薬剤師が解説するどこよりも詳しいグルテンフリーガイド

受験に万全の態勢で臨むために、試験の2週間前からグルテンフリーにしてみませんか

プロアスリートの多くが、シーズン中はグルテンフリー生活をしています。ベストパフォーマンスを発揮するためには、小麦などに含まれるグルテンが障害になるからです。同じことが、短期決戦の受験生にも当てはまります。ベストコンディションで受験に臨めるよう、受験シーズンだけでも、グルテンフリーの食生活に切り替えてはどうでしょうか。

 

 

受験はスポーツの試合と似た環境

受験とスポーツの試合は環境が似ています。まずどちらも限られた時間内で最高のパフォーマンスを発揮しなければなりません。またその時間中は、持てる力を出し続けなければならないという点も同じです。さらにスポーツでは筋肉に流れる血液量が増えるために、内臓を流れる血液量が相対的に少なくなりますが、受験では、脳に流れる血液量が増えることで、内臓の血流が減というのも、同じです。

受験で緊張して、吐き気を感じたり、腹痛、胸焼け、下痢が起こることがよくあります。これはストレスの影響もあるでしょうが、内臓の血流が減る内臓低灌流も関係していると考えられます。

日本の受験シーズンというのは、一年で最も寒い時期に当たります(なんで、こんな時期にやるんですかね)。ただでさえ、コンディションがよくないので、受験生のからだにかかる負担を少しでも減らしてあげたいのです。

 

 

プロアスリートがグルテンフリーにする理由

プロのアスリートは最高のパフォーマンスを発揮するために、ふだんから食事には気を配っています。そんなプロアスリートの 41 % が、グルテンフリーの食事を摂り入れていることをご存じでしょうか。

グルテンフリーというのは、もともとグルテンが原因で起きる自己免疫疾患であるセリアック病の人のための治療食です。セリアック病はグルテンを摂ることで小腸の粘膜が破壊されるため、生涯にわたってグルテンを含まない食事を摂り続ける以外に、治療法がありません。でも、アスリートの多くは、セリアック病でないにもかかわらず、自分からグルテンフリーの食事を選んでいるのです。

オーストラリアの研究者が、オリンピックのメダリストを含む 910 人のセリアック病でないアスリートを対象に行った調査では、なんと41%の人が食事の半分以上をグルテンフリー食にしていると回答しました 1)。これは完全にグルテンフリーにしている人から、食事の半分程度をグルテンフリーにしている人まですべて合わせた数です。

雑誌の記事などによると、欧米のプロスポーツの世界では、シーズン中はグルテンフリー食にするというのが一般的なんだそうです。ちなみに大リーグで活躍している大谷翔平選手もその一人です。

 

関連記事

エンゼルスの大谷翔平選手の活躍は、コロナ禍でも人々に希望の光を与えてくれますね。先日のオールスターゲームで、両チームの選手達から握手やサインを求められる姿が報道されていて、「二刀流」で結果を出すことがいかに難しく、リスペクトを集めることなの[…]

 

アスリートがグルテンフリーにする理由は、大きく分けて 2 つあります。一つは激しい運動によって起きる胃腸の機能障害である運動誘発性胃腸症候群の発症を抑えるため、もう一つは腹部膨満感、下痢、原因不明の痛み、倦怠感、頭痛、関節や筋肉の痛みなどの慢性的な症状を抑えるためです。

運動誘発性胃腸症候群というのは、激しい運動によって内臓を流れる血液量が少なくなることで、腹部膨満、逆流、げっぷ、吐き気、腹痛、胸焼け、下痢などが起きるものです。アスリートの 30~50 % がこの症状を経験しているそうです。そして症状が重くなるとバリア機能が損なわれた腸から細菌が入り、全身で炎症反応が起きるという恐ろしい病気です。グルテンフリーにすることで、この症状を回避できるため、グルテンフリーにするアスリートが多いといわれています。詳しい内容はこちらの記事で紹介しています。

 

関連記事

アスリートは最高のパフォーマンスを発揮するために、ふだんから食事に気を配っています。そんなアスリートの41%が、グルテンフリーの食事を取り入れていることをご存じでしょうか。運動誘発性胃腸症候群を防ぐなど、アスリートがグルテンフリーを取り入れ[…]

 

もう一つの慢性的な症状というのは、いずれもグルテンが原因で起こる不快な症状として一般的によく知られているものです。そしてさきほどのオーストラリアの研究では、グルテンフリーにしていると回答したアスリートの 84 % がグルテンフリーにすることで、腹部膨満感、下痢、原因不明の痛み、倦怠感、頭痛、関節や筋肉の痛みなどが解消されたと回答しています。

 

 

寒い時期に頑張る受験生を応援してあげてください

受験でこれから先の人生が決まるわけではありませんが、受験は人生の中での大事なイベントであることは間違いありません。長い時間をかけて準備してきたのですから、ベストコンディションで臨みたいものです。
多くのプロアスリートが取り入れて、効果があるといっているのなら、受験生にも効果があるのではないでしょうか。

その証拠はどこにあるんだ、といわれるかもしれませんが、プロスポーツや受験で、グルテンフリーが効果があるかどうかについては、実験で証明することができません。グルテンフリーにしたグループとグルテンフリーにしなかったグループで、成績を比較すれば、グルテンフリーの効果の有無を調べることになりますが、そのような実験は倫理的にできないことはお分かりいただけると思います。

プロスポーツの場合は、グルテンフリーの食生活を取り入れるようになってから、体調がよくなったとか、成績が上がったという話はたくさんあります。それが口コミで伝わり、他の選手やトレーナーの勧めで、グルテンフリーを取り入れる人が増えていったようです。まずはやってみることです。

やるにあたって、注意してほしいことが何点かあります。まず受験生本人がストレスに感じることは、絶対にやめてください。もし小麦を使った食べものが食べたいというのなら、それを止めないでください。ただでさえ楽しみが少ない状況で、当人にとっては、その食べ物を食べることが唯一の楽しみかもしれません。それを奪ってまでやるほどのメリットはありません。

次に小麦を食べないほうがよい理由やグルテンフリーのメリットを長々と説明するのはやめましょう。心に余裕がないときに、そんな話はをしたところで、頭に入ってきません。

グルテンフリーをするときは、てきるだけ気づかれないようにやってください。パン食の回数を少し減らす、和食のおかずを増やす、ラーメンやうどんをグルテンフリーめんに替える、すき焼きに麩を入れない、小麦粉を使ったスナック菓子をポテトチップスとかお米を使ったせんべいに替えるなど、できることはいくらでもあります。グルテンを摂る量が半分になっただけでも、胃腸への負担はかなり減ります。

そしてグルテンフリーは、少なくとも受験の 2 週間以上前から始めてください。もしグルテンが原因で倦怠感や頭痛が起きていた場合、それが完全に消えるまで、最長 1 年かかるといわれていますが、腹部膨満や慢性的な下痢などの胃腸症状は、2 週間あれば解消します。

日本の受験シーズンは、一年でもっと寒い時期です。筆者も経験しましたが、この時期は交通機関の乱れとか、インフルエンザの流行とか、余計なことにまで気を使わなければなりません。受験生の負担を少しでも減らし、これまでの努力が実を結ぶように、応援してあげてください。

 

 


参考文献

1) Lis DM, Stellingwerff T, Shing CM, Ahuja KD, Fell JW. Exploring the popularity, experiences, and beliefs surrounding gluten-free diets in nonceliac athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2015; 25(1):37-45. doi: 10.1123/ijsnem.2013-0247

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!