セリアック病は日本で増加傾向? 最新の医学論文から原因と理由を探る

セリアック病は、小麦などに含まれるグルテンの成分であるグリアジンからだに有害なものと認識して、食物中のグリアジンが付着した小腸の細胞を自分の免疫が攻撃することで起きます。

その結果、消化器、皮膚、全身にさまざまな症状が現れます。患者さんは人口の1%といわれていますが、増加傾向にあります。治療方法はグルテンフリー食だけです。

ここ5年間で、日本でもセリアック病に関する医学論文が出るようになりました。

セリアック病とはどんな病気?

人間は自分のからだを守るために免疫という仕組みを持っています。有害な物質が体の中に入ると、それを認識して攻撃することで、有害な物質を排除します。

小麦などに含まれるたんぱく質であるグルテンにはグリアジンという成分が含まれますが、このグリアジンを有害なものと認識し、それを攻撃することがきっかけで起きる病気が、セリアック病です。

このように自分の免疫が誤って自分のからだを傷つけてしまう病気を、自己免疫疾患といいます。

グリアジンが体の中に入ると、セリアック病の人はグリアジンを排除するためにT細胞という免疫細胞の働きが活発になります。T細胞はもともと、ウイルスや細菌に感染した細胞やがん細胞を見つけて、殺す働きをするものですが、本来は有害ではないグリアジンが存在する小腸の粘膜を破壊してしまいます。

小腸の粘膜は絨毛細胞といわれる細かいひだ状になっており、ひだの部分を全部広げるとテニスコート1面分にもなるといわれています。

小腸では、人間が生きていくために必要な栄養分の90%をこの広い面積の粘膜から吸収していますが、T細胞がこの絨毛細胞を破壊するため、セリアック病の人の小腸粘膜は、ひだがなくなってしまいます

その結果、必要な栄養分が吸収できなくなるとともに、粘膜細胞に穴が開いて、本来吸収されるはずがない物質が体内に入ってしまいます。これが原因となり、セリアック病では次に示すような症状が起きます。

消化器症状

小腸の細胞が破壊され、消化したものが吸収できなくなるため、軽度かつ間欠性の下痢や、脂肪便(便中脂肪量7~50g/日)が起こります。

皮膚症状

疱疹状皮膚炎といって、強いかゆみを伴う水疱性丘疹が肘、膝、殿部、肩、および頭皮の側面に対称性にできます。これは本来は体内に入ることがないグリアジンの成分が穴が開いた小腸から体内に入り、血液によって皮膚まで運ばれて、そこでアレルギー反応を起こすことが原因と考えられています。

全身症状

必要な栄養分、特にビタミンやミネラルが吸収できないために、倦怠感、筋力低下、食欲不振、体重減少、貧血、舌炎、口角炎、アフタ性潰瘍、ビタミンD欠乏症、カルシウム欠乏症、妊孕性の低下、月経の停止が起こります。

グルテンが原因なのだから、消化器症状がまず現れるはずと考えがちですが、最近の研究で、消化器症状が見られないセリアック病がかなりの割合で存在することがわかっています。

セリアック病は突然発症する?

セリアック病は、人生のいつでも発症する可能性があります。

セリアック病の発症には、遺伝的な要因、グルテンによる暴露、環境要因の3つが必要といわれています1)。グルテンを含んだ食事を食べ始めた時期と、将来のセリアック病の発症との関係は、よくわかっていません。

セリアック病は胃腸の感染症、投薬、α-インターフェロン、手術がきっかけとなって発症することがあります。一方、セリアック病の女性の15〜20%は、出産後の産褥期に重篤な症状が発生する可能性があるといわれています。

セリアック病の人の割合

セリアック病の存在が知られるようになってから、まだ50年ほどしか経っていません。

セリアック病の診断基準も2013年にできましたが2)、これに当てはまらないセリアック病があることもわかってきました。セリアック病の人がどれくらいいるのか、正確な数字はわかっていません。
これまでの研究結果をまとめた最新の論文によると、

  • 血液検査の結果に基づくと1.4%、十二指腸の細胞を採取した検査(生検)の結果に基づくと0.7%。
  • 地域別では、ヨーロッパとオセアニア0.8%、アジアで0.6%、アフリカと北アメリカで0.5%、南アメリカで0.4%。
  • 性別では、女性0.6%、男性0.4%。
  • 年齢別では、こども0.9%、成人0.5%

といわれます3)
だいたい100人に1人くらいと考えて間違いないでしょう。

日本では、セリアック病は少ないといわれてきました、その根拠としては、つぎの2つがあげられています4)

  • セリアック病の人が持つといわれる白血球の血液型HLAを持つ人が少ないこと
  • グリアジンを含む食品の摂取量が比較的少ないこと

白血球の血液型HLAについて少し説明しておきましょう。

血液型にはA、B、O、ABの4つがありますが、これは赤血球の血液型です。白血球にも血液型があり、HLA-DQ2またはHLA-DQ8の少なくとも一つの型を持つ人が、セリアック病になりやすいといわれています。

日本人はこの血液型を持つ人が欧米より少ないことから、セリアック病は少ないといわれていました。

しかしこれについては、2021年に驚くような論文が出ています5)

日本でセリアック病として診断された人のHLA検査を行ったところ、HLA-DQ2、HLA-DQ8のいずれの型も持っていなかったことがわかりました。

この論文では日本のセリアック病は、米国やヨーロッパのセリアック病とは異なる遺伝的および免疫学的特徴を持っている可能性があると指摘しています。

日本でセリアック病の人がどれくらいいるか調査した例が一つだけあります6)

その論文によると、2008~2013年に島根県の4つの地域で健康診断を受けた2055人の成人から集めた血清サンプルを使って、セリアック病の抗体検査を行った結果、0.19%がセリアック病の可能性があるという結果が出たといっています。

ただこの調査にはかなり問題があります。

まず対象者の対象者の年齢の中央値が67.0歳であること、対象者の居住値が出雲市、雲南市、大南町、隠岐の島町という、都市化が進んでいない(=和食中心の食生活である可能性が高い)地域であること、そして7年以上も前の血液サンプルを使っていることです。

これを以て、日本のセリアック病患者は少ないという結論を導き出すことはかなり無理があります。

結局、日本にセリアック病の人がどれくらいいるのかについて、信頼できる情報は存在しません。

セリアック病は子どもも含め増加している

セリアック病が明らかになってから50年ですが、この間に患者数は確実に増加しています7)

またセリアック病のおとなが人口の0.5%であるのに対し、こどもが人口の0.9%もいるということは、今後セリアック病の人が増えるということです。

セリアック病は一度発症すると、治ることはありません。セリアック病のこどもは、数十年後にはおとなになります。

日本ではセリアック病は極めてまれな病気といわれていましたが、米国国立医学図書館(National Library of Medicine)が運営する医学・薬学系文献のデータベースであるPubMedで

“celiac disease” & “japan” というキーワードで検索してヒットした論文の抄録を読んだところ、日本でもセリアック病に関する研究論文が20件ほどありました。出版された年を見ると、2021年が5件、2020年は2件、2019年は3件と、この5年間に集中しています。

日本でもセリアック病と診断される人が増えてきているようです

セリアック病の増加と、小麦の摂取量に関係があることは間違いありません。

世界的に見ると、アジアとアフリカのサハラ以南は小麦の摂取量が少ないのですが、この地域ではセリアック病の患者が他の地域に比べて少ないのは事実です。ただ今後、西欧式の食生活が広がるにつれて、セリアック病の人が増えることになる可能性はあるといわれています。

日本はセリアック病の人はいないから、グルテンフリーなどは無意味といっている人もいますが、果たしてそうなのでしょうか。

セリアック病の診断基準と検査方法

簡単にいうと、血液中にセリアック病特有の抗体が存在するかどうかを調べるとともに、十二指腸の細胞を取り出して、細胞壁の絨毛が損傷していないか調べます。

少し細かくなりますが、アメリカ消化器病学会が公表しているセリアック病の診断基準と検査方法は次のとおりです2)

セリアック病である可能性が5%を超える場合

十二指腸生検と血液検査(抗組織トランスグルタミナーゼ抗体検査(tTG-IgA検査))を行い、

  • ともに陽性 → セリアック病
  • ともに陰性 → セリアック病ではない
  • いずれかが陽性 → 遺伝子検査や③、④の検査を行い判断

セリアック病である可能性が5%以下の場合

十二指腸生検は行わず、血液検査のみ行います。

まず、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体検査(tTG-IgA検査)と総IgA量を調べます。

  • tTG-IgA検査が陽性 → 十二指腸生検を行います。あとは、上記と同じ。
  • tTG-IgA検査が陰性で、総IgAが少ない → 追加で血液検査(③、④)を行い判断します。
  • tTG-IgA検査が陰性で、総IgAが少ない → セリアック病ではない

具体的な検査内容は次の通りです。

①抗組織トランスグルタミナーゼ抗体検査(tTG-IgA検査)

セリアック病になると、抗組織トランスグルテミナーゼというたんぱく質に対するIgA抗体が血液中に産生されるので、血液中の抗体量を調べます。感度も特異性も95%と高い一方で、コストが安く、まず最初に行われる検査です。

②十二指腸生検

小型のカメラを備えた長いチューブを口から小腸の上部まで入れて観察するとともに、十二指腸下降脚のから小さな組織サンプルを採取し(これを生検といいます)、細胞壁の絨毛が損傷していないか調べます。

③抗組織トランスグルタミナーゼ抗体検査(tTG-IgG検査)

抗組織トランスグルテミナーゼというたんぱく質に対するIgG抗体の量を調べます。人によってはIgA抗体の量が少ない場合があるので、試験の開始時に総IgA量を測定して、IgA量が十分でない場合は、このテストも組み込まれます。

④脱アミド化グリアジンペプチド抗体検査(DGP-IgG)抗体

脱アミド化グリアジンペプチドというたんぱく質に対するIgG抗体の量を調べます。③と同様、人によってはIgA抗体の量が少ない場合があるので、試験の開始時に総IgA量を測定して、IgA量が十分でない場合は、このテストも組み込まれます。

⑤遺伝子検査

血液中の白血球の型を調べます、赤血球に、A型、B型、AB型、O型といった血液型があるのと同様、白血球にも血液型があります。白血球抗原(HLA)にDQ2もしくはDQ8という型があるかどうか調べます。セリアック病の人の99%は、いずれかの型を持つことがわかっています。

なお、筋内膜抗体検査(EMA-IgG検査)は、特異度は最も高いが(~99%)、血清tTG IgAよりも費用が高く、測定に時間を要し、偽陰性になる可能性があるため、行われなくなりました。

セリアック病の治療方法

セリアック病の唯一の治療方法は、生涯にわたってグルテンを含まない食事を摂ることです8)

ただ実際のところ、グルテンフリー食は完全にグルテンを含んでいないわけではありません。どれくらいのグルテンなら許容されるのかについては、わかっていません

1日わずか50 mg の摂取でも、症状が再発する可能性があるといわれています。セリアック病であるにも関わらず、グルテンフリー食を摂らなかった場合、グルテンフリー食にしたグループと比べて、死亡率が4~5倍高いという報告もあります。

またセリアック病と診断された前後において、グルテン摂取量が多い人ほど、セリアック病による死亡率が増加することがわかっています。

まとめ

  • セリアック病は、小麦などに含まれるグルテンの成分であるグリアジンをからだに有害なものと認識して、グリアジンがある小腸の細胞を自分の免疫が攻撃することで起こる。
  • その結果、小腸の絨毛細胞が破壊され、必要な栄養分が吸収できなくなるとともに、本来吸収されるはずがない物質が体内に入ってしまうことで、消化器症状、皮膚症状、全身症状が現れる。
  • セリアック病は、なんらかのきっかけで、人生のいつでも発症する可能性がある。
  • セリアック病の人は人口の1%程度と考えられている。日本のセリアック病患者の数はわかっていない。ただセリアック病の患者数は確実に増加している
  • セリアック病かどうかは、血液中にセリアック病特有の抗体が存在するかどうかを調べるとともに、十二指腸の細胞を取り出して、細胞壁の絨毛が損傷していないか調べる。
  • セリアック病の唯一の治療方法は、生涯にわたってグルテンを含まない食事を摂ることである。

参考文献
1) Al-Toma A, et. al., European Society for the Study of Coeliac Disease (ESsCD) guideline for coeliac disease and other gluten-related disorders. United European Gastroenterol J, 7 (5) 583-613 (2019)
2) Rubio-Tapia A, et. al., American College of Gastroenterology. ACG clinical guidelines: diagnosis and management of celiac disease. Am J Gastroenterol, 108 (5) 656-676 (2013)
3) Singh P, et. al., Global Prevalence of Celiac Disease: Systematic Review and Meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol, 16 (6) 823-836 (2018)
4) Hokari R, et. al., Extremely low prevalence of Celiac disease in Japan: Eternal silence or just the calm before the storm? JGH Open, 4 (4) 554-555 (2020)
5) Hayashida S, et. al., Celiac disease: a case report detailing clinical and pathological improvement with a gluten-free diet, Nihon Shokakibyo Gakkai Zasshi, 118 (7) 661-670 (2021)
6) Fukunaga M, et. al., Serological screening for celiac disease in adults in Japan: Shimane CoHRE study. JGH Open, 4 (4) 558-560 (2020)
7) Caio G, et. al., Celiac disease: a comprehensive current review. BMC Med, 17 (1) 142 (2019)
8) Rubin JE, et. al., Celiac Disease. Ann Intern Med, 172(1):ITC1-ITC16 (2020)

グルテンフリー食品まとめ

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