グルテンフリーが注目されていますが、健康上の理由から、小麦やグルテンを厳密に避けなければならない人ばかりではありません。グルテンの摂取量を可能な範囲で減らすだけでも、効果が得られることもあります。ここでは食べものに含まれるグルテンの量を大まかに計算し、一覧表にしました。グルテンの摂取量を減らすのに役立ててください。
グルテンは何が問題なのか
グルテンは、小麦、大麦、ライ麦とその交雑種に含まれるたんぱく質です。グルテンが問題になっている主な理由は次の 3 つです。
- アレルギー反応を起こす
- 人間の消化酵素で分解されにくい
- のバリア機能を破壊する
たんぱく質は、どんなものでも、アレルギー反応を起こすアレルゲンになることがあります。小麦のたんぱく質がアレルゲンとなる病気には、小麦アレルギー(患者さんの数は 300 人に 1 人)、セリアック病(同 100 人 に 1 人)や、グルテン運動失調、小麦アレルギーの一種であるベーカー喘息があります。
次に、グルテンはその複雑な立体構造から、人間の消化酵素で分解されにくく、完全に分解されないまま小腸に到達します。その一部は、次で説明するリーキーガットとなった小腸で体内に吸収されますが、粘着性があるため、小腸に長時間とどまり続けます。そのためお腹が重く感じたり、痛みを感じることもあります。
やがて大腸に送られたグルテンは腸内細菌によって一気に分解されてガスに変わるため、下腹が張ったり(腹部膨満)、おならが頻繁に出ることになります。腸内細菌が分解しきれないと、下痢が起こることもあります。
最後に、人間の腸には、からだに有害なものを摂りこまないようにするため、バリア機能が備わっていますが、グルテンはそのバリア機能を破壊することがわかっています。バリア機能が破壊された状態をリーキーガット(leaky:漏れやすい、gut:腸)といいます。通常は体内に入らない物質が血液によって全身に運ばれることから、全身に影響が及びます。
リーキーガットとは、腸のバリア機能が損なわれた結果、本来なら入らない物質が体内に入る状態になることです。腸のバリア機能の一つが、腸管上皮細胞のすき間を閉じている細胞間接着装置です。ゾヌリンというたんぱく質が作用すると、このすき間が緩んで、腸[…]
あなたはどのくらいのグルテンを摂っている?
西洋型の食生活をしていると、1日に 5~20 gのグルテンを摂っているといわれています 1)。またこれに伴って、世界中の人々の 10 人に 1 人が、グルテンが関係すると思われる体調不良を自己申告しているという研究報告があります 1)。
日本人も西洋型の食生活をしている民族に含まれますが、さてあなたは 1 日にどのくらいのグルテンを摂っているのでしょうか。
グルテンが多く含まれているのは、小麦粉が主原料の料理です。
このサイトでは文部科学省が作成・公表している日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)、一般的な料理のレシピ、食品メーカーの栄養成分表示をもとにして、食品(メニュー)に含まれるグルテンの量を計算しました。料理の材料も作り方も千差万別なので、ここで示した量はあくまでも参考値として考えてください。
食品別グルテン量一覧表
めん類
- ラーメン 1 人前 11.0 g
- パスタ 1 人前 10.8 g
- そうめん 1 人前 7.4 g
- 焼きそば 1 人前 7.2 g
- うどん 1 人前 5.1 g
- カップ麺(ラーメン) 1 食 3.4~8.2 g
- カップ麺(うどん) 1 食 4.8 g
- インスタント袋麺 1 食 6.9~7.9 g
中華めん、うどん、そうめんは小麦粉が原料で、めんのプリプリ感やコシの強さを出すために、グルテンの含有量が多い小麦粉(中力粉)が使われます。またパスタも、グルテンの多いデュラム小麦が原料です。そのため、1 食あたり 5~10 g のグルテンを摂ることになります。めん類を食べる回数を減らすだけでも、グルテンの摂取量はかなり減らすことができますよ。
めん類でも、ビーフン(米粉のめん)やはるさめ(緑豆、馬鈴薯でん粉などが原料)にはグルテンは含まれていません。
ところで注意して欲しいのは、お蕎麦です。そば(そば粉)そのものには、グルテンは含まれていません。しかし十割そば以外のそばには、つなぎとして小麦粉またはグルテンが添加されており、値段の安いそばの場合、そば粉よりも小麦粉の方が多く使われています。干しそばの場合、原料のうちそば粉が 30 % 以上含まれておれば、そばと表示できます。そばに含まれる小麦粉とグルテンついては、こちらの記事で詳しく解説しています。
パンとめん類は、小麦粉から作られる食品の中で、主食として食べられる機会が多いものです。グルテンフリー生活では、パンは米粉パンへ、めん類は、そばやビーフンへの置き換えが考えられますが、これらの食品にも小麦粉が使われていることがあります。特に米[…]
パン
- 食パン 6 枚切り 1 枚 4.5 g
- フランスパン 1 本 240 g 19.2 g
- ランチパック 1 パック 5.5 g
- あんパン、ジャムパン、クリームパン 1 個 110 g 4.7~5.7 g
ふっくらとしたパンを作るためには、生地を発酵させる必要があるため、グルテンが多く含まれる小麦粉(強力粉)が使われます。そのため、パンには多くのグルテンが含まれています。
ファストフード
- ハンバーガー 1 個 4.3 g
- ビックマック 1 個 8.8 g
- チキンナゲット 5 個 1.2 g
- ピザ 1 人前 7.7 g
- 肉まん・あんまん 1 個 1.9 g
ピザの生地も、パンと同じように発酵させて作るため、グルテンが多い小麦粉が使われています。肉まん・あんまんは、全体に占める生地の部分が少ないため、パンに比べたらグルテンの量は少なくなっています。
粉もの
- ホットケーキ 2 枚、バター、シロップ付き 6.5 g
- お好み焼き 1 人前 4.5 g
- たこ焼き 1 人前(8 個) 3.8 g
小麦粉から作られる粉ものには、グルテンが多く含まれています。
小麦粉・パン粉を使うお料理
- 餃子 1 人前 6 個 2.9 g
- メンチカツ 1 人前 2.7 g
- ポテトコロッケ 2 個 2.3 g
- ハンバーグ 1 人前 1.2~1.5 g
- 串カツ 2 本 1.1 g
- シウマイ 5 個 1.0 g
- とんかつ 1 人前 1.0 g
- 魚フライ 1 切 0.3~0.7 g
- 天ぷら盛り合わせ(エビ 2、ししとう 2、しいたけ 1) 0.4 g
- 鶏のから揚げ 1 人前 18 0g 0.2 g
小麦粉やパン粉が使われていますが、メインの食材を包む部分に使われているため、めん類、パン、粉ものに比べると、グルテンの量はかなり少なくなっています。厳密なグルテンフリーの場合は、小麦粉を使った揚げ物は食べられませんが、グルテンを減らす目的であれば、許容することも考えてよいと思います。
その他ごはん
- マカロニグラタン 1 人前 11.4 g
- ミートソースグラタン 1 人前 8.6 g
- インスタントみそ汁(麩入り) 1 人前 0.5 g
お菓子
- ブリッツ 旨サラダ 30 g 2.9 g
- プレミアムクラッカー 30 g 2.6 g
- ドーナツ 60 g 2.4 g
- チョコモナカジャンボ 1 個 1.6 g
- バタークッキー 30 g 1.5 g
- ショートケーキ 1 個 120 g 0.8 g
- シュークリーム 80 g 0.6 g
- どらやき 63 g 1.0 g
調味料
- しょうゆ ほぼゼロ
- 麦みそ ほぼゼロ
- 穀物酢 ほぼゼロ
しょうゆは大豆、小麦、食塩が原料なので、アレルゲン表示欄には「小麦・大豆」と書かれています。ですが、原料の小麦に含まれるたんぱく質は製造過程で分解されて、うまみ成分であるアミノ酸になっているため、たんぱく質は、ほとんど残っていません。
麦みそは大麦から作った麦麹が使われていますか、大麦のたんぱく質も分解されて残っていません。ただしごはんなどに付けて食べる金山寺みそは、大麦の粒がそのまま入っていますので、グルテンが含まれています。
さらに穀物酢の一部には、小麦が原料として使われているものがあります。こちらのたんぱく質も醸造の過程で分解されるので、製品中には残っていません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
お醤油の原材料は、大豆、小麦、食塩です。また麦味噌には、大麦が使われています。さらにお酢の中には、小麦が原材料のものもあります。和風だし・洋風だし・中華だしには、ほとんど小麦由来成分が入っています。これらをすべて使わずに生活するのは、結構大[…]
ふつうのお醤油が使えると、グルテンフリー生活はグッと楽になりますね!
別の記事では、ファミレス、牛丼チェーン店、お弁当屋さんなどでよく見かけるメニューの中から、グルテン量が比較的少なそうなメニューを紹介しています。厳密なグルテンフリーが必要でない場合は、これを選ぶことでグルテンの摂取量を減らせます。あわせて参考にしてください。
グルテンフリーではないけど、グルテンや小麦成分の量が少ない料理や食べ物は、結構あります。小麦アレルギーやセリアック病以外の人は、食べても大丈夫なことが多いのですが、含まれているグルテンの量がわからないと、食べる、食べないの判断ができません。[…]
参考文献
1) Barbaro MR, Cremon C, Wrona D, et al. Non-Celiac Gluten Sensitivity in the Context of Functional Gastrointestinal Disorders. Nutrients. 2020; 12(12):3735. Published 2020 Dec 4. doi: 10.3390/nu12123735