このサイトではグルテンフリーのお料理を提供する飲食店や、グルテンフリー食品が買えるお店を紹介しています。紹介するにあたっては、できるだけ訪問するようにしていますが、ときどき残念な体験をすることがあります。欧米に比べてグルテンフリーが一般的でない日本では、間違った説明も多く、利用者に不安感や不信感を与えてしまっています。
グルテンフリーのお料理を提供する飲食店を応援したい
わたしたちは、ウェブサイトやSNSで、グルテンフリーのお料理が食べられるお店を紹介しています。それはグルテンフリーの飲食店を探している方に、正確な情報を伝えるという目的もありますが、もう一つ、グルテンフリーのお料理を提供して下さっているお店を応援したいからです。
日本では、グルテンフリーのお料理を出している飲食店はまだまだ少ないうえに、コロナ禍が始まってから、わたしたちが把握しているだけで、数十軒が閉店してしまいました。飲食業界を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。
セリアック病の人が人口の 6 %程度いるといわれる欧米では、グルテンフリーの飲食店には一定のニーズがあります。セリアック病は、グルテンを摂らないようにする以外、治療法がないからです。一方、グルテン関連疾患が一般的でない日本では、治療の一環でグルテンフリーや小麦フリーのお食事を摂るよう指示されている人の数は、そう多くはありません。それよりも、体調管理の一環や、健康目的、ダイエット目的でグルテンフリーの食生活を選択しているという方が多いと思われます。
グルテンフリーメニューは、一般のメニューより割高になりがちです。それは材料代や手間代を考えると、仕方がないことです。安全上の理由から、グルテンフリー・小麦フリーの食事を摂らなければならないセリアック病や小麦アレルギーの人は別にして、それ以外の方にグルテンフリーメニューを選んでもらうには、高い代価を支払うに足る動機付けと納得のいく説明、そして何より、食べた後の満足感が必要です。
グルテンフリーの動機付けと説明については、それぞれのお店で独自に対応をされていますが、間違った説明をよく見かけます。せっかく詳しい説明をしても、内容が間違っていたら、それを見たお客さんは、「このお店、グルテンフリーのこと、わかっていないのでは? 本当に大丈夫かしら?」と思って、お店に行くのをためらってしまいます。グルテン成分が混入する不安を感じたら、わざわざ行こうとは思わないでしょう。満足感については、お料理の味もさることながら、信頼性や安全性といった点が大きなウエイトを占めるのが、グルテンフリーメニューの特徴です。
わたしたちがウェブやSNSでお店を紹介するときは、ネガティブなことは一切書かないようにしています。それはお店を応援するのが目的で、お店を評価することが目的ではないからです。ですが、実際に数多くのお店を訪問して、お料理をいただいてみると、いろいろと残念に思うことがあります。
この記事では、わたしたちがグルテンフリーの飲食店で見かけた、改善したほうがよい事例をご紹介します。飲食店の経営者の方にはぜひ参考にしていただき、お店がいつまでも繁盛し、わたしたちにグルテンフリーのお料理を提供し続けて下さることを、心から願っています。
残念! 店員が質問に答えられなかったり、間違った説明をするお店
グルテンフリー飲食店を利用する人は、お食事の材料や成分に対して、人一倍、気を使っている人たちです。ですから、このお料理には何が入っているんだろう、これは自分(あるいはお子さん)が食べても大丈夫なんだろうか、と常に気にかけています。
あるグルテンフリーレストラン(すべてのメニューがグルテンフリー)での話ですが、コースの最初に「○○ドリンク」という、ショットグラスに入った飲み物が出てきました。聞いたことがない名前だったので、店員さんに「これは何が入っているんですか。」と聞くと、その店員さん「え~、あの~、その~、何ていうか~。うん~。」と言って、答えようとしません。厨房へ行って聞いてきたら済む話なのに、面倒くさいのか、立ったまま。わたしがあきらめるのを待っているようなので、「もういいです。」と言うと、バツが悪そうに去っていきました。
グルテンフリーレストランと名乗るのであれば、それぞれのお料理に何が使われているのか、説明できるよう、ホールの担当者にメモでも渡しておいた方がよいと思います。とても人あたりのよい店員さんで、お料理も美味しかっただけに、残念でした。
また別の有名なレストラン(グルテンフリー以外のメニューもある)で、グルテンフリーと書かれたメニューを注文しました。その中に生野菜のサラダがあり、シリアルがトッピングされていました。一見して大麦が入っているとわかったので、食事を運んでくれた店員さん「このサラダ、大麦が入っています。グルテンフリーじゃないと思いますが。」と言いました。その方は、厨房に聞きに行ってくれましたが、「大丈夫です。グルテンフリーですよ。」と言われました。「でも、これ大麦ですよね。」というと、もう一度聞きに行ってくれましたが、やはり「グルテンフリーって言っています。」と言われたので、それ以上、言うのはやめました。
わたしは少量のグルテンは許容しているので、サラダはそのままいただきましたが、有名店でもこんなことがあるんだと、驚きました。プロの料理人の方の中にも、「小麦を使わないこと=グルテンフリー」と勘違いしている人がいるようです。小麦に加え、大麦とライ麦もグルテン含有穀物です。
残念! 説明するタイミングを間違っているお店
グルテンフリーメニューと、そうでないメニューがあるレストランで、グルテンフリーのメニューを注文しました。注文を取りに来た店員さんが、わかっているのか、わかっていないのか、よくわからない態度で(もちろん、復唱はなし)、心配だったので、お料理が届いたとき、「これはグルテンフリーですよね。」と尋ねました。すると、こちらの質問に答えずに、「えっ、アレルギーですか。」といわれました。
失礼にも程があると思いましたが、もう一度「グルテンフリーで間違いないんですよね。」というと、「そうですけど、アレルギーなんですか。」とまた聞いてきました。「アレルギーだったら、食べられないんですか。」というと、「コンタミが・・・」と、小さな声でもにょもにょ言っていたので、「アレルギーじゃないですけど。」というと、料理を置いて去っていきました。
小麦や大麦を含まない材料を使っていたとしても、調理の段階で小麦成分が混入する場合があります。重篤な小麦アレルギーの場合は、それが原因でアナフィラキシーショックを起こすこともあります。このお店では、たぶんその可能性があったんでしょう。でもそれはオーダーを取る際に確認すべきことで、料理を持って来てからコンタミの可能性があることを言いだすのは、明らかにおかしいです。
グルテンフリーと表示していても、アレルギーには対応していない、というお店はよくあります。厳密にいえば、この対応は好ましくありません。グルテンフリーの意味は、グルテンの含有量が食品 1 kg あたり 20 mg 以下、ということです(国によって差はあります)。一方、食品表示法でアレルゲン表示「小麦」が必要となる基準は、食品 1 kg あたり数 mg 以上です。この差をわずかなので、一般的には、グルテンフリーと表示してあるものは、小麦アレルギーの人が食べても問題ないはずです。
ところが、メニューに「グルテンフリー」と表示していても、「うちはアレルギーには対応していない。」というお店が多いようです。コンタミの可能性があることを言っているのだと思います。コンタミの量によりますが、例えば、同じ鍋で小麦粉の麺とグルテンフリー麺を茹でている場合は、グルテンフリー麺はグルテンフリーではなくなっている可能性があります。
残念! ウェブサイトやSNSで堂々と間違った説明をしているお店
多くの方がそうだと思いますが、初めて行くお店の場合、お店のウェブサイトや SNS、グルメサイトなどで、お店の情報を見てから行くことが多いと思います。特に、食事の原材料に気を使うグルテンフリーの場合はなおさらです。そのとき、あからさまに間違った説明がされていると、「このお店、大丈夫なんだろうか?」と思い、行くのをためらってしまいます。
お店のウェブサイトなどで、グルテンフリーとは何で、どういうメリットがあるのか、またグルテンにはどのような害があるのか、などについて、丁寧に説明されていることがよくありますが、どこかのネット記事を参考にしているのでは、と思うことがよくあります。その理由は、同じような間違いを多く見かけるからです。
例えば、スペルト小麦はグルテンフリーとか、グルテンレスとかいう説明。これは事実とは異なります。またグルテンフリーにダイエット効果があるという説明もよく見かけますが、これも根拠がありません。グルテンフリーのメリットとしてダイエット効果が最初に書いてあるお店は、グルテンがアレルギーや、消化器症状を起こすことなど、わかってないのかも、と思われてしまいます。
グルテンフリーの飲食店を利用している人は、ふだんから自分で情報を集めています。そんな人に対して、間違った情報を見せると、逆効果にしかなりません。お店の側としては、たまたま引用した情報が間違っていただけで、間違った情報を意図的に流すつもりもなければ、内容が間違っていることすら気づいていないと思います。グルテンフリーの飲食店を応援したいと思っているわたしたちとすれば、本当に歯がゆいところです。
値段が高くてもグルテンフリーのお料理を選ぼうとする方は、何らかのプラスの効果を期待していることがほとんどです。お店の側が主張する「プラスの効果」が間違っていると、一歩間違えば、ありもしない効果をうたって消費者をだました、ということになりかねません。特に病気や健康に関する情報を掲載する場合は、慎重に行うべきです。
ちなみにこのウェブサイトでは、可能な限り出典元を記載し、しかも医学論文から引用するようにしています。
残念! 掃除が行き届いていないお店
これは飲食店としてはアウトなのですが、実際に何度も見かけています。
先日あるカフェでランチを食べようと、開店直後に伺いました。料理が出てくるまでの間にトイレを使わせていただいたのですが、トイレのくずかごに、使用済みのペーパータオルが山盛りになっていました。くずかごの中身を捨てるだけなら、1 分もかからないはずです。開店前に点検も掃除をしていないのは明らかでした。残念ですが、このお店の衛生意識は、この程度なんだと思いました。
あとでネットの口コミサイトを見ると、テーブルが汚れていたという書き込みもありました。いったんこのような書き込みをされると、長い間、ネット上に残ってしまいます。これ以外にも、開店直後に伺った飲食店のテーブルの隅に、埃が溜まっていたり、テーブルの下に、前のお客さんが使った紙ナフキンの屑が落ちていたこともありました。
グルテンフリーのお料理をわざわざ食べに来るお客さんは、食べものにアレルギーがあったり、体調面に不安があったりする方も多く、衛生面には人一倍、気を使っておられます。行列して入った街中華でテーブルがベタベタだったとしても、「まあ仕方がない」と思ってもらえるかもしれませんが、グルテンフリーの飲食店で店内が汚れていると、グルテンフリーという看板すら、疑いの目で見られてしまいます。
グルテンフリーの飲食店へ来るお客さんは、グルテンフリー、小麦フリーという食環境を得るために、わざわざ高いお金を払っています。グルテンフリー、小麦フリーの敵の一つは、コンタミ(汚染)ですが、風に舞った小麦粉がお料理に混入する以前に、ゴミや埃が目につくようでは、洒落になりません。
残念! メニューにアレルゲン表示があったら助かるのに・・・
容器包装された加工食品に、食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかな食品が原材料として含まれる場合、その食品名を表示をすることが、食品表示法で定められています。これは日本独自のルールで、
- 特定原材料7品目(小麦、乳、卵、そば、落花生、えび、かに)は表示しなければならない。
- 特定原材料に準ずる21品目(アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)は表示が推奨される。
と決められています。グルテン含有穀物である大麦やライ麦は対象に含まれていません。
最初に断ったように、表示が求められるのは「容器包装された加工食品」だけで、対面販売されるお惣菜や、飲食店で提供されるお料理などは対象外です。その理由は「お店で聞けばわかる」からです。でも実際問題として、メニューにどんな成分が含まれているか、飲食店でいちいち聞くことができるでしょうか。
グルテンフリーという表示は、小麦、大麦、ライ麦とその成分を含む食品が含まれていないという意味なので(厳密は定義は下の記事をお読みください)、「小麦アレルギーの方でも安心して食べられます」という意味にもなります。ただ食物アレルギーの人は、複数の食品に対してアレルギー反応を起こすことも多いので、もし可能なら、グルテンフリー表示に加えて、特定原材料等28品目の中で使用されているものを表示するのが、親切です。
そうすることによって、卵や乳製品など、ほかの成分に対してアレルギーがある方も安心してお食事ができますし、何より、原材料やアレルギー物質について、きちんと対応しているお店だと、判断されます。
食品のパッケージやレストランのメニューで見かける Gluten free という表示。欧米では、食品に含まれるグルテン濃度が 20 ppm 未満という意味です。製造販売事業者による自主表示ですが、一部の国では法律で規定されており、事実と異な[…]
ここから先は、グルテンフリーとは直接関係ないのですが、アレルゲンの表示をする際に、あわせて検討して欲しいのが、Vegan の表示です。Vegan(ビーガン:絶対菜食主義)とは、動物性食品を一切口にしない食習慣のことで、Vegan の人でも食べて大丈夫というのが、この表示です。
世界の人口の半分以上の 40 億人が、植物性食品を中心に摂る食生活を送っているベジタリアンということをご存じでしょうか。ベジタリアンの中には、肉は食べないが卵や乳製品は許容する、肉は食べないが魚は食べるなど、さまざまなタイプがあります。これらのすべてのタイプに対応する表記をすることは不可能なので、動物性食品は一切含まれていないという Vegan の表示がよく使われます。
また世界の人口の 1/4 を占めるイスラム教徒は、イスラム法で食べてよいもの、食べてはいけないものが細かく決められており、イスラム教徒が食べてよいものをハラール(Halal)と呼びます。ハラール表記するためには、手続きが面倒なので現実的ではありませんが、Vegan 表記のものはほとんどがハラールに該当するため、Vegan表記があれば、イスラム教徒の方にも親切です。
わたしたちは改善のお手伝いができます
グルテンフリーの飲食店を利用させてもらう立場から、いろいろ勝手な感想を書かせていただきましたが、これらを実際やるとなると、大変です。グルテンフリーに関する専門的な知識やノウハウを持つわたしたちが、お手伝いさせていただきます。こちらのウェブサイトを見ていただければわかるように、グルテンフリーに関する医学的・栄養学的な情報の量と質については、絶対的な自信を持っています。
この 10 年でグルテンがからだに及ぼす影響についての常識は、大きく変化してきましたが、日本ではグルテンフリーについて 10 年以上前にアメリカの専門医が書いた本の内容が、いまだに「常識」となっています。この本には最新の研究成果とは異なる内容もかなり含まれています。この本に書いてあることを引用したり、ネットの記事を引用したりすると、堂々と間違いを公表することになりかねません。
ここに書いた内容をすべて実行する必要はありません。どのようなメニューを提供するのか、どのようなお客さんをターゲットにするのか、材料調達・調理のプロセス管理をどこまで厳密に行うのかなど、グルテンフリーへの想いやスタンスはお店によって違うと思います。それぞれのお店の実態に合わせて、無理のない範囲で改善されたらよいと思います。一番重要なのは、お客さんに正しい情報をわかりやすく伝え、お客さんから信頼されることです。
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