薬剤師が解説するどこよりも詳しいグルテンフリーガイド

あなたのグルテンフリー、頑張っているつもりでも、科学的に意味がないことやってませんか

グルテンフリーをふだんの食生活に取り入れる人が増えています。お体の不調を何とかしたくて始めた方、ダイエットのために始めた方、健康によさそうと思って始めた方。目的によって正しいやり方があることをご存じでしょうか。あなたのグルテンフリー習慣、自分では頑張っているつもりでも、科学的に意味がないことをやっているかもしれません。

グルテンフリーとグルテンフリー食品

グルテンフリーとは、グルテンを摂らないようにすることです。グルテンは小麦、大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質なので、この 3 つの穀物が含まれていない食品は、グルテンフリーです。

日本でも「グルテンフリー」と表示された加工食品や、飲食店のメニューが増えてきました。驚かれるかもしれませんが、日本にはグルテンフリーに関する表示ルールはありません。ですから、仮にグルテンが含まれていたとしても、表示している側が、「うちはこの条件のものをグルテンフリーと言っているんだ」と主張すれば、それで済む場合があります。

一方、アメリカやEUでは、Gluten-freeと表示するためのルールが存在し、ルールに違反した場合は、行政処分が課されます。

 

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もう一つ、グルテンフリーというのは、グルテンの量がゼロという意味ではありません。アメリカの場合は、食品 1 kg に含まれるグルテンの量が 20 mg 未満のとき、Gluten-free と表示することができます。この数値は、後ほど説明するセリアック病の患者さんが摂取しても、健康上問題がない量として決められました。つまり、「セリアック病の人が食べても大丈夫」な食品が、グルテンフリー食品なのです。

ですから、セリアック病でない人が、グルテンフリーのルールに厳格に従うことは、あまり意味がありません。にもかかわらず、グルテンフリーの食生活を送っている人、特にまじめでストイックな人ほど、このグルテンフリーのルールを厳格に守っているようです。

そんな人たちに、もっと楽にグルテンフリー生活をしてもらいたくて、この記事を書いています。

アレルギー反応を起こさないようにするためのグルテンフリー

体質によっては、グルテンがからだにさまざまな悪影響を及ぼす場合があります。その中で、グルテンと症状との因果関係が解明され、対応策がはっきりわかっているのが、アレルギー反応です。グルテンが関係するアレルギー反応とは、具体的に小麦アレルギーとセリアック病です。小麦アレルギーは、小麦に含まれるたんぱく質の一部がアレルゲンとなって起きる、即時型アレルギーで、アレルゲンが体内に入ってから数分から数時間で、アレルギー反応が起きます。

 

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セリアック病は、小麦、大麦、ライ麦に含まれるグルテンがアレルゲンとなって起きる、遅延型アレルギーで、食物に含まれるグルテンが小腸上皮細胞でアレルギー反応を起こし、最終的にこれを破壊してしまうことで、腹痛、下痢や栄養吸収障害に伴う全身症状が起きます。こちらはアレルゲンであるグルテンが体内に入ってから症状が現れるまで、数日から数週間かかります。

 

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ご自分が小麦アレルギーやセリアック病という方は、お医者さんから診断を受けているはずです。症状は人によって違うので、お医者さんの指示どおりの食生活を送ってください。一般的には下の表に示す対応が取られることが多いです。

もし、ご自身で小麦アレルギーあるいはセリアック病だと判断されて、グルテンフリー生活をされている方がおられましたら、お医者さんを受診されることを強くお勧めします。食事からグルテンを抜くことで症状がよくなっていたとしても、別の病気の可能性もあります。その場合は、何らかの治療が必要になるかもしれません。さらに小麦アレルギーやセリアック病でなかったとしたら、厳密なグルテンフリーは必要なくなるかもしれません。

 

 

小麦アレルギー セリアック病
食べてはいけないもの ・小麦が含まれるもの。
・加工食品等の場合、特定原材料として小麦が含まれるもの(ただし、醤油、酢はほとんどの場合摂っても差し支えない)
・小麦、大麦、ライ麦が含まれるもの
食べてよいもの ・上記以外 ・グルテンフリーの表示があるもの
・小麦、大麦、ライ麦が本質的に含まれていないもの

 

お腹の調子を改善するためのグルテンフリー

腹痛、下痢、腹部膨満感など、お腹の調子が悪いので、グルテンフリーを試してみたら、不調が改善されたので、グルテンフリーの食生活を続けている、という方は多いと思います。

お腹の不調にもいろいろなものがありますし、その原因も一つではありません。大腸に腫瘍や炎症などの器質的病変がないにもかかわらず、腹痛、下痢、腹部膨満感、便秘などが1か月以上続く場合、過敏性腸症候群(IBS)と診断されることがあります。過敏性腸症候群はよく見られる病気で、日本人の 10 人 に 1 人 が IBS です。

 

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IBS は原因がよくわかっていませんが、消化・吸収が悪いものを食べると、症状が悪化することがあります。オーストラリアの大学が、IBS の症状を悪化させる食べものを FODMAP (フォドマップ)と命名しましたが、小麦も FODMAP の一つなのです。グルテンフリーにしたところ、お腹の不調がなくなったというのは、FODMAP の摂取量が減ったことが理由かもしれません。

小麦やグルテンは、なぜお腹の不調の原因になるのでしょうか。それは体質によって、グルテンを分解する能力が低い場合があるからです。もともとグルテンというたんぱく質は、分解されにくい構造をしています。

たんぱく質は消化酵素でアミノ酸に分解され、腸管壁から吸収されますが、分解されなかったグルテンは小腸で吸収されず、腸内細菌によって分解され、ガスに変わります。ガスへの分解は一気に進むため、急にお腹が張って苦しくなります。人によっては、腸内細菌の働きが悪く、グルテンを分解できないこともあります。その場合は分解されなかったグルテンが大腸の腸管壁を刺激して下痢を起こしたり、いつまでも大腸内に留まって、便秘の原因になったりします。

ただ、このような不調を起こすためには、まとまった量のグルテンが必要です。アレルギー反応は、微量のグルテンで起こりますが、微量のグルテンで腹部膨満や下痢が起きることはありません。つまり、お腹の調子を改善するために行うグルテンフリーでは、微量のグルテンまで除去する必要はないのです。

どこまでグルテンを除去すればよいかは、人によって違うので、一概には言えませんが、調味料に含まれる程度のグルテンは、そのまま摂取しても問題ありません。

全身症状を改善するためのグルテンフリー

グルテンが関係していると思われる症状としては、慢性疲労、もやもや感、抑うつ、しびれなどがあります。しかし、これらの症状は複数の要因が複雑に絡み合って発生していることが多いため、原因を特定することは極めて困難です。

全身症状の中には、セリアック病の症状も含まれるので、次のような対応をお勧めします。
まず 3 週間、厳密なグルテンフリーの食生活、すなわち、小麦、大麦、ライ麦が使われているものは、一切食べない、という生活を送ってください。もし、グルテンが原因でからだに不調が起きているなら、何らかの変化が見られるのではないかと思います。

次の段階は、グルテンの量を段階的に増やして、体調に変化があるかも注意深く観察してください。まずは、ふつうのお醤油(ごく微量のグルテンが残存している可能性がある)だけを解禁する生活を、2 週間ほど続けてください。ほとんどの場合、何の変化も起きないと思いますが、まれに、元の状態に戻る場合があります。この場合は、セリアック病の疑いがありますので、セリアック病の診断ができる病院(日本では信州大学病院)を受診することを強くお勧めします。

ほとんどの人は体調に変化はないと思うので、この後、解禁する食品の量と種類を、少しずつ増やしてみてください。必ず 2 週間以上の単位で行い、詳細な記録を残すとともに、体調に変化が見られたら、即座に中止し、ひとつ前の段階に戻す、という作業を地道に続けてください。

先ほども述べたように、全身症状は複数の要因が複雑に絡み合って発生しているため、グルテンを抜いたからといって、症状がよくなるとは限りません。ただ、要因の一つがなくなることで、症状が軽くなることもあります。またグルテンフリーにすることで、いままで多量に摂取していた食品添加物の摂取量が減り、それが理由で症状がよくなることもあります。

この作業は、グルテンフリーについて正しい医学的知識を持った管理栄養士、薬剤師などの管理の下で行うと、より効率的かもしれません。

そして、最終的にたどり着いた状態が、あなたにとって最適なグルテンフリー生活になります。セリアック病の患者さん向けのグルテンフリーより、はるかに楽に、グルテンフリーができると思います。

健康やダイエットのためのグルテンフリー

グルテンはなんとなくからだによくないイメージがあるので、グルテンフリーをしているという方も多いと思います。西洋型の食生活を送っていると、1日に5~15 gのグルテンを摂取しています。主な摂取源は、パン、めん類、お菓子類なので、これをごはん、米粉麺、小麦粉を使わないお菓子類に置き換えるだけで、1 日の摂取量を 1 g以下にすることが可能です。グルテンの害については、別の記事に詳しくまとめているので、こちらを見ていたたきたいのですが、現時点で思い当たる症状がない場合は、上記のようなグルテンフリーでも、十分でしょう。

 

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グルテン以外にも、からだによくない成分はたくさんあります。グルテンを厳密に抜くよりも、これらの成分を摂らないようにする方が、健康になれると思います。

一方、ダイエット(体重や体脂肪を減らすこと)を目的としてグルテンフリーについては、筆者は賛成できません。なぜならグルテンフリーとダイエットは、直接関係ないからです。グルテンフリーの食生活を続けると、ほとんどの場合、体重が減ります。それは、炭水化物・糖質の摂取量が減ることや、食生活に気を使うようになり、カロリーの摂取量が減ることが理由です。

欧米では、グルテンフリーの食生活にすると、必要な栄養素が不足して体重が減るという研究例が複数あり、それを引用している人もいるようですが、これは全く的外れです。なぜならこれらの研究は、欧米でよく出回っているグルテンフリー代替食品を摂った場合の話で、そもそも日本ではそのような食品は入手困難です。日本でグルテンフリーの食生活は、ごはんとおかずを組合せた和食が中心となるので、栄養素が不足する心配はありません。

ですから、ダイエットのために、高いグルテンフリー食品を買うのは、全くの無駄です。食べる量を減らすことと、適度な運動をすることが、正しいダイエットのやり方です。

週末グルテンフリーは医学的に無意味

平日はグルテンが含まれるものをふつうに食べて、週末だけグルテンフリー生活をする、という食習慣医学的に意味がありません

グルテンがからだに及ぼす悪影響については、別の記事で詳しく説明していますが、小麦アレルギーの場合を除き、グルテンがからだに入ってから数日から数週間後に症状が現れます。週末の 2 日間だけストイックにグルテンを抜いたとしても、それまでにからだに入ったグルテンの影響が残っているので、ほとんど影響はないでしょう。

もうひとつ重要なことは、グルテンによる影響はからだに入ったグルテンの量に比例するということです。ふだんの生活でグルテンが多く含まれるパン、麺類、粉ものなどをできるだけ食べないようにすることが重要で、平日にパンやラーメンをガンガン食べている人が、週末だけ揚げ物や天ぷらの衣や、カレールーに含まれる小麦粉まで厳密に抜いたところで、からだに入るグルテンの量はあまり減りません。

レストランのグルテンフリーメニューや、スーパーのグルテンフリー食品(特に、通常は小麦粉が使われる食品の代替品)は、多くの場合、割高になっています。米粉などに比べて小麦粉の値段が安いことと、日本ではグルテンフリー食品に対する需要がそれほど多くないことが理由です。週末だけでも頑張ってグルテンフリーにしようという気持ちはよくわかりますが、せっかくお金を使うのであれば、その効果が科学的に説明できることに使ったほうがよくないですか。

まとめ

  • グルテンは小麦、大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質。欧米では食品 1 kg に含まれるグルテンの量が 20 mg 未満のとき、Gluten-free と表示することができるが、日本にはグルテンフリーの表示に関するルールはない。食品 1 kg 中 20 mg 未満という数値は、セリアック病の人が食べても、健康に影響がない量として決められた。
  • グルテンが関わるアレルギー疾患には、小麦アレルギーとセリアック病がある。小麦アレルギーでは、小麦が含まれているものは摂らないが、醤油、酢は摂っても問題ない。セリアック病では、グルテンフリーの表示がある食品か、小麦、大麦、ライ麦が本質的に含まれないものを摂る。
  • お腹の調子を改善するためのグルテンフリーでは、微量のグルテンまで除去する必要はない。
  • 全身症状を改善するためのグルテンフリーでは、いったん厳密なグルテンフリーを 3 週間行った後、グルテンの量を段階的に増やして、体調の変化を注意深く観察する必要がある。全身症状は複数の要因が複雑に絡み合って発生することが多いため、根気よく原因物質と摂取可能量を探す必要がある。
  • 健康目的のグルテンフリーでは、パン、めん類、お菓子を、ごはん、米粉麺、小麦粉を使わないお菓子に置き換えることで、グルテンの摂取量を減らすことが可能。ダイエット目的でグルテンフリーをすることは、意味がない。
  • グルテンの影響は、からだに入ってから数日後に現れること、また影響の度合いは、からだに入った量に比例することから、週末だけグルテンフリーをすることは、意味がない。

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!