を加熱することで、たんぱく質が変性したり、小麦粉に含まれていた水分が蒸発したりすることで、グルテンができにくくなる可能性はあります。しかし、グルテンがなくなる、ということはありません。パンもクッキーも焼いて作りますが、グルテンはなくなっていませんよね。
粘着質のグルテンが含まれないことと、グルテンフリーは意味が違います
ブールドネージュとスノーボールは、小麦粉にバター、アーモンドプードルなどを加えて生地を作ります。バターは脂肪で、アーモンドパウダーは乾燥しています。つまり生地を作る際に水を加えていません。水を加えなかったらグルテンはできないので、ブールドネージュとスノーボールは、あらかじめ小麦粉を焼いていなくても、生地の中に粘着質のグルテンができていないと思われます。だから、サクサク、ホロホロになるのです。
グルテンの量というのは、粘着質のグルテンの量ではなく、グリアジンの量を測定しています。ブールドネージュ、スノーボールはサク・ホロですが、グルテン量(分析値)は、同じ量の小麦粉を使ったクッキーと変わらないはずです。
またグルテンフリーとは、グルテンの分析値が20ppm以下であることです。粘着質のグルテンが全く含まれていなくても、グリアジンが含まれていたら、グルテンフリーにはなりません。
サク・ホロは食感だけ。体に入ったら結局同じこと
小麦アレルギーやセリアック病の人にとっては、グルテンを構成するたんぱく質がアレルゲンとなるので、粘着質であるかどうかは関係ありません。小麦粉を使ったポルボロン、ブールドネージュ、スノーボールは食べないでください。
ノンセリアックグルテン過敏症の場合は、粘着質のグルテンが小腸細胞に貼りつくことが、不調の原因の一つになっています。ですから、サク・ホロ食感のポルボロン、ブールドネージュ、スノーボールは、クッキーよりマシと思われるかもしれません。でもよく考えてください。飲み物なしでポルボロンだけを食べませんよね。また口の中で唾液と混じり、胃の中で胃液と混ざります、唾液や胃液の水分で、グルテニンとグリアジンから粘着質のグルテンができる可能性もあります。結局、体の中に入ったら同じことなんです。
米粉でもおいしいスノーボールが作れます
ポルボロン・ブールドネージュ・スノーボールとも、オリジナルレシピは小麦粉を使っていますが、小麦粉に含まれるグルテンの機能を使っているわけではありません。それなら、ほかの原料でも作れるのではないでしょうか。小麦粉の代わりに米粉を使って、おいしいスノーボールが簡単に作れます。サク・ホロ感は、米粉の方が勝っているかもしれません。