薬剤師が解説するどこよりも詳しいグルテンフリーガイド

ゆるグルテンフリー、慢性的な体調不良をなくすために体に入るグルテンを減らす

ゆるグルテンフリーは、慢性的な体調不良をなくし、病気に強いカラダをつくるため、からだの中に入るグルテンの量をできるだけ減らすことです。厳密なグルテンフリー生活はかなり大変なので、原材料表示を見て、食べるかどうか自分で判断しましょう。ご自身の体調やライフスタイルに合わせて、無理のない範囲でグルテンフリーをすれば十分です。

セリアック病でない人には、厳密なグルテンフリーは不要

グルテンフリーとはもともと、セリアック病の患者さんが食べても大丈夫、という意味の表示です。国によって違いはありますが、食品中のグルテン濃度が 20 ppm 以下の場合、製造・販売者の責任で “Gluten free” の表示をすることができます。

 

関連記事

食品のパッケージやレストランのメニューで見かける Gluten free という表示。欧米では、食品に含まれるグルテン濃度が 20 ppm 未満という意味です。製造販売事業者による自主表示ですが、一部の国では法律で規定されており、事実と異な[…]

 

セリアック病とは、グルテンが原因で起きる自己免疫疾患で、グルテンが付着した自分の小腸を免疫細胞が攻撃することで、下痢をしたり、必要な栄養が吸収できないことによる倦怠感、筋力低下、貧血、皮膚炎が起きたりします。欧米では 100 人に 1 人程度の患者さんがいるとわれており、グルテンが入ったものを一切食べないようにする以外に、治療法がありません

一方で、グルテンが含まれる食べものを摂ることで、からだにいろいろな不調が起きることがわかっています。最もわかりやすいのが腹部膨満(ガスが溜まる)、腹痛、下痢で、それ以外にも疲労、もやもや感、関節痛、抑うつ、吹き出物などが知られています。そのため、からだのコンディションを崩したくないプロアスリートの約 4 割が、グルテンフリーの食事を取り入れているといわれています。

このサイトではグルテンフリーをおすすめしていますが、その理由は、プロアスリートの人がグルテンフリーを取り入れるのと似ています。あなたのからだの不調の原因がグルテンだ、という証拠がなかったとしても、ふだんの食事を少し変えてみることで、慢性的なからだの不調から解放され、病気に強いカラダになれるかもしれません。その目的には、セリアック病の人のための厳密なグルテンフリーは必要はありません

 

 

ゆるグルテンフリーはグルテンの摂取量を減らすこと

繰り返しになりますが、厳密なグルテンフリーはセリアック病の患者さんのための治療食です。セリアック病でない人が同じ食事を摂る必要はなく、逆にデメリットが大きくなります。

セリアック病ではない人がグルテンフリーをするのは、病気に強いカラダをつくる、アレルギーに関わる病気の発症を防ぐ、慢性的な体調不良から解放されるなどの効果が期待されるからです。そのためには、グルテンを全く摂らないのではなく、からだの中に入るグルテンの量を減らすだけで十分です。これはプロアスリートの多くが実践し、効果をあげていることと全く同じやり方です。

この食事法を厳密なグルテンフリーと区別するために、ゆるグルテンフリーと呼ぶことにします。

グルテンの摂取量が 1 日何グラムまでなら「ゆるグルテンフリー」と決めることは意味がありません。グルテンの影響には個人差がありますし、食べてから影響(悪影響)が出るまでに時間がかかることが多いので、許容量を決めることはできません。自分のライフスタイルに合わせて、無理のない範囲で可能な限りグルテンの摂取量を減らせば十分です。

ゆるグルテンフリーの 3 つのルール

ゆるグルテンフリーを効率よく行うためのルールを説明します。

① 小麦、大麦、ライ麦が主要原材料となる食品は食べない

グルテンは小麦、大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質です。

小麦粉が主原料の食品、例えば、パン、めん類、パスタ、ピザ、クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキなどを食べないようにするだけで、いままでの食生活での摂取していたグルテンの大部分を摂らなくてよくなります。大麦を使った食品としては、麦ごはん、麦茶、ビール、ライ麦を使った食品としては、ライ麦パンがありますが、使われている量が多い麦ごはんとライ麦パンを避けるだけで十分です。

② 調味料、飲料、アルコール飲料はすべて許容する

小麦や大麦が使われている調味料には、しゅうゆ、みそ、酢や、和風だし、洋風だし(コンソメ)、中華だしなどかあります。

しょうゆ、みそ、酢は発酵によって作られます。原材料にたんぱく質であるグルテンが含まれていたとしても、発酵の過程でアミノ酸に分解するため、製品中には残っていません。微量のアレルゲン(たんぱく質)に対して注意を払う必要がある小麦アレルギーの人でさえ、しょうゆ、みそ、酢は(小麦が使われていたとしても)抜く必要はないといわれています。ゆるグルテンフリーの人は、当然抜く必要はありません。

だしの素には小麦が原材料として入っているものがありますが、量はわずかです。そもそもだしの素は使う量が少ないので、出来上がった食品に含まれるグルテンの量はさらに微量です。小麦が使われていないものがないなら、そのまま使ってください。

小麦、大麦が原材料に含まれる飲料としては、麦茶、麦芽飲料、ビール、ウイスキー、麦焼酎などがありますが、そのまま飲んでも差し支えありません。ただ、ご家庭で毎日飲まれる場合は、小麦、大麦が原材料に含まれないもの、例えば、緑茶、ココア、発泡酒、芋焼酎などに置きかえてはどうでしょうか。ウイスキーは、発酵したのち蒸留しているため、セリアック病の患者さんが飲んでも問題ないといわれています。

③ それ以外は原材料表示を見て判断

加工食品やインスタント食品には、さまざまな原材料が使われています。容器に入っていたり、包装されていたりする食品は、原材料表示が義務付けられています。そこを見ることで、その食品にグルテンがどのくらい入っているか、判断することができます。

小麦は食物アレルギーを起こす人が多いことから、原材料に使われている場合は「小麦」が使われていることがわかるように表示しなければなりません。そのため、小麦成分が使われているかどうかは、比較的簡単に見分けることができます。しかしこのルールでは、使われている量がごく微量であっても、小麦と表示しなければならないことになっています。

グルテンフリー生活にチャレンジして、挫折する人の中には、「小麦」と表示された食品を全部避けた結果、食べるものに困ってしまうというケースがあります。特に外食の場合、厳密なグルテンフリーのメニューを探すのは、かなり大変です。和食では、ほとんどの場合お醤油が使われているので、厳密にはグルテンフリーではありません。

でも、考えてみてください。調味料のように少量しか使わないものは、からだに不調をきたすほどのグルテンが含まれているはずがありません。

 

 

原材料表示の見方

食品の原材料表示を見るにあたって、次のことを覚えておくと便利です。

使われている量(重量)が多い順に書いてある

原材料表示欄にはいろいろな原材料名が書いてありますが、これらは使われている量(重量)が多い順です。

干しそばの原材料表示を例として説明します。みなさん、そばの原材料は「そば粉」だと思っているかもしれませんが、実際はほとんどのそばに「小麦粉」や「グルテン」が使われています。干しそばの場合、そば粉の割合が 30 % 以上であれば、そばと表示することができるのです。

 

商品 A 商品 B 商品 C
原材料名 そば粉、小麦たん白、小麦粉 小麦粉、そば粉、小麦たんぱく、食塩 そば粉(国内製造)

 

商品 A は そば粉 が最初に書かれているので、小麦たん白や小麦粉より、使用量が多いことがわかります。一方、商品 B は、そば粉より小麦粉の方が多く使われていることがわかります。ちなみに、小麦たん白とはグルテンのことで、商品 A にも B にも入っています。グルテンがわざわざ添加している食品は、ゆるグルテンフリーでも、食べない方がよいです。商品 C を選ぶことをお勧めします。

食品添加物は / より後ろに書かれる

加工食品やインスタント食品には、食品添加物がよく使われています。食品添加物とは、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用される保存料、甘味料、着色料、香料などで、化学的に合成されたものもありますし、天然由来のものもあります。「化学合成されたもの=危険」、「天然由来のもの=安全」と思っている人も多いと思いますが、必ずしもそうではありません

コンビニのおにぎりを例に見てみましょう。原材料名を見ると、

ご飯、ツナマヨネーズ和え(マヨネーズ、かつお油漬け、醤油たれ、まぐろ油漬け)、海苔、塩
調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、酸化防止剤(V.C)、糊料(加工澱粉、キサンタン、セルロース)、香辛料、甘味料(ステビア)(一部に、小麦・ごま・さば・大豆を含む)

と書いてあります。このうち、「/」より後に書いている太字のものが、食品添加物です。

 

おにぎりって、ご飯と具と海苔くらいかと思っていたら、こんなにたくさんの食品添加物が使われているのです。値段の安い加工食品ほど、使われている食品添加物の種類が多い傾向にあります。これは安い材料をおいしくするために、食品添加物の力を借りているということです。食品添加物がすべて悪いとはいいませんが、できるだけ食品添加物が少ないものを選んだほうがよいでしょう。

小麦成分を使っている場合の一括表示と個別表示

さきぼ紹介したコンビニのおにぎりもそうですが、原材料欄に「一部に小麦を含む」と書いてあるのをよく見かけます。これはどういう意味でしょうか。

下の原材料表示は即席みそ汁のものです。調味みそと具を分けて書いてあります。具の部分を書き出すと、

具(わかめ、ふ、調味顆粒(鰹節粉、デキストリン、煮干粉、食塩)、乾燥ねぎ
/調味料(アミノ酸等)、酸化防止剤(ビタミンE)、クエン酸、(一部に小麦を含む))

となっています。

「一部に小麦を含む」とは、「具の原材料と食品添加物の一部に小麦が含まれる」という意味です。

すなわち、「わかめ、ふ、調味顆粒(鰹節粉、…、 クエン酸」のどれかに小麦由来のものが含まれていますが、どれに含まれるかまでは書いていません。常識的に考えると、「ふ」が小麦由来なのは明らかですが、「調味顆粒」や「調味料」に小麦が入っている可能性もあります。

小麦は食物アレルギーを起こす人が多いことから、原材料に使われている場合は「小麦」が使われている場合、それが明確にわかるようにしなけばならないことになっています。そのため、最後に「一部に小麦を含む」という一文を入れ、表示しているわけです。

このような書き方を一括表示といいます。この場合、原材料のとれかに「小麦」が含まれていることはわかりますが、どの原材料に小麦が入っているのか、わかりません。

これに対して、小麦を成分を含む原材料や食品添加物の直後に、(小麦を含む)と書いてある場合もあります。これは即席めんの原材料表示ですが、小麦粉、しょうゆ、香味油、香辛料、香料に小麦由来成分が入っていることがわかります。このような表示のしかたを、個別表示といいます。

そしてさきほど説明したように、原材料名は、使われている量(重量)が多い順に書くことになっているので、小麦を使った原材料が多いのか、少ないのかの判断できます。なおこの場合は小麦粉が最初に書いてあるので、主要原材料に小麦粉が使われているので、ゆるグルテンフリーでも食べないでください。

 

 

食べてよいかどうか迷った場合のポイント

ゆるグルテンフリーのルールとして、

① 小麦、大麦、ライ麦が主要原材料となる食品は食べない

② 調味料、飲料、アルコール飲料はすべて許容する

③ それ以外は原材料表示を見て判断

という説明をしました。また判断するにあたって、原材料表示の見かたについても、説明しました。

原材料名を見て、小麦や大麦を使った原材料が前の方に書いてあれば、たくさん入っていると判断して買うのをやめ、後ろの方に書いてあれば、少ししか入っていないと判断して買う、ということになります

しかし弁当や総菜では原材料の数が多く、スーパーやコンビニの店頭で原材料表示を見て、その場で判断することは困難です。そこで、次のような選び方を提案します。

・小麦成分が何に入っているか即座に判断できない場合は、原則として買わない。

・食品添加物の種類が多いものは、原則として買わない。

下の写真は、コンビニのサラダの原材料表示ですが、小麦が何に使われているか、特定できません。またひじょうに多くの食品添加物が使われています。あまりお勧めできる食品ではないと思います。

 

 

まとめ

  • ゆるグルテンフリーは、グルテンによる慢性的なからだの不調から解放されるため、グルテンの摂取量を無理のない範囲で可能な限り減らすために行う食事法です。
  • ゆるグルテンフリーでは、小麦、大麦、ライ麦が主要原材料となる食品は食べませんが、小麦や大麦が使われていても、調味料、飲料、アルコール飲料はすべてOKです。それ以外は原材料表示を見て判断します。
  • 原材料表示は使われている量(重量)が多い順に書いてある。小麦は食物アレルギーを起こしやすいため、含まれている場合は、原材料欄に表示することになっている。
  • 食べてよいかどうかは、小麦や大麦が含まれる原材料がどの程度含まれるかで判断するが、一括表示や個別表示の省略表示では、どれに含まれているのかわからない。
  • 原材料表示から、小麦成分が何に入っているか即座に判断できない場合、あるいは食品添加物の種類が多いものは、原則として買わない。

グルテンフリー食品まとめ

小麦粉を置き換えるには、グルテンの役割をカバーするための知識や技術が必要です。メーカーさんの工夫によって製造されている、おすすめのグルテンフリー食材をカテゴリー別にご紹介!