グルテンを分解する消化酵素サプリメントは効果あるの? 専門家の見解

グルテンフリー生活をしているにもかかわらず、グルテンが入っているものを食べてしまったとき、これを帳消しにすることができる消化酵素サプリメントがあることを、別の記事で紹介しました。

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このサプリメントは、製品によって含まれている成分が異なります。また製品表示のしかたや使用法について、専門家からさまざまな問題点が指摘されています。サプリメントを飲む前に、ぜひ読んでください。

グルテンを分解するといわれる消化酵素サプリメント

海外ではさまざまな消化酵素サプリメントが販売されており、それに関する専門家の評価が医学論文として公表されています。当サイトが入手した情報とあわせて整理しました。なお医学論文の具体的な内容については、最後に記載しています。

意図せずグルテンを摂ってしまったときに使うもの

消化酵素サプリメントは「食べたグルテンをなかったことにする」ことができる可能性がありますが、使用する際は、次の原則を守ってください

  • 健康上の理由でグルテンフリーの食生活をしている人は、グルテンを含むものは食べないでください。サプリメントがあるから、グルテンが入っているものを食べても大丈夫、ということではありません
  • グルテンが含まれている可能性があるが、やむを得ず食べなければならない、あるいはうっかり食べてしまった場合に、サプリメントを飲んでください。
  • グルテンが含まれる食べものと同時に、または食べ終わってから遅くとも15分以内に飲まなければ意味がありません。
  • 医薬品ではなく食品です。グルテンによる健康上の悪影響を防ぐことを保証するものではありません。

さまざまな種類があり有効成分も異なる

消化酵素サプリメントにはさまざまな製品があり、含まれている成分もさまざまです。いずれも栄養補助食品なので、有効成分名、成分量を表示する義務はありません有効成分として記載されていても、成分量が書かれていなければ、効果があるのか判断できません

サプリメントを分析したところ、グルテンを分解する酵素はわずかで、炭水化物を分解する酵素が大半であったという報告もあります1)。パッケージの表示を見ただけで、消費者が適切な商品を選択するのは困難です。

主な有効成分はDPP-4とAN-PEP

グルテンはたんぱく質なので、これを分解するたんぱく質分解酵素有効成分となります。多くのサプリメントに含まれるのが、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)Aspergillus niger由来のプロリルエンドプロテアーゼ(AN-PEP)です。

DPP-4は、グルテンの分解されにくい部分を集中的に分解する酵素で、その結果、グルテン全体を分解されやすくする働きがあります。ただグルテンの有害な免疫決定基の部分を分解するわけではありません。またpH6.0〜8.0でよく働く酵素なので、酸性の環境である胃では活性が低下します。

AN-PEPは、グルテンの有害な免疫決定基の部分を特異的に分解します。またpH2~8で働き、特にpH 4〜5が最も活性が高くなるため、胃の酸性環境下で十分な活性が得られます。

DPP-4とAN-PEPを比較すると、AN-PEPの方が消化管でグルテンを分解する能力は高いと考えられます。

グルテン分解率は特定の条件のもとでの数値

研究論文などに記載されている酵素や消化酵素サプリメントによるグルテン分解率は、ある特定の条件で測定した数値に過ぎません。

例えばある酵素のグルテンが80%分解されたという結果があったとしても、食べた食事の量、そこに含まれるグルテンの量、摂取する酵素の量、サプリメントの形状などが異なると、全く違った結果になります。数値を鵜呑みにしないでください。

糖尿病治療薬を飲んでいる人は注意

下記の糖尿病治療薬は、インクレチンを分解する酵素であるDPP-4を働かないようにすることで、血糖値が高いときだけインスリンの分泌を増やす働きがあります。これをDPP-4阻害薬といいます。

DPP-4を含む消化酵素サプリメントとDPP-4阻害薬を一緒に飲むと、サプリメントに含まれるDPP-4が働かなくなるうえに、DPP-4阻害薬の効果が弱まる可能性があります。

DPP-4阻害薬を飲んでいる方は、DPP-4を含む消化酵素サプリメントを摂らないようにしてください。
  • グラクティブ、ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)
  • ネシーナ(一般名:アログリプチン)
  • エクア(一般名:ビルダグリプチン)
  • トラゼンタ(一般名:リナグリプチン)
  • テネリア(一般名テネリグリプチン)
  • スイニー(一般名:アナグリブチン)
  • オングリザ(一般名:サキサグリプチン)
  • ザファテック(一般名:トレラグリプチン)
  • マリゼブ(一般名:オマリグリプチン)

コロンビア大学セリアック病センターの研究論文での指摘

グルテンを分解することをうたった消化酵素サプリメントがアメリカで多数販売されています。これに対して、アメリカのコロンビア大学が調査した結果をまとめた論文を紹介します2)

調査の対象となったのは、「グルテナーゼ」、「グルテン酵素」、「消化グルテン」、「セリアック酵素」というキーワードを入れてGoogle検索をした結果ヒットした、次の14種類の製品です。

製品名 製造会社(所在地)
BioCore DPP IV Swanson Health Products (Fargo, ND)
Digest Gluten Plus Seroyal (Pittsburgh, PA)
Gluten-Ade Fain’s Herbacy (Eurkea Springs, AK)
Gluten Cutter Healthy Digestives (West Palm Beach, FL)
Gluten Defense Enzymatic Therapy (Green Bay, WI)
Gluten Digest NOW Foods (Bloomingdale, IL)
Gluten Enzyme DG Vitacost (Boca Raton, FL)
Gluten-Zyme Country Life (Hauppauge, NY)
Glutenaid CVS (Woonsocket, RI)
GlutenEase Enzymedica (Venice, FL)
ProCellax DG2 Genufood Energy Enzymes Corp. (Los Angeles, CA)
SerenAid Klaire Laboratories (Reno, NV)
Similase GFCF Integrative Therapeutics (Green Bay, WI)
ZGlutn Systemic Formulas (Ogden, UT)

これらはすべて「医薬品」ではなく「栄養補助食品」、つまりサプリメントでした。

栄養補助食品はFDA(食品医薬品局)の表示基準に従う必要がありません。極端な話をすると、有効成分が表示通り含まれていない可能性もあります。

つぎにこれらの消化酵素サプリメントにどのような成分が含まれているのかを調べました。結果は次の通りです。

プロテアーゼ(Protease)はたんぱく質を分解する酵素、カーボハイドラーゼ(Carbohydrase)は炭水化物や糖質を分解する酵素、リパーゼ(Lipase)は脂質を分解する酵素、プロバイオティクス(Probiotics)は腸内環境を改善する善玉菌のことです。

製品名 プロテアーゼの種類 カーボハイドラーゼの種類 リパーゼの種類 プロバイオティクス
BioCore DPP IV #※ 0 0
Digest Gluten Plus 4 0 0
Gluten-Ade 4 3 0
Gluten Cutter 1 9 1
Gluten Defense 1 4 1
Gluten Digest 4※ 2 0
Gluten Enzyme DG 3※ 0 0
Gluten-Zyme 1 2 0
Glutenaid 2 1 0
GlutenEase 2※ 2 0
ProCellax DG2 2※ 7 1
SerenAid #※ 1 0
Similase GFCF 1※ 4 1
ZGlutn 1※ 7 1

・数字は含まれている酵素の種類、#は酵素の種類が記載されていない。
・+は含まれている、-は情報の記載がない(含まれていない)。
・※は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)の含有量または活性値の記載があるもの。

グルテンはたんぱく質なので、すべての製品にたんぱく質を分解する酵素であるプロテアーゼが含まれています。そして14の製品のうち※を付けた8種類には、プロテアーゼの一種であるジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)が含まれていました。

グルテンはふつうのたんぱく質と比べて分解されにくい構造をしていますが、DPP-4はその部分を特異的に分解する作用があるため、グルテンを分解するための消化酵素サプリメントによく配合される成分です1)

さてこの研究論文では、グルテンを分解するといわれる消化酵素サプリメントに対して、以下のような見解を示しています。

  • グルテンを分解できるといっているが、胃の酸性環境で有毒なグルテンの断片を消化することが実証されていない
  • メーカーによる有効性の主張は誤解を招くものであり、利用者が安全だと信じてグルテンを食べることによって、自分自身に害を及ぼす可能性がある。
  • 栄養補助食品に対するFDA(食品医薬品局)の権限は限られているため、誤った情報が拡がったり、危険な成分が混入するリスクが高い。
  • これらの消化酵素サプリメントには潜在的な危険性がある一方で、有効であるという証拠がないため、セリアック病の患者が製品を使用することは全く勧められない

オランダのライデン大学と化学企業DSMの研究論文での指摘

こちらの論文はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)を有効成分として含む5種類の市販消化酵素サプリメントの成分や、これをグルテンを含む食品と一緒に食べたとき、グルテンがどの程度分解されるのかを調べたものです1)

消化酵素サプリメント記載された有効成分の酵素は次の通りです。

製品 有効成分の酵素
DPP-4 プロテアーゼ ペプシン ペプチターゼ
サプリメントA
サプリメントB
サプリメントC
サプリメントD
サプリメントE

ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)は、グルテンの分解されにくい部分を特異的に分解する作用があるため、グルテンを分解するための消化酵素サプリメントによく配合されます。

この5種類の消化酵素サプリメントを使ってさまざまな実験を行い、下記のような見解を示しています。

  • たんぱく質分解活性があるが、製品の主成分はアミラーゼ(炭水化物分解酵素)である
  • たんぱく質分解活性の最適pHは6.0〜8.0であり、胃のpHの範囲外
  • グルテンは分解するものの、セリアック病で有害な免疫決定基フラグメントの分解はできなかった
  • グルテン不耐症の人が、グルテン摂取の影響を打ち消すために使用することはできない

スウェーデンのオレブロ大学と化学企業DSMの研究論文での指摘

この論文では、多くの消化酵素サプリメントで使われるジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)ではなく、DSMが開発したサプリメントに含まれるAN-PEPという酵素を含む錠剤を、グルテン過敏症の人に小麦クッキーのお粥と一緒に食べてもらい、胃と小腸のグルテン濃度を測定しています3)

AN-PEPは、Aspergillus niger(黒カビ)由来のプロリルエンドプロテアーゼで、グルテンの免疫原性のある部分を特異的に分解する作用があることと、pH 2〜8の間で活性があるため、胃の中で酵素が働くという特徴があります。

実験の結果、グルテン0.5gと一緒にAN-PEPの錠剤を摂ることで、摂らない場合と比べて胃でのグルテン濃度は85%、小腸でのグルテン濃度は81~87%下がるという結果が得られています。この研究で行われた実験は、グルテン不耐性の人がグルテンフリー生活を送る中で、意図せずにグルテンを摂ってしまうケースを想定しています。

この研究結果から、次のような見解が示されています。

  • AN-PEPは、胃の中の複雑な食事に含まれる少量のグルテンを分解するのに効果的である。
  • AN-PEPの使用は、グルテン関連障害におけるグルテンフリー食の代わりにはならない。
  • 意図しないグルテン摂取を防ぐ消化補助剤として効果的である。

なおAN-PEPが含まれる消化酵素サプリメントは、DSM Nutritional Products Ltd.から「Tolerase G」という商品名で販売されています。

サプリメントの開発のほかに、グルテンフリー以外の方法で、グルテンによる悪影響を防ぐための手段が研究されています。詳しくは関連記事をご覧ください。

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参考文献
1) Janssen G, et. al., Ineffective degradation of immunogenic gluten epitopes by currently available digestive enzyme supplements, PLoS One, 10 (6) e0128065 (2015)
2) Krishnareddy S, et. al., Commercially available glutenases: a potential hazard in coeliac disease, Therap Adv Gastroenterol, 10 (6) 473-481 (2017)
3) König J, et. al., Effective gluten degradation by Aspergillus niger-derived enzyme in a complex meal setting. Sci Rep, 7 (1) 13100 (2017)

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!