薬剤師が解説するどこよりも詳しいグルテンフリーガイド

食品がグルテンフリーかどうか、その場でわかるセンサーが発売中

欧米ではレストランでグルテンフリーと書かれたメニューをよく見かけますが、その1/3はグルテンフリーではない、といわれています。グルテンフリーという表示を信じて食べたところ、実はグルテンが入っていた、なんてことが頻繁に起こるため、その場で、食品中のグルテン濃度を調べられる、ポータブルセンサーが発売されました。

欧米ではグルテンフリーが定着している

北米、ヨーロッパ、オーストラリアでは、レストランのメニューや食品スーパーの商品に  “Gluten-free”  と書いてあるのをよく見かけます。

小麦、大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質であるグルテンは、人間のからだにいろいろな悪影響を与えますが、その中でも深刻な病気の一つがセリアック病です。セリアック病は食べものに含まれているグルテンを異物と勘違いして、自分の免疫系が攻撃することで起きる病気で、根本的な治療方法がありません。

 

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セリアック病の人は、生涯にわたってグルテンを摂らない食生活、すなわちグルテンフリー生活をしなければなりません。多くの場合、1 日のグルテン摂取量を 50 mg 以下にする必要があり 1)、そのために作られたのが、グルテンフリーという表示です。食品に含まれるグルテンの濃度が 20 ppm 未満(食品 1 kg 中にグルテンが 20 mg 未満)の場合に、グルテンフリーと表示することができます。セリアック病の人は、これを目印として、レストランでのメニュー選びや食品の購入をしています。

セリアック病の人は現在、100 人 に 1 人 の割合でいるといわれており、その数はこの 50 年で 4~5 倍に増加しました 2)。またこどものセリアック病患者も増えていることから、今後もさらに増加すると考えられています。患者さんの数は小麦アレルギーの 30 倍以上なので、グルテンフリーの表示に対するニーズは高く、アメリカ、カナダ、EU、オーストラリア、ニュージーランドでは、政府がグルテンフリー表示のルールを決めています。

 

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食品のパッケージやレストランのメニューで見かける Gluten free という表示。欧米では、食品に含まれるグルテン濃度が 20 ppm 未満という意味です。製造販売事業者による自主表示ですが、一部の国では法律で規定されており、事実と異な[…]

 

一方、セリアック病の治療だけでなく、健康上の懸念からグルテンフリー食を選択する人が増えておりアメリカでは成人の 3 人に 1 人が、部分的な場合も含めてグルテンフリー食を選んでいるというデータもあります 3)。このように、欧米やオーストラリアでは、グルテンフリーが定着しています。

なぜ食品のグルテン濃度を測定するのか

各国におけるグルテンフリーの表示は、製造販売事業者による自主表示です。GFCO 認証のように、第三者機関が食品に含まれるグルテン濃度や食品の製造工程を調べて、グルテンフリーであることを「認証」している場合もありますが、基本的には製造販売事業者に任されています。

事実と異なる表示をした場合は、不当表示として処罰の対象になるため、食品スーパーなどで売られている商品は信用してよいといわれますが、レストランの場合は同じ厨房でグルテンフリーメニューと通常メニューを調理しているところもあり、グルテンフリーと表示されたメニューの 1/3 が、実は 20 ppm 以上のグルテンを含んでいたという調査結果があります 4)

厳密なグルテンフリーを守らなければならないセリアック病や小麦アレルギーの人にとって、これは死活問題です。グルテンフリーと信じて食べた料理に、実はグルテンが入っていたなんてことになると、外で食事ができなくなります。小麦アレルギーの場合は、食べて数分から 1 時間以内にアレルギー反応が出るので、食事が原因とわかりますが、セリアック病の場合はグルテンを摂取してから症状が出るまでに 1~2 日かかるので、より深刻です。

そのため、レストランで出されたものが、本当にグルテンフリーかどうかが疑わしいときに、その場でグルテン濃度を測定するための装置が発売されています。

 

ニマ グルテンセンサー(NIMA Gluten Sensor)

ニマグルテンセンサーは、マサチューセッツ工科大学の技術を使って Nima Labs, Inc. が開発したポータブルセンサーです 5)

使い方は簡単です。検査したい食品サンプルを検査カプセルにいれて、本体にセットすると、5 分以内に 20ppm 以上グルテンが含まれているかどうかを判定し、表示します。ただしグルテン濃度はわかりません。

食品サンプルはそのまま入れられるものもありますが、粘度の高いもの、乾燥粉末、鮮やかな色のものなどは、水で希釈する必要があります 6)。またビール、醤油、麦芽などの発酵食品や加水分解された食品やアルコールは測定できません。

検出の原理は、検査会社でグルテン濃度の測定で使っているのとほぼ同じです。検査カプセルに入っている 2 種類の抗体が、グルテンに含まれている 33 mer フラグメントと呼ばれる部分に結合することで、33mer の濃度からグルテンの濃度を調べています。

この装置は本体が 280 ドル(約 3 万円)で、使い捨ての検査カプセル(有効期限は製造後 6 か月)が 12 本で 40 ドル(約 4,400 円)となっています 7)。特に使い捨ての検査カプセルが、1 回あたり 370 円するのですが、これを高いと見るのか、安いと見るのかは、判断が分かれるところです。

ところでこのニマグルテンセンサーをめぐっては、ちょっとしたトラブルが起きていました。2020 年 5 月に Nima Labs, Inc. は、事業を医療機器大手企業の Medline Industries に売却しました。それまでは装置の本体と検査カプセルは Amazon で購入できましたが、それ以降、できなくなってしまいました 8)

この原稿を書いている2021 年 12 月 26 日の時点でも Amazon のウェブサイトに商品は掲載されていますが、Currently unavailable (現在お取り扱いできません)の表示が出て購入することができません。困ったのは、すでに装置本体を購入していた人たちです。このセンサーは検査カプセルがなければ、何の役にも立ちません。ニマグルテンセンサーは創業以来 1,800 台売れていたそうです。

その後、2021 年 9 月になって、NIMA Partnersという名前で新たなウェブサイトが立ち上がり、当初はトラブルもあったようですが、現在は機器本体、検査カプセルとも、このウェブサイトから購入できるようになっています。

ところで、事業を売却して廃業したといわれている Nima Labs, Inc. のウェブサイトは、現在もそのまま残っています。NIMA sensor で検索すると、そちらが表示されるので、検索される方は注意してください。

 

写真:NIMA Partnersのウェブサイトより転載

 

アリス グルテンセンサー(Allis Gluten Sensor)

検査したい食品を使い捨てカートリッジの中に入れて、センサー本体にセットするところまではニマグルテンセンサーと同じですが、結果は機器本体ではなく、専用アプリをダウンロードしたスマホに濃度で表示される点が異なります。センサー本体とスマホは Bluetooth で接続されます。また結果が表示されるまでの時間の 2 分以内ということです 9)

この装置は最近発売が開始されたばかりのようで、2021 年 12 月 26 日の時点で、使用したという記事が見つかっていません。さらに当初 7 月末までだった先行割引販売を現在も続けているようです。価格は、センサー本体に使い捨てカートリッジ 30 個がセットで、165 ドル(18,150 円)となっています。通常価格はセンサー本体が 228 ドル(25,000 円)使い捨てカートリッジが 10 個で 55 ドル(6,000 円)です。カートリッジは 1 回あたり 600 円と、ニマグルテンセンサーよりさらに割高になっています。

なお、機器についての詳しい情報などは公開されていません。ウェブサイトでは製品は設計段階となっており、機器は 11 月から発送開始となったままなので、まだ製品が出荷されていない可能性があります。いま購入手続きをしないほうがよいかもしれません。

 

写真:ALLIS Gluten Sensor ウェブサイトより転載

まとめ

  • 厳密なグルテンフリー食のニーズがある欧米では、グルテンフリーメニューやグルテンフリー食品が普及している一方で、レストランのグルテンフリーメニューの1/3は実際にはグルテンフリーではなかったといわれている。そのため、その場で食品のグルテン濃度を知ることができるセンサーが販売されている。
  • ニマグルテンセンサーは、使い捨ての検査カプセルに検査したい食品を入れると5分以内に、グルテン濃度が 20 ppm 以上かどうかを、機器本体に表示する。機器本体は約 3 万円、検査カプセルは 1 回あたり 370 円。
  • アリスグルテンセンサーは、使い捨てのカートリッジに検査したい食品を入れると、2 分以内に、アプリをダウンロードしたスマホにグルテン濃度が表示される。機器本体は 25,000 円、検査カートリッジは 1 回あたり 600 円。まだ製品は出荷されていない可能性がある。

 


参考文献

1) Itzlinger A, Branchi F, Elli L, Schumann M. Gluten-Free Diet in Celiac Disease-Forever and for All?. Nutrients. 2018; 10(11):1796. Published 2018 Nov 18. doi: 10.3390/nu10111796

2) Lebwohl B, Ludvigsson JF, Green PH. Celiac disease and non-celiac gluten sensitivity. BMJ. 2015; 351:h4347. Published 2015 Oct 5. doi: 10.1136/bmj.h4347

3) Niland B, Cash BD. Health Benefits and Adverse Effects of a Gluten-Free Diet in Non-Celiac Disease Patients. Gastroenterol Hepatol (N Y). 2018; 14(2):82-91.

4) Lerner BA, Phan Vo LT, Yates S, Rundle AG, Green PHR, Lebwohl B. Detection of Gluten in Gluten-Free Labeled Restaurant Food: Analysis of Crowd-Sourced Data. Am J Gastroenterol. 2019; 114(5):792-797. doi: 10.14309/ajg.0000000000000202

5) Zhang J, Portela SB, Horrell JB, et al. An integrated, accurate, rapid, and economical handheld consumer gluten detector. Food Chem. 2019; 275:446-456. doi: 10.1016/j.foodchem.2018.08.117

6) Nima Labs, Inc.ウェブサイト

https://nimasensor.com/gluten/manual/

7) NIMA Partnersウェブサイト

https://nimapartners.com/

8) Good For You Gluten Freeウェブサイト記事

Did Nima Sensor Go Out of Business?

9) ALLIS Gluten Sensor ウェブサイト

https://allis-sensor.myshopify.com/

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!