月経前症候群(PMS)
生理前に憂鬱になるのはなぜ PMSがひどくなった?
グルテンフリーでPMSの症状が緩和される
グルテンがPMSの症状を悪化させる一因であることは、大学病院の医師を含め欧米の多数の医師が指摘しています1)。しかしこれについては、現時点で医学的に証明されていません。証明されていないのには理由があります。
まずPMSに苦しむ人を2つのグループに分け、片方にはグルテンフリー食を、もう片方にはグルテンが入った通常の食事を摂ってもらい、PMSの症状の変化を長期にわたって観察する必要があります。しかしグルテンフリー食にすることで、PMSの症状が軽減する可能性が高いことがわかっているにもかかわらず、半分の人にはグルテンフリー食を与えないということは、ありえません。
もう一つはPMSが起きるメカニズムが複雑で、可能性がある食物の種類が多いということです。生理前になると、甘いものが食べたくなることや、糖類を摂ることで血糖値が変化し、ストレス関連ホルモンの濃度が上昇することから、糖類が関係しているのではないかといわれています。これに対してアメリカのグループが行った研究では、因果関係はわからないという結論になっています2)。
グルテンフリーでPMSが軽減された理由が、グルテンを摂らなくなったことによるものなのか、炭水化物の摂取量が減ったことによるものなのか、現時点ではわかりません。ただグルテンフリーでPMSの症状が軽減した人がいるのは事実なので、試してみる価値はあると思います。
ひどい生理痛(月経困難症)
生理がつらくなる月経困難症とは
生理中は、子宮を収縮させはがれ落ちた子宮内膜を血液とともに体の外に押し出す働きをするプロスタグランジン(PGE2)が分泌されますが この分泌が多いと、子宮の収縮が過剰になって下腹部や腰が痛くなるのが生理痛です。精神的・身体的ストレスがあると、ホルモンや自律神経のバランスが崩れ、冷えによる血行不良のため、PGE2が骨盤内に滞留してしまいます。
グルテンと月経困難症の関係や痛みの軽減に効果がある食べ物
ところでグルテンを体にとって異物と認識して、自分の免疫系が過剰に働いてしまうセリアック病の患者さんは、グルテンを含まない食事を摂ることが唯一の治療法ですが、グルテンフリー食に変えてから、重度の生理痛が消失または軽減したという話がよくあります。
グルテンと月経困難症の関係についての研究は少ないのですが、イタリアの研究論文では、月経困難症であった無症状のセリアック病の人がグルテンフリー食に変えたところ、月経困難症が解消したという研究報告があります4)。
グルテンが月経困難症を引き起こす原因は、よくわかっていません。グルテンが原因で体内で炎症反応が起きて、PGE2の産生量が増えているのではないかと考えられています。
なお月経困難症の痛みの症状緩和のためには、低脂肪食、オメガ3脂肪酸、マグネシウム、ビタミンE,亜鉛、ビタミンB1などを多く含む食品や栄養補助食品が効果的であるといわれています。
子宮内膜症
子宮内膜症の有病率
子宮内膜症は、本来なら子宮内膜にしか存在しない組織が子宮以外の場所にできる病気です。
異常な場所にできた子宮内膜組織も、正常な子宮内膜組織と同じようにホルモンに反応するため、月経前や月経中に痛みを感じます。また異常な場所に組織ができているため、性交中にも痛みを感じる場合があります。この痛みの症状は、子宮内膜症の人の90%に見られます。また不妊症になる可能性も高いといわれています。初潮が早い、第1子の出産年齢が30歳以上である、出産経験がない女性に多く見られ、生殖年齢にある女性の10人に1人が子宮内膜症といわれています。
子宮内膜症の原因はよくわかっていませんが、経血が腹腔内に逆流する現象と関係があるといわれています。なおグルテンの摂取と関係があるという情報はありません。
グルテンフリー食で子宮内膜症の痛みが軽減
グルテンフリー食にすることで、子宮内膜症による痛みが軽減したという研究結果が複数あります。またグルテンフリー以外に、乳製品フリーや、低FODMAP食品の摂取も、同様の効果があるようです。
グルテンフリーにすると、どのようなメカニズムで子宮内膜症の痛みが軽減するのかは、まだわかっていません。ただ、子宮内膜症の人の中には、グルテンが原因で起きる自己免疫疾患であるセリアック病の人が、一般の人の4倍近くいることから、グルテンと子宮内膜症は何らかの関係があると考えられています。
一部の国では、子宮内膜症の人が自発的に食事療法を行っており、痛みの症状改善に成果を上げているようです。
子宮内膜症は、本来、子宮内膜にしか存在しない組織が、子宮以外の場所にできる病気で、痛みを伴います。 グルテンフリー食にしたところ、75%の人で痛みが軽減されたという、研究結果があります。また別の研究では、子宮内膜症の患者さんの44%が[…]
更年期障害
女性も男性も誰もが経験する更年期障害
更年期障害は、40代以降の男女で性ホルモンの分泌量が減ることで起きる体調の不良や情緒不安定のことです。
女性の場合は、閉経期前後のおよそ10年間にエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少し、顔の火照りやのぼせ、多汗、脈が速くなる、動悸や息切れ、血圧が上下などに加え、頭痛、耳鳴り、めまいや、興奮、イライラ、不安などの神経症状を示すこともあります。さらに閉経後は、膀胱炎、尿失禁、腰や膝の関節痛、無気力感なども見られます。
一方男性の場合は30代後半からテストステロン(男性ホルモン)の分泌量が減り始め、40代後半になると勃起不全(ED)、のぼせ、多汗、倦怠感、筋肉や関節の痛みに加え、頭、耳鳴り、めまいやイライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などが起こります。女性に比べて変化が緩やかなため、老化現象と勘違いされることがよくあります。
更年期障害は個人差が大きく、現れる症状も異なりますが、基本的にすべての人が経験することになります。
グルテンフリーで更年期を楽に
グルテンが女性の更年期障害に関係しているといわれています。そのメカニズムはPMS、生理困難症と同じで、グルテンによって副腎疲労が起き、ホルモンの分泌量が減ることが原因ではないかといわれています。
セリアック病はグルテンが原因で起きる自己免疫疾患です。グルテンを異物と間違えて、自分の免疫系が攻撃してしまう病気です。セリアック病と診断されると、グルテンを含まないグルテンフリー食を食べるよう指示されますが、セリアック病と診断されておらず、グルテンフリー食を導入していないセリアック病の人は、一般の人に比べて更年期障害の症状が重いという報告があります。
また、倦怠感、筋力低下、食欲不振、下痢、便秘、吐き気、嘔吐、関節痛、抑うつ、しびれ、頭痛といった症状は、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症と更年期障害に共通してみられる症状です。
このようなことをふまえて、食生活をグルテンフリーに変えることで、更年期を楽に乗り越えようとしている人がたくさんいます。
グルテンに感受性が高い人は、そうでない人に比べて更年期障害の症状が重いことがわかっています。また、グルテンを摂ることで、更年期障害と似た症状が現れる人もいます。さらに海外ではグルテンフリーにすることで、更年期障害の症状が緩和されたという実績[…]
参考文献
1) https://www.pbmchealth.org/news-events/blog/signs-you-might-have-gluten-intolerance
2) Houghton SC, et. al., Carbohydrate and fiber intake and the risk of premenstrual syndrome. Eur J Clin Nutr, 72 (6) 861-870 (2018)
3) Martinelli, D., et. al., Reproductive life disorders in Italian celiac women. A case-control study, BMC Gastroenterol, 10, 89 (2010)
4) Porpora MG, et. al., Celiac disease as a cause of chronic pelvic pain, dysmenorrhea, and deep dyspareunia, Obstet Gynecol, 99 (5 Pt 2) 937-939 (2002)