おいしい天ぷらのコツの一つは、衣を作る際の粉の混ぜ方なんだとか。小麦粉を溶かすとき冷水を使い、混ぜ過ぎないようにすることで、グルテンの形成を防ぐのです。小麦粉を使う料理でグルテンを形成させたくないというのは珍しいですが、それならはもともとグルテンを含まない他の粉でも、天ぷらの衣を作れるのではないでしょうか。米粉やコーンスターチを使って、天ぷらを作ると、どうなるのでしょうか。
おいしい天ぷらの衣にグルテンが必要ないのはなぜ
天ぷらの衣をつくるとき、みなさんは小麦粉を使いますか。それてもてんぷら粉を使いますか。てんぷら粉は水で溶くだけで衣ができますが、小麦粉から作る場合は、少々工夫が必要です。
材料(2人分)は、
- 水 200 ml
- 卵 1 個
- 小麦粉(薄力粉) 140 g
ですが、あらかじめ冷やしておく必要があります。なぜだと思いますか。
それはグルテンを発生させないためです。
まずボウルに卵を入れ、水を加えて混ぜ合わせます。
つぎに小麦粉を入れて、箸でつくように混ぜ合わせます。
少しダマが残る程度で、かき混ぜるのを止めます。混ぜ過ぎないのもグルテンを発生させないためです。
さらに作った衣はできるだけ早く使い切ったほうがよいです。
小麦粉と水を混ぜ合わせると、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンが結びついてグルテンが形成されるので、これもグルテンを発生させないためです。
天ぷらの衣にグルテンができると、
- サクッとした食感にならない
- 衣が分厚く、重たくなる
ため、天ぷらがフリッターのようになってしまい、おいしい天ぷらができません。
てんぷら粉は、粉を水に溶くだけで衣ができ上ります。何が入っているのでしょうか。
日清コツのいらない天ぷら粉 揚げ上手(日清フーズ)
原材料名:小麦粉(国内製造)/加工でん粉、ベーキングパウダー、乳化剤、カロチン色素、クチナシ色素(一部に小麦を含む)
日清天ぷら粉(日清フーズ)
原材料名:小麦粉、でん粉、加工でん粉、ベーキングパウダー、着色料(アナトー、ビタミンB2)、(一部に小麦を含む)
天ぷら粉黄金(昭和産業)
原材料名:小麦粉(国内製造)、でん粉、パンプキンパウダー、卵黄粉、全卵粉 / ベーキングパウダー、カロテン色素
昭和即席天ぷら粉(昭和産業)
原材料名:小麦粉、でん粉、卵黄粉(卵を含む)、卵白粉 / ベーキングパウダー、着色料(ビタミンB2)
最も多く入っているのは小麦粉ですが、でん粉や加工でん粉を入れることで、グルテンの濃度を下げています。またメーカーよって、卵が入っている場合と入っていない場合があることもわかりました。着色料は卵黄の色を出すために添加されているようです。
天ぷらの衣をグルテンが入っていない米粉や片栗粉で作るとどうなる
小麦粉にはグルテンが入っています。おいしい天ぷらをつくるためにグルテンがじゃまになるのなら、グルテンが入っていない粉を使えばいいのでは、と思ってしまいます。
米粉
米粉は小麦粉に比べて粒径が大きく、衣にして油で揚げたとき、油を吸う量が少ないので、小麦粉を使った天ぷらよりも、油っぽくなりません。
一方で粉の粒が大きいため、口当たりが悪く、衣が固くなります。
小麦粉の粒径は 1~40 µm(平均 10 µm)ですが、米粉はメーカーによって全く違います。
農林水産省が公表した「基準」では、米粉は粒径が 75 µm 以下のものが 50 % 以上含まれているとしていますが、この基準に基づいた表示をしている商品の方が少数派のため、実際はメーカー・製品によってバラバラです。さらにでんぷんの損傷度にも差があるため、どの米粉を使うかで、天ぷらのでき上りに差が生じます。
米粉を購入し、調合して衣を作らなくとも、小麦粉を使わない、米粉の天ぷら粉という商品が発売されています。
米粉天ぷら粉(みたけ食品)
原材料名:うるち米(国産)、大豆(遺伝子組換えでない)/ベーキングパウダー、加工でんぷん、乳化剤
この商品を使った天ぷらは、従来の天ぷらと比べて吸油率を約 55 %カットしたと表示しています。
グルテンフリー 天ぷら粉(熊本製粉)
原材料名:米粉(うるち米(九州産))、玄米粉(うるち米(九州産))、とうもろこし粉、でん粉/加工でん粉、膨張剤、増粘剤(加工でん粉)、乳化剤
みたけ食品の製品は米粉、大豆粉、加工でん粉を、熊本製粉の製品は米粉、玄米粉、とうもろこし粉、でん粉、加工でん粉を使用しており、全く違っています。
片栗粉(馬鈴薯でんぷん)
片栗粉も小麦粉より粒径が大きく、粒径がバラバラなので、片栗粉を使って衣を作ると、食感がだいぶ変わってしまいます。米粉の場合と同様、油を吸う量が少なく、衣が固めになるため、時間が経ってもサクサク感が残ります。また小麦粉を使った場合より、カロリーは下がります。
天ぷらをカラッとサクサクに揚げる裏技
できあがった天ぷらが、水っぽくなることがあります。衣の中にある水分が、あげている途中に蒸発していないのと、揚げた後に具材の水分が出てきて、衣が水分を含んでしまうためです。
これを防ぐ方法がいくつかあります。
卵の代わりにマヨネーズを使う
小麦粉から衣を作る場合、卵、水、小麦粉を混ぜますが、卵1個をマヨネーズ大さじ3で置き換えることにより、マヨネーズに含まれる乳化された衣全体に行きわたり、衣の中の水分を残さずに揚げることができます。
揚げる前に具材の水分をよく取り除く
具材の表面に残っている水分をよく取り除いてから揚げることで、衣に水分が移行するのを防ぎます。
衣に使う粉を吸水性が少ないものにする
でん粉の粒子が損傷していると、吸水しやすくなります。小麦粉はもともと吸水しにくいので問題ありませんが、米粉の場合は粉砕方法によってはでん粉の損傷度が大きい場合があり、できあがった衣が吸水し、重くなってしまいます。でん粉の損傷度の低い米粉を使う方がよりおいしく仕上がります。
また粒径の大きい粉の方が、吸水・吸油しにくいので、米粉やコーンスターチで作った衣の方が、吸水・吸油はしにくくなります。
まとめ
- 小麦粉で天ぷらの衣を作るときは、冷えた水を使い、混ぜ過ぎないようにし、作った衣は早く使うほうがよいといわれているが、これは衣の中でグルテンが形成されないようにしている。
- 米粉やコーンスターチはグルテンが入っていないが、小麦粉に比べて粒径が大きいため、出来上がった衣の口当たりが悪く、固く感じる。
- 米粉やコーンスターチは小麦粉に比べて吸水・吸油しにくいため、サクサクした天ぷらができ上り、しかもその状態を保つことができる。