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ハードセルツァーの人気の秘密、低カロリー、低糖類、低アルコール、グルテンフリー

ハードセルツァーはアルコール入りの炭酸飲料で、2018 年ごろからアメリカで急に人気が出ました。低カロリー、低糖類、低アルコール度数が特徴で、グルテンフリーと表示されています。日本でも、オリオンビール、コカ・コーラ、サッポロビールが新商品を発売しています。でも、日本の低糖質のチューハイと原材料も成分も、ほとんど同じです。

ハードセルツァーとは

ハードセルツァーとは、アルコール入り炭酸飲料のことです。

英語でセルツァー(seltzer)とは炭酸水のことで、これにハード(hard:アルコール分の多い)がついたものは、アルコール入りになります。

アメリカで 2018 年頃から人気になり、たくさんの新商品が発売され、あっという間に売り上げが伸びました。調査会社スタティスタの推計では、米国のハードセルツァー市場は 2018 年の 4 億 9,600 万ドル(= 544 億円)規模から、2020 年には 41 億4,000 万ドル(= 4,541 億円)へと急伸しているそうです 1)

ハードセルツァーには明確な定義はありませんが、

  1. カロリーが低い
  2. 糖類が少ない
  3. アルコール度数は 5 %程度
  4. 果物などのフレーバーが使われる

の 4 つが特徴です。

アメリカのハードセルツァーで使われているお酒は、サトウキビの糖分を発酵・蒸留したもので、日本でホワイトリカーとして売られているものとほぼ同じです。

 

 

ハードセルツァーとチューハイの違い

ハードセルツァーとチューハイは別物、という記事がネット上に載っていますが、本当にそうなんでしょうか。ちなみにその記事は、輸入ハードセルツァーの販売サイトを紹介していました。原材料、カロリー、糖類の量やアルコール度数を見てみましょう。

原材料

ハードセルツァー

サトウキビまたは大麦麦芽を原料とする蒸留酒。

チューハイ
  • 焼酎甲類(ホワイトリカー) … サトウキビ、大麦、米、トウモロコシを発酵し連続式蒸留機で蒸留したもの。雑味や不純物がほとんどない。
  • ウォッカ … ライ麦、小麦、大麦、ジャガイモを発酵して蒸留し、白樺の炭で濾過して作る。雑味や不純物がほとんどない。

ハードセルツァーもチューハイも、蒸留酒を使っているという点では、差はありません。

カロリーと糖類

ハードセルツァー
  • カロリーは 1 本(12 oz = 355 ml)あたり 100 kcal 程度
  • 糖類が少ない
チューハイ
  • カロリーは 1 本(350ml)あたり 91 kcal
  • 糖類 0 g      キリン 氷結®無糖 レモン Alc. 4 %の場合

アルコール度数

ハードセルツァー

5 % 程度

チューハイ

2 ~ 9 %

果物などのフレーバー

ハードセルツァー

ぶどう、ラズベリー、ライム、

チューハイ

レモン、グレープフルーツ、みかん、もも、ふどう、パイナップルなど

 

 

ハードセルツァーの人気の理由

ハードセルツァーは、健康意識の高まりで、アルコール分、糖類、カロリーが低い飲みものを求めるニーズに、うまく合致したことが人気の理由と考えられます。

アメリカには日本のチューハイに似たアルコール飲料はありますが、糖分が多く、カロリーが高いものがほとんどです。

アメリカではワイン、ウイスキーなどアルコール度数の高いお酒と、ビールのようなアルコール度数の低いお酒は、別々に売られています。ハードセルツァーはビールと同じ扱いのため、手軽に購入することができ、これまでビールを飲んでいた人が、ハードセルツァーに変えたといわれています。

また一部のグルテンフリービールは 2020 年の FDA のルール変更で、グルテンフリーの表示ができなくなりましたが、原料に小麦や大麦を使っていないハードセルツァーは、グルテンフリーであることも関係していると思われます。

アメリカで売られているハードセルツァーには「グルテンフリー」の表示があります(大麦麦芽から製造されたものを除く)。

 

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2020 年 8 月 12 日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ビール、酢、チーズ、ヨーグルトなどの発酵食品、加水分解食品の、グルテンフリー表示ルールを厳格化しました。これは、現在の分析方法では、発酵食品、加水分解食品のグルテン量を分析で[…]

 

日本でもハードセルツァーが発売

オリオンビール DOSEE(ドゥーシー)

「アルコール度数が低めのお酒を選びたい」「カロリーや糖質が低いお酒を選びたい」という需要が高い若年層の消費者に向けて、2021 年 3 月 23 日に発売された、国産初のハードセルツァーです。

低アルコール、低カロリー、糖質ゼロ、グルテンフリーを前面に出しています。アルコール度数は 2 %と低め。

グレープフルーツ、シークヮーサー、アセロラ、パイナップル(パイナップルは夏限定)の 4 種類があります。ブランド名の「DOSEE(ドゥーシー)」とは、沖縄方言の「どぅし」(友達)を語源としており、気の合う友達とにぎやかに楽しく飲んでいただくことをイメージしてネーミングしたとのことです。

参考小売価格はオープン価格とのことですが、同社直販サイトでの 1 ケース購入した場合の価格は、250 ml 缶入りで 1 本あたり 221 円(税込)です。沖縄県と関東地区の量販店で先行販売しているそうです。

DOSEE グレープフルーツの原材料名と栄養成分は次の通りです。

 

さとうきび醸造アルコール(国内製造)、グレープフルーツ果汁、月桃エキス、グレープフルーツエキス/炭酸、香料、酸味料、ビタミンC
アルコール分:2 %
エネルギー 13 kcal、たんぱく質 0 g、脂質 0 g、炭水化物 0 g(糖類:0.0 g)、食塩相当量:0~0.1 g

サッポロ WATER SOUR

 

「甘くない。強くない。今までにない。まるで炭酸水なお酒。」というキャッチフレーズで 8 月 24 日から発売を開始しました。

アルコール度数は 3 %、カロリーは 1 本(350 ml)あたり 67 kcal です。

この商品の原料は、サトウキビを原料とする蒸留酒ではなく、ウォッカです。フレーバーはレモンとオレンジの 2 種類で、350 ml 缶のみ。参考小売価格 155 円(税込)ですが、大手スーパーで 105 円(税込)で販売されていました。

WATER SOUR レモンの原材料名と栄養成分は次の通りです。

レモン果汁、ウォッカ(国内製造)
/炭酸、香料、酸味料、乳酸Ca、酸化防止剤(ビタミンC)
アルコール分:3 %
エネルギー 19 kcal、たんぱく質 0 g、脂質 0 g、炭水化物 0.1 g(糖質 0.1 g、食物繊維 0~0.1 g)、食塩相当量 0.01 g

コカ・コーラ トポチコハードセルツァー

トポチコ ハードセルツァーは、コカ・コーラ社から世界に向けて誕生したアルコール初のグローバルブランドです。

125 年の歴史を持つメキシコ生まれのスパークリングウォーターブランド「トポチコ」から登場した「ハードセルツァー」で、2020 年 9 月の南米を皮切りに、米国、オーストラリア、英国、フランス、スペインなどで発売されています。

同社では 2021 年 7 月 15 日から大阪のミナミエリアのカフェやレストラン、イベント会場で限定販売を開始しています。

種類はアサイーグレープ、タンジ―レモンライム、パイナップルツイストの 3 種類。アルコール度数は 5 % です。海外と同じ 355 ml 缶入りで、メーカー希望小売価格は 165 円(税込)です。

トポチコ ハードセルツァー アサイーグレープの原材料名と栄養成分は次の通りです。

スピリッツ(国内製造)、砂糖/香料、炭酸、酸味料、塩化マグネシウム、塩化カリウム
アルコール分:5 %
エネルギー 31 kcal、たんぱく質 0 g、脂質 0 g、炭水化物 0.7 g(糖類 0.5 g)、食塩相当量 0 g

ハードセルツァーブームはアメリカでは終わったらしい

オリオンビールもサッポロビールも、ニュースリリースには、アメリカで人気が高まっていると書いていますが、Bloomberg に 2021 年 7 月 21 日付で、「ハードセルツァーに対するアメリカの嗜好が突然衰え始めている」という記事が掲載されました。

アメリカでのハードセルツァーの販売量は、2018 年に 246 % のピーク成長を遂げた後は減速しており、2021 年 7 月 11 日までの1年間の成長率は 49 % になったそうです。現在、ハードセルツァーの売上は劇的に減速しており、特に Boston Beer Co. が「ハードセルツァー分野の成長を過大評価した」と発表したことで、同社の株価は 1 日で 25 % も値下がりしました。

この市場ではまた成長が続くと予想していた人も多く、一部のメーカーは撤退を表明するなど、混乱が始まっているようです。

減速の理由は、市場の飽和とすぐに飲めるカクテルやその他の新しい缶入り飲料との競争に直面した結果だそうです。

日本のハードセルツァーはまだ発売が始まってから半年も経っていませんが、すでに発売されているチューハイの名前を変えただけ、というのが明らかになると、ブームが来ないうちに、消えていく可能性もあります。

 

 

まとめ

  • ハードセルツァーはアルコール入り炭酸飲料で、アメリカで 2018 年頃から人気になり、たくさんの新商品が発売され、市場が急拡大した。
  • カロリーが低い、糖類が少ない、アルコール度数は5%程度と低い、果物などのフレーバーが使われるの4つが特徴だが、明確な定義はない。サトウキビの糖分を発酵・蒸留したお酒が使われることが多い。
  • ハードセルツァーは、日本のチューハイと、原料、カロリー、糖類、アルコール度数がほとんど同じ。
  • 人気の理由としては、健康意識の高まりで、アルコール分、糖類、カロリーが低い飲みものを求めるニーズに合致したことや、同じくらいのアルコール度数であるビールが、グルテンフリーと表示できなくなったこともある。
  • 日本では、オリオンビール、コカ・コーラ、サッポロビールから、ハードセルツァーが発売されている。
  • アメリカではハードセルツァーの市場拡大は鈍化しており、撤退をする企業も出ている。

 


参考文献

1)  Statista ウェブサイト、Hard seltzer market- Statistics & Facts

https://www.statista.com/topics/7821/hard-seltzer/

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