ゆるグルテンフリー生活をしていても、小麦を口にする機会はもちろんあります。
友だちとのランチや職場の懇親会(今はなくなりましたけどね!)、コース料理の結婚式……
「ゆる」だからこそ、お店に特別メニューを頼むほどではなく、自身で食べる量を調整したりして対応しています。もちろん、自分が「あー!モンブラン食べたい!」みたいな時もありますね。
以前はそんな日にはコンビニでカットパインを買って食べるようにしていました。グルテンをうまく消化できない体質の人でも、パイナップルの酵素がグルテンの消化を助けてくれる、というネット記事を読んだからです。
でも今はやめました……このコラムではその理由をご説明します!
パイナップルにはたんぱく質分解酵素が含まれるから、グルテンフリーの味方?
生のパイナップルには、たんぱく質を分解する酵素が含まれます。お肉をあらかじめパイナップル果汁に漬けておくと、軟らかくなるという裏技がありますよね。
同じ効果は、キウイ、青パパイヤ、イチジク、ショウガ、マイタケにもあるそうです。(マイタケ…!そんな酵素を含んでいたのか!)
なおこの酵素は加熱すると働かなくなります。ですから、缶詰のパイナップルでは、お肉は軟らかくならないそうです。
ところで、グルテンをうまく消化できない体質の人でも、パイナップルの酵素がグルテンの消化を助けてくれる、という話を聞きつけた筆者は、それを長年りちぎに実践していたわけです。
パスタやピザを食べたときは、帰りにコンビニへ寄ってカットパインを買って家で食べる、カットパインが売り切れだったら、ドライフルーツのパインを気休めにほおばる(単に好きなだけともいう)という具合に。
当時は藁にもすがる思いというか、まだどれくらい食べたら不調が出るのかもわからなかったので、とにかくグルテンの影響が出るのを恐れていました。正直パイナップルを食べる効果については、半信半疑で実践していた感じです。
でも、効果がないということを、先日当サイトの薬剤師Hirataに聞いて(つっこまれて)知ったのです。
グルテンと食物繊維のパイナップルを食べると胃の負担が増す

小麦粉で作られたパスタ1人前には、グルテンが約10g入っています。これを食べ終わってから30分後に、急いでカットパイン(生のパイナッル)を食べたとしましょう。
そのころパスタは胃の消化酵素で分解されている真っ最中です。グルテンに弱い人でも、肉や卵はふつうに消化できるので、胃の中のへプシンというたんぱく質分解酵素が、グルテンをせっせせっせと分解し、ある程度は細かくなっているころです。
ここへパイナップルを食べたところで、パイナップルの消化酵素は胃液で薄められてしまい、たいした濃度にはならず、グルテンの分解のお手伝いはできません。分解しにくいグルテンと格闘している胃に、また食物繊維の塊のようなパイナップルが入ってきて、胃の負担は増すだけです。
胃である程度段階されたグルテンは、十二指腸から出るトリプシンというたんぱく質分解酵素でさらに細かくされますが、肉や卵のたんぱく質とは違い、完全に分解することができません。そして大きい塊のまま小腸へ流れ込んだ結果、小腸壁から吸収されず、小腸内に長い時間とどまり、結局、腸内細菌のエサになって、ガスに変わる、という運命をたどるわけです。
長々と説明しましたが、たんぱく質と、たんぱく質分解酵素を含んだ食品を時間差で食べても、効果はありません。
またたんぱく質の量と分解酵素の量の比も、大きく関係します。パイナップルの果汁に肉を漬けた状態と、パスタで満たされた胃にパイナップルを後から放り込んだ状態を比べてください。どちらがたんぱく質に対して分解酵素の量が多いでしょうか。
はい、以上がつっこまれた内容でした……。
食べる前にグルテンとパイナップルを混ぜると分解はされる
じゃあ、パスタと生のパイナップルを同時に食べたら、もしくは事前にパイナップルを食べておいたらどうでしょう?

現実的には無理ですが、食べる前にグルテンを含んだ食べものと、生のパイナップルを30分間ほど接触させるならば、グルテンは分解されます。例えばパスタと生のパイナップルをミキサーにかけて30分ほど置いておくと、グルテンは分解されます。こんなもの、食べたくありませんが…。
また試してはいませんが、パスタと生のパイナップルを同時に口に入れ、よく噛んでから飲み込めば、パスタの中のグルテンは多少分解されるかもしれません。でもパイナップルのたんぱく質分解酵素は、そもそも強力ではないので、ちょっと混ぜたくらいでは、たんぱく質は分解しません。
うーん。やっぱり酢豚のパイナップルのようにはいかないようです。グルテンで胃腸症状が出てしまう人にとっては、奥の手のようなものがあったら嬉しいんですけどね……。
パパイヤ茶のパパイン酵素はグルテンフリーに効くのか
もう少し粘って聞いてみましょう!(鼻息)。パパイヤ茶がグルテンフリーにおすすめっていうのも聞いたことがあります。青パパイヤにも、パパインという酵素が含まれていますよね。よく洗顔料に使われていると思いますが、これはどうでしょう?

トロピカルフルーツの一つパパイヤにも、たんぱく質分解酵素が含まれています。ただし成熟したオレンジ色の果実には含まれておらず、未成熟の緑色の果実の中の胚乳の部分に、たんぱく質分解酵素が含まれています。未成熟のパパイヤは青パパイヤと呼ばれ、沖縄料理やタイ料理で材料として使われます。
ところでパパイヤの葉や茎にも、たんぱく質分解酵素が含まれることがわかっています。パパイヤの葉を乾燥したパパイヤ茶というのがありますが、一部の人が、グルテンフリーに効果があると主張しています。効果があるといっているだけで、具体的にどんな効果があるとは、いっていません(ずるいですね)。
もし茶葉にたんぱく質分解酵素が含まれていたとしても、お茶として浸出したものの中に、いったいどれだけ含まれているのでしょうか。それが食べものに含まれるグルテンを分解することは、あり得ません。
はい、「なかったことに」を期待するのはやめましょう、ということですね。はーい。
生のパイナップルを食べても、グルテンを分解する効果はない

○○には△△という成分が含まれている。
△△には□□という効果がある。
だから
○○には□□という効果がある。
という三段論法は、健康食品でよく使われるトリックです。
一見、正しいように見えますが、実はそうではありません。
生のパイナップルには、たんぱく質分解酵素が含まれている。
たんぱく質分解酵素はグルテンを分解する働きがある。
だから
生のパイナップルを食べると、食べものの中に含まれるグルテンを分解する
ということにはなりません。
パイナップルは好きなので、今でもコンビニのカットパインやドライフルーツのパインの売り上げに日々貢献しています。でも、小麦を食べてしまった罪悪感や義務感から食べることはもうありません。
ゆるグルテンフリーが目指すのは、ウェルビーイングな毎日です。仮に小麦を食べたとしても罪悪感と一緒にではなく、今日は自分へのご褒美だと割り切って、思い切り楽しんで食べるのが正解です。
この記事が筆者と一緒で、グルテンの消化を助けると思ってパイナップルを食べている方の、参考になれば幸いです。
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まとめ
- 生のパイナップル、キウイ、青パパイヤ、イチジクなどには、たんぱく質分解酵素が含まれる。生のパイナップルと肉を一緒に漬け込むと、肉が軟らかくなることが知られている。
- グルテンが入っている食べものを食べた後、生のパイナップルを食べても、グルテンを分解する効果はない。グルテンが入っている食べものと生のパイナップルを食べるまえに混ぜ合わせれば、多少効果があるかもしれない。
- パパイヤ茶がグルテンフリーに効果があるという情報があるが、効果があるとは思えない。